Photo by osu_ellie (続)三つ子の魂百までも19 4 ボーン 2022年10月20日 05:44 19探偵事務所に帰る途中、伊東さんと僕は◯野家に入った。時刻を見ると、13:00前であった。緊張して刑事さんと話していたので、お腹も緊張していたのか、空腹を教えてくれなかったが、◯野家の看板を見た時、僕のお腹は鳴った。目覚まし時計みたいに。◯野家を出た後、伊東さんは、違う仕事に出かけた。僕は、代表から何も指示を出されていない。伊東さんは仕事をしても、お小遣い程度で報酬を受けていない。これも、裕美さんの情報である。僕は、他に行く所もないので、事務所に帰った。誰もいないであろうと高を括っていたのだが、不運な事に裕美がいた。僕を待っていたみたいだ。「ただいま帰りました。」と、先ず上司の裕美さんに挨拶しご機嫌を伺った。裕美さんは、僕の顔を見て、好奇心の塊の様な表情を浮かべ言った。「どうだった。何か分かった?」以前から伝えてあるのだが(前著三つ子の魂百までも の中に)僕は、重要な事は大事にしてそう簡単には話さ無い。何故なら、すんなり言ってしまうと、言葉に重みが無くなると、僕は養父に教育されてきた。今回も、教育を受けた通りに勿体ぶって話をした。「大学に行って来ましたよ。大勢の人が居ましたよ。」と、裕美さんの苛立った表情を感じたが、ここは無視。「で、学長に会いましたよ。きっとあの人、関西人ですよ」と、どうでもいい事の報告。だんだんと、表情が険しくなるが、まだいける。「矢部さんの写真を、見せてたら、ブスと言う人が居ましたよ」痺れを切らしたのか、裕美さんは 「早く、肝心な事言いなさい。新美さんの事聴いたの?はっきり言いなさい。」と、怒気を含む言い方だったので、頃合いは良しと僕は、判断をくだした。これ以上やると、切れられる。「実は、新美さんは、良い人と言う人が居るかと思うと、悪い奴みたいに言う人も居て、よく判らんのです。」と、僕は簡単に伝えた。「は〜。どう言う事?結局判らないって事なの?」と、睨んでくる。でも今日のその顔は、僕には可愛く見えた。時には、鬼に見える時もあるが。「判ら無い事は無いですけど、新美さんを良く知っている人が、事務所に来てくださるので、その人に聞けば判ると思います。」「で、その人いつ来るの?」と少し落ち着いてきたのか、裕美は穏やかに言った。「名刺を貰ったので、今日か、明日ぐらいに来ると思います。知らんけど。」と、学長の真似をして関西風に、僕は言った。「知らんかったら言うな!」と、結局僕は、裕美さんに怒鳴れてしまった。悲しい事に、この顔は、鬼だった。僕がされた養父の教育に問題が、あったみたいだ。「伊東のおじさんは、何処に行ったの?」と、裕美さんは、落ち着いた声で聞いてきた。「何処に行ったのか解らないです。他の仕事があるのではないでしょうか?知らんけど」と、もう一度関西風に言ってみた。「今日は別な案件は入って無かったけど。入ってたのかな?」と、言ったが、語尾に「知らんけど」は付けなかった。「新美さんって友達が居るみたいです。今日あった女性が言ってました。優秀なお医者さんらしいです。」「何故、それを最初に言わないの?」と、ロートーンで睨む様な目付きで言った。「今、思い出したので。もしかしたら、伊東さん、その医者に会いに行ったのかも知れません。」と、無難にかわした。「新美さんと、矢部さんの関係も掴めてないの?知っていたら、直ぐに言いなさいよ!隠してないで。」と、怒気を含む語調で言ってきた。「僕は、何も隠してないです。全て正直に言ってます。」と、胸を張って答えた。私は、事務所で静かに一人思索を重ねた。裕美さんは、報告書を書いているので、私に言い寄ったりはして来ない。新美さんの評価が極端に別れるのは、何故なのであろうか?これほど評価が別れるのは、異常とも思える。新美さんが多重人格者ではと、言う思いに駆られたが、安直に肯定は出来ない。他人は僕をどの様に判断しているのだろうか?新美さんの様に善悪が極端に別れるだろうか?余り善は無いかもしれないが、悪も無さそうだ。でも、悪口は言われていると想う。人間の行動って不思議である。最初から自分を悪く思われたいと思って行動する人は、どれ位居るのだろうか?幼い頃は、みんなヒーローに憧れる。あんぱんマンと、バイ菌まんなら、全員あんぱんマンになる事を望むだろう。だが、成長するにつれて、善悪に別れて行く。普段の行動やその生き様は、その人の持つ思想、哲学によって行動が決まるのでは無いだろうか。反社の人は、その様な考えを持って行動している為に、一般の人に恐れられても、その人には解らない。逆に、高い思想、哲学を持つ人の行動は、人々に共感を与え尊敬されるのではないか。そういえば、僕が子供の頃、養父から聞いた事がある。「お釈迦様のこの世に生まれた目的は、立派な行動をする事だ。それを、民衆に教えたのだ」と、それを養父は僕に勿体ぶって話しをしてくれた。「そうだ!私達が立派な行動をする為には、立派な思想、哲学を持つ事だ!」と、悟りを得た気持ちになったが、高い思想、哲学って何?僕にはまだハッキリとは分からない。 ダウンロード copy #小説 #コメディ #売れないKindle作家 #連続 #いい加減なお話 #正誤性 4 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? サポート