風鈴と戯れる(1分で読める小説)

風鈴と風鈴が軒先でお客様を待っていた。
風鈴の声が聞こえてくる。

「お前の音色、高音過ぎてうるさいぞ。
俺様の様に低音で心に響く音じゃ
無いといけないだぞ。」
と、威張っていうのは、鋳物風鈴だ。

「そんな事ないわ!風鈴は夏に心を癒す涼しげな
音じゃ無いといけないわ。私の音色の方が優れているわ」
と、言い返すのはガラス風鈴だ。
別の風鈴が口を挟んでくる。
「君たち、僕の様に清らかな音色にならないのかね。
高音と低音では無く、僕の様な中間の音を奏でる事できないかな」
と、瀬戸物風鈴が二つの風鈴を睨んでいる。

「どんな音色だっていいじゃない。選ぶのはお客様だから。
言い争いなんて無駄な事でしょ」
と、なだめてきたのは鉄風鈴だった。
「みんなそれぞれ個性があるよ。一番なんて無いよ」
と、鉄風鈴さんは結論を出していた。

その時である。
突風が風鈴達を地面に叩きつける。
無事に生きていたのは、鉄風鈴と鋳物風鈴だった。
地面には、ガラスと瀬戸物の破片が無残に散らばっている。
風鈴の苦みの声が聞こえてくる。

僕には、何故風鈴の声が聞こえるのだろう?

不思議な能力に戸惑うばかりの僕だ!

#シロクマ文芸部

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