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 霊が撮れる例のカメラ(8)


8

「全部で12枚撮っているんだけど・・・」
と、店主はここで言葉を止めた。
「そうですか。12枚取りました。夢中だったので枚数は数えていませんでした。それでどうだったのでしょうか?」

「その前に昨日言わなかった事を、君に告げなければいけない。」
と、店主は真剣な眼差しで僕を見る。

「何でしょうか?」と、不安と期待を込めて店主を見つめる
見つめ合う瞳と瞳。男同士の二人。
だが、店主は目線を逸らす。意外とシャイな人かも知れない。

「このカメラは、過去の出来事も写す事が出来るカメラなのです。
ただし、撮る人が正直者で心の綺麗な人しか撮れないのです。」
と、僕には理解不能な事を言い出した。

「過去を撮るカメラって何ですか?カメラって今ある物を撮るのでしょう?意味がわからないです!
それに、私は正直者でも無いし心も綺麗では無いです。
で、そこに写っていた物は、何ですか?」

「観てみれば解るよ」
と、現像されたばかりの写真を私に示した

机の上に12枚の写真を並べるみたいでニ枚目の写真を置いた
「これ、公園で一番最初に君が撮った写真だ。
よく観てご覧。ここに女性の霊がぼんやりだが写っている。」

「何処にですか?・_・_・」
と、目凝らして観る。
「此処だよ。ピースのポーズとってはいないけど、此処に悲しそうな顔して君を観ているよ。
次の写真だが、この写真を撮る前に、何か変な事 
無かったかな?」

「そう言えば、女性の悲鳴が聞こえたのですが、気にせずに撮り続けました。」

「悲鳴が聞こえた?!じゃこの写真はその女性の写真だな。」
と、次の写真を差し出し卓上に置いた。
目を凝らして観ると、女性の怯える顔が写っている。
「こんな被写体見えて無いです。何ですか?これは!」

「このカメラは、直接被写体を撮るのでは無く、君の心を通して写真を撮るカメラでもあるんだ。
君は悲鳴を無視したけれど、本心では気になっていたはずだ。
これがこの写真に写ったのだよ」

「そんな事ってあるの?・・___・・」

「もっと凄いのが次の写真だ!
この男、女を刺している。今日の殺人事件だ!
男の顔が写っている。証拠の写真だ。これは」
写真には、後ろから女性を襲う男の顔が写っている。
「でも、こんな写真を警察に持って行くと、僕も疑われないかな?
可笑しく無いですか?殺人現場で写真を撮っているんですよ。」

「確かに疑われるかも知れない。でも、次の写真を見てくれ」

と、店主は残り9枚の写真を並べた。

「この写真だが、これは女性の霊の写真だ。この女性は一枚目の人でもある。観てくれ!この悲しげな瞳。君に訴えかけているだろう?」

僕は、この写真を手に取り観た。

僕は吸い込まれるように、写真に近づき凝視した

「何か見えますね。うっすらとしてますが、悲しげな感じがします。
女性ですか?
何故店主は、うっすらとしか写って無いのに、解るのですか?」
と、不思議に想い尋ねてみた。

「君も修行を積めば解る様になるよ。君ならなれるよ。
まあ、そんな事よりも次の写真だ!大事なのは。
この女性は、
以前此処で殺された女性の霊と言う事が解るよ。」

と、恐ろしい事を言い出した。

「この写真だが、この女性が後ろから刺されているだろう?
解るか!しっかりと目を凝らして観るんだよ。」
と、写真を僕に手渡してきた。
僕は、凝視しようと写真を見たが凝視するまでも無く、女性の背後に男性がナイフを刺している姿がはっきりと写し出されている。
そして、次の写真は、前方から撮られており女性の顔と、男性の顔が、くっきりと写っている。
僕が目の前で写したかの様に鮮明に写し出されている。

苦悶の表情の女性に対して、微笑みを浮かべる男。
先程写っていた男だ。

「何だ!これは!」
と、思わず叫び声を発した。
それと同時に震えが止まらない!


https://note.com/yagami12345/n/n493ed29cd1b8

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