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合わせ鏡(最終回)


「降りなさい。」
と、僕は男に命じられる。

僕は、男の指示に従い車から出る。
男も車から降りて、僕を目で誘う。
…こちらに来い…と言うみたいに。
「どうだ、この場所から見える夜景は綺麗だろ。さっき居た場所とは全く違うだろう。」

と、男は突然言い出す。

「はい」 と、返事しか返せない。

「あの街に住んでいるのは、人間では無い。
全て宇宙人だ。人間は奴隷か家畜の様な扱いだ。何故その様になったのか、解るか?」

「さっき、叔母さんから聞いたのですが、『宇宙人が侵略してきて、人間を堕落させた』みたいな事を聞きました。」

「そうだ、愚かな地球人のリーダーが宇宙人の存在を見抜く事ができずに、彼らの言いなりになってしまった。
その結果人間は思考する能力が弱まり、宇宙人に侵略された。
本当に愚かな地球人。この様になってからではもう遅い。
だが、一つだけ地球を守る方法がある。
成功するかどうかは判らないが、一度だけチャンスがある。」

「チャンスとは、何ですか?・・・」

「一つ教えておこう。今君が見ているのは、未来の幻影だ。」

「幻影?・・・何ですかそれは!」

「今見ている光景は、これから起こる光景。
君はタイムトラベルして未来に来ていると思っているだろう。
そうでは無いのだ。此処は未来の姿であって、現実社会では無い」

「どう言う事ですか?みんな想像の世界ですか?」

「そうだ、想像の世界ではあるが、このまま何も変わらずに進行していけば、必ず訪れる世界。君は未来予想図を今見ているんだ。
この様な世界にしない為にも、君は宇宙人の侵略を阻止しなければならない。解るかい、コウソン君」

「解りません。何のことか?宇宙人を阻止するって何?
何故、子供の僕にこの様な大事な事を言うのですか?」

「そうか、理解出来ないか!
でも、君に託すしか無いのだ。何故なら君は優れた能力を秘めているのだ。他にも仲間はいるのだが、それは今のところは言えない。
将来君は、仲間達と力を合わせて宇宙人を阻止するチームを作るだらろう。その時君と私は再開する。」

「何の事ですか?チームって!さっぱりわからない。
どう言う事ですか?」

「もう、これ以上の説明は辞めにする。この幻影を消去するから君は元の時代に戻るから。
コウソン君、君が大人になった時に私と再開するからその時まで、さらばじゃ。」

「待ってください」の声も発する間も無く男は
消えた。
それと同時に今観ている夜景も消えた。

暗闇の中、僕の身体は何物かに引っ張られるかの様に、動いている。
・・・・・・。

気がつくと、僕は鏡の間で寝ていた。

今まで観たのは夢だったのか。
時計を見たら、2002年5月2日
14:38を示している。
僕は夢を見ていた様だ。
僕は鏡が創り出す幻想的な世界に堕ちて行ったのか?
不思議な夢だった。だが現実的な夢だった。

未来は宇宙人に侵略されるのか?
僕の使命って何?
秘めた能力って何?
疑問は何も解消されずに、僕の記憶から
この出来事が薄れ消えていった。

そして時は過ぎ、僕は大人へと成長した。

この次からは小説「秘密」に変わります。






#青ブラ文学部

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