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私の瞳の奥に残る人(300字の小説)

最後の日、それは必ずやって来る。
そう、別れは必ず来る。
遠慮も無く来る。
どんなに一緒に居たくても。

あの時、君は若かった。
色白の顔にほっぺだけを赤く染め
君は白い息を吐き出していた。
その白い息がふわふわと
天に昇り消えて行く。
まるで君の魂が天に溶け込む様に
消えて行く。

「明日、病院に行くの」
と、弱々しい声で君は僕に言ったね。
なのに僕は君の言葉を、深くは受け止め無かった。

あの時が生きている君の、最後の姿。
今も僕の目に焼きついている。

もっと長く側に居ればよかった。
どんなに悔やんでも今となっては、
虚しいだけ。
悲しいだけ。
もう一度、君に逢いたい。
会って、君と話がしたい。

50年経った今でも、君と会って話がしたい。


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