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 霊が撮れる例のカメラ(3)


3

私の住むアパートは、築何年か判らない二階建てで
古い事には間違いがない。私の住むのは2階の右端。
部屋室は5室あるから、全部で10室。
誰が住んでいるのか興味も無い。

私の住むアパートは、台所と風呂とトイレがあるが、部屋は一つである。
その部屋にはベッドとテレビと座卓があり、二人以上入ると窮屈に感じる。
でも、自分のサラリーではこの程度の所が分相応だ。

私は部屋に入るなり、霊が撮れる例のカメラを鞄から出した。
フイルムは二十枚入りのカセットになっている。
……このカメラ、レンズ越しに霊が見えるのだろうか?……
と、ふと疑問を感じた。
……見えたら怖い……
と、思いつつカメラのファインダーから見てみる。
「何も霊など見えないじゃないか!もしかして騙されたか?」
と、後悔の言を吐いたがこの部屋には誰も居ない。
「もしかして、何処でもいいから写すと霊が写るのか!」
と、自分に言い聞かせてシャッターを押してみる。
「カッシャ」と手応えを感じる音が。
「霊、写っているのかな? もう一枚撮るか!」
と、独り言。
今度は台所の方を撮ってみる。
「カッシャ」と、同じ手応え。
「まあ、古いカメラだからそんなもんだろう」
と、自分に言い聞かす。だが、
「もし、この部屋に霊が居て写っていた方が怖いじゃないか?!
俺って馬鹿な事をしてしまった。」
と、後悔の念を独り言で忠実に再現。
……明日、直ぐにこの写真の現像をお願いしに行こう……
と、心に秘めて一人食事をする孤独な私。(*´◒`*)


次の日、適当に仕事を済ませ 昨日のカメラ店に急いだ。
相変わらず客は居ないみたいでひっそりとしている。
「ごめん下さい」と、呼んで辺りを見渡すと、茶髪が見えた。
昨日の店主だ。

「昨日のお客さんかい、霊 撮れたかい?」
と、やはりぶっきらぼうな挨拶だ。
「霊など見えません。いるかどうか解らないですよ。
取り敢えず二枚だけ撮ってみました。
写っているかどうか解らないから、現像をお願いします」
と、僕は少し怒気のある言い方をした。

「そうだった。このカメラから霊が見える様になるには、
修行が必要だった。」
と、店主は想い出したかの様に云う。

「修行?! 修行って何!」
と、僕は驚いて店主の顔を見た。

「まあ、その内に解るよ。ところで今日は現像するんかい?
それとも、何か聞きに来たんかい?」

僕は修行の事が聞きたかったのだが、はぐらかされたので
聞く事は出来ず
「二枚だけの現像ってお願い出来ますか?」

「良いよ、何枚でも現像はできるよ。ただ、二枚だけでも出来るけど、フイルムは二枚以上減るよ、いいかな?」
「どれだけ減るのですか?」
「そうだな、残り枚数12〜3枚かな」
……フイルムのカメラはこれだから困る。デジタルカメラならフイルムなんて無いから、何枚でも撮れるのに!……

と、思ってはいるが声にはしない。

「直ぐにでも確認したいので、現像して下さい。」
と、お願いした。

「じゃ、そこで座って待っていてくれ。お客が来ても
店主は居ないと言ってくれ。写真にする為には時間が掛かるので
・・・」
と、言いながら店主は、私のカメラを持って部屋に入った。

「あの部屋が現像部屋かな?『お客が来ても居ない』と言ってくれって言っていたけど、大丈夫なのか?」
だが、幸いな事にお客は誰も来なかった。
待つ事一時間弱、店主は部屋から出て来た
嬉しいそうに僕を見ている。

「やっぱり、わしの見た目に狂いは無かった。
君は心の綺麗な正直者だよ。
最初から霊を取る事ができるなんて、素晴らしい事だよ。」
と、声がいつもと違い弾んでいる。

「れ、霊が写っているんですか?」
と、驚きと恐怖の籠った声を発してしまった。
「そうだよ、ここ観てご覧よ」
と、写真を指さし
「これだよ。小さく薄く見えるのが霊だよ」
僕は目を凝らして見た。
「う〜ん。 何か見えますね、小さいけど。
なにか、嬉しいそうにしてますね。
笑顔ですね。」
と、僕は見えたまま語った。

「よく解るね。感心するよ。この霊は非常に明るい霊だな。
写真を撮ってもらえるから、ピースサイン出してるよ。
これは、男だな!
こっちは、女だな。」
と、店主はもう一枚の写真を僕に見せてくる。
その一枚よりも、「霊がピースサインで写るのですか?」
と気になって聞いた。

「そりゃ、霊だって写真を撮れられる時はポーズするだろう。
それよりこっちの写真を見ろよ!
こっちの女は化粧してるぞ。
きっと化粧の途中にあんたが写しているので、びっくりしたんだ!
あんたを見て『チョット待って』と言っているよ。きっと」

こっちが「チョット待って」と言いたい。

幽霊が化粧するのか?
それに二人も僕の部屋にいるのか!
僕は驚きを隠す事が出来ずにいる。

「君は凄いよ。最初から心霊写真を撮ることが出来る人なんて
そんなにいないよ。やっぱり私が見込んだ通りの人だな」
と、褒められた。でも、そんな事はどうでもよかった。
私の知りたいのは、

「僕の部屋に霊が住んでいると、云うことで間違いが無いのでしょうか?しかも二人も住んでいるのでしょうか?」
と、怯えながら店主に聞いた。

「う〜ん、そうだね。今のところは二人は確実にいるね。
でも、心配無いよ。この二人は君に害を与えない。
むしろ好意的だよ。君に恨みなど持って無いよ」
と、確信を持った言い方だ。

https://note.com/yagami12345/n/nef1d36c9d15a

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