見出し画像

(新)三つ子の魂百までも(16)


16

松田さんの捜索中に新たな事件が勃発した。
しかも、私達が住むこの街でだ。
居なくなったのは五十代の男性で、会社の社長らしい。

伊東さんが云には

「ある男女が、ラブホテルに入室後、出て行った気配も無く
男の持ち物が全て残っている。
防犯カメラには、男が入室する姿が映ってはいるが、女の姿は映っていない。しかし、目撃者が居て、その人の証言では
『この男と女は確かにホテルに、入って行くのを見た』と云う事らしい。
だけど、入室の際のカメラに女は映ってはいない との事だ。
退室の時も映っていない。
いったい二人は何処に行ったのか?警察は
全く解らないらしいよ。」
と、呆れ顔である。

「この様な事件は、全国でよくあるみたいです。
ネットに書いてありました。」
と、僕が言った

「ネットね。そんなもの、当てにならんよ。無責任な者の集まりだから。噂に尾ひれを付けるよ。
だけど、不思議な事件だ。どの様にして監視カメラに映らない様にするんだ!全く解らない。
裕美の云う、幽霊の仕業か?(≧∀≦)
そんな、馬鹿な!」
と、伊東さんは幽霊など信じていないが、信じざるを得ないと思ったのか、吐き出す様に言った。

「僕は想うのですが、悪の組織が絡んでいても、監視カメラに映らない様にする事は出来ないと思います。
それに、居なくなった男達の年齢が様々だし、若い男を狙う事も無いみたいだし、誘拐しての身代金の要求も無い。
だとしたら、悪の組織の目的が解らない。
この事件、裕美さんの云う様に妖怪の仕業かも知れません。」
と、僕は自信を持って伊東さんに告げた。

伊東さんは、僕の顔を見て、少しため息😮‍💨をついて事務所を出て行った。

事務所に居るのは僕一人だ。
時刻は午後の1時を過ぎていた。
みんな外での仕事である。
僕は、松田さんの両親を待っていた。
今日は、この案件の途中経過と伝えたい事があって事務所に来てもらう事になっていた。
松田さん両親の面会予定時刻は午後の2時である。
林田さんも来てくれる予定である。

1:30に裕美さんが事務所に入ってきた、
それに遅れる事5分、林田さんが入室。
そして2:00丁度に松田さん夫妻が到着した。
挨拶を交わした後、
裕美さんは、林田さんを両親に紹介した。

「松田さん、この林田さんは、以前起こった殺人事件の犯人の写真と、被害者の女の人の霊を写真に撮り、見事に解決に導いた方です。その事は、ある週刊誌に報道され一躍有名になりました。
ご存知でしょうか?」

「噂では、その様な事を聞きましたが、週刊誌は読んではいないです。」
と、父親が答えた時、母親が父親えを制するかの様に言った
「私は知っていますよ。以前テレビに出ていましたよね。
霊を撮る写真家だと。
私、見た事があります。」
と、明るく言ったが、直ぐに表情は曇って

「息子は、もう死んでいるのですか?」
と、力無く言った。

「いえ、まだ解りません。でも・・・(´∀`*)
その可能性があるので、今日ご両親に来て頂いた次第です。
これから、話す事は、ご両親には信じ難い話しですが・・・・」
と、裕美さんは、言葉を選びながら慎重に話している。

「私は、自分で言うのも変ですが霊能力が普通の人よりも強いのです。この林田さんもです。
それで、こちらの希望ですが、息子さんのお部屋で写真を撮らさしてもらいたいのです。
私も同席しますが、ご両親も同席して頂きたいのです。」

「と、言う事は息子は死んだのですか?」
と、父親が強い語調で聞いてきた

「可能性は充分にあります。だから息子さんの部屋に行って確認したいのです。ダメでしょうか?」
と、裕美さんは懇願する様に言った。

深いため息の様な時間が過ぎた後、
父親が言った。
「仕方ないです。たとえ息子が死んでいても、その結果を受け入れないといけない。」
と、その言葉は うなだれている。

「で、どの様にすれば良いのですか?」
と父親は聞いてきた。

「丑三つ時の夜中に、私と杉田と林田さん、それにご両親と
一緒に息子さんの部屋に居て欲しいのです。
そして、・・・・」
と、裕美さんは、言葉を詰まらせた。
もったいぶっているのでは無い。
両親の気持ちを考えての想いである。

「そして、私が息子さんの霊を呼び出します。
それを林田さんが写真に撮ります。
もちろん、トリックなんかはしません。
信じてくれますか?」
と、一気に話した。

「やはり、息子は死んでいるのですね・・でも、何故・・・」
と、母親が消沈している。

「どの様な経緯で息子が死んでいると想うのですか?」
と、少し興奮して父親が聞いてきた。

「それは、今は言えません。でも、私には感じるのです。
本当に申し訳ありませんが、感じるのです」
と、裕美さんは今にも泣き出しそうな声を出した。

「貴女は何もかも知っているんですね。・・・・・
本当に、・・・息子の霊が写るのですか?」
と、訝しそうに聞いてはいるが
その表情は失意を露わにしている

……霊を写すなど本当に出来るのか……と、僕も疑ってはいる。

「私の元に息子さんがきたら、写ると思います」
と、裕美さんは低く小さな声であったが、自信のある言葉であった

「解りました。今日ですか?息子の部屋に行くのは!」
と、父親は覚悟を決めたみたいにきっぱりと言った。

「早い方がいいでしょう。息子さんもご両親に話したいと思っている筈です。」
と、裕美さんは松田さんの息子が亡くなっている事を確信しているのか、凄く自信のある言葉である。
だが、両親にとって、残酷な言葉でもある。

その様な経緯で、私は松田さんの息子の部屋に訪れ
霊の写真を撮りに行く事になった。
松田さんの部屋に、午後の8時に全員集合だ。

https://note.com/yagami12345/n/n13800492b285

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?