(新々)三つ子の魂百までも(4)
「お久しぶりです。林田さん、お元気でしたか?剛田君の部屋を出て自分のアパートに帰ったとお聞きしていましたよ」
(剛田とは僕の後輩で同じ探偵である。林田さんとは友人で一緒に暮らしていた事もある仲だ)
「そうなんです。マスコミから騒がれるのが嫌だから、剛田君の所に厄介になっていたんだけど、最近はマスコミも落ち着いたみたいだし、元の部屋に戻りました。」
と、表情が明るいが、何か深刻な事があるのだろうか?
どことなくある翳りを、僕は見つけた。
探偵の観察眼である。
「で、今日は何かご用があるのでしょうか?」
と、遠慮なく聞いてみた。
「今日、此処にいるのは杉田君だけですか?他の人は・・・」
と、林田さんは不安気に聞いてくる。
「みなさんは、出かけました。私は報告書を書いています。
事務所を空には出来ないし、お客様の訪問もあるかも知れない。
留守番を兼ねて此処にいます。」
「みなさん、お元気ですか?裕美さんは
今日此処に帰ってこられますか?」
と、裕美さんに会いたいみたいだ。時刻は16:00を過ぎている。
季節は秋から冬に向かう、日暮れは早く
もう薄暗い。
「裕美さんですか?5時頃には返って来ると思いますよ。裕美さんに何か頼み事でもあるのでしょうか?」
「ちょっと、相談したい事がありまし
て、・・・」
と、林田は言葉を濁した。
「何でしょうか?宜しければ、私にお聞かせ願いませんか?お仕事の依頼でしょうか?」
林田は少し困った雰囲気を匂わせた。
僕の嗅覚は犬には劣るとはいえ、コナンを子供の時から観ているのでその様な匂い敏感に感じてしまうのだ。
「お仕事と言えば、お仕事ですが・・・」
と、何故か踏ん切りがつかない言葉を発する。
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