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(新)三つ子の魂百までも(18)


18

沈黙の時がしばらく続き、口火を切ったのは裕美さんだった。
「確かに今から私達がやろうとしている事は、非常識な事であり、
信じる事も出来ない事です。
また、真実を解明する事が、幸せになるとは限りません。
むしろ、辛い事実を知ることになるかも知れません。
でも、私達は探偵です。またその仕事を依頼された以上は、
追究するのが仕事です。解って頂きたいです。」
と、裕美さんは重い声で相手の心に染み込ませる言い方で話しをした。
黙って頷く友子であったが、その表情は暗く、辛い悲しみを隠せずにいる。
「ひとつお伺いしたいのですが、・・・」
と、あらたまった言い方を裕美さんは、夫妻にした。
「息子さんの事ですが、息子さんとご両親しか知らない秘密とか出来事があれば、教えて欲しいのです。
もちろん、質問だけの部分です。
例えば、飼っていた犬の名前は?
とか、来た霊に聞いてみたいのです。
その答えで息子さんかどうか解ると思います。」
と、裕美さんは強い自信を持っているのであろう。

「秘密ですか?・・・・では、息子の初恋の人の名前を聞いてください。」
と、友子は答えた。
「母さん知っているのかい?その子の名前を!」
と、正一さん少し驚いている。
「ええ、この前息子から聞きました。」

「そうですか♪ では、息子さんが現れたならば聞いてみますね」
と、裕美さんは明るく言った


「お茶でも飲みますか?」
と、父親正一が気遣ったのか、私達に聞いてきた。
「そうですね、私達も買ってきた物があるのです。」
と、裕美さんは来る途中で買った食べ物を出してきた。
夜遅くなるので、コンビニで夜食を買ってきたのだ。
おにぎりやお菓子、お饅頭、コーヒーやお茶など色々あり、
珍しく裕美さんが、お金を出したみたいだ。

食べる事で、気が緩むのか?重い雰囲気は徐々に薄れていった
夫妻に私達は今まであった事件の話しを語り和やかな雰囲気を
作り出す努力をした。
[詳しくは、(続)三つ子の魂百までも、
三つ子の魂百までも(番外編) にあります]

その様に過ごしながら時は流れていき
そして、「草木も眠る丑三つ時」が訪れた。
……草木も眠るのだ!僕も当然眠い🥱……
だが、緊張感を維持する他の四人。
「公ちゃん、この蝋燭に火🔥を着けて」
と、僕の目の前に蝋燭を差し出してきた。
裕美さんの顔は真剣そのもの、武士の様な気合いの入れ方だ。
私の眠気はいっぺんに吹き飛んだ!

「はい」と従順に返事をして、火🔥つける、僕。
「すいませんが、部屋の電気を消して頂きたいのですが、」
と、夫妻にお願いする裕美さん。
「はい」と返事をする父親、正一。

部屋の灯りが、全て落ちた。
一本の蝋燭🕯️の火の灯りだけになっている。
幻想的ではあるが、不気味な雰囲気が醸し出された。
私とご夫妻は、少し裕美さんから離れ様子を伺った。
林田さんは、裕美さんに近づく。
「林田さん、私が霊を呼ぶので、私の様子で判断し写真を撮ってください。」
と、言い、裕美さんは静かに目を閉じた。

……どこかのテレビ番組で観た光景だ……
と、僕は不思議な想いで裕美さん観ていた。
でも、現実に此処で起こっているのだ。

蝋燭の灯りだけの薄暗さが、恐怖心を与えてくる。

裕美さんの身体が小刻みに動く。
意識して動かしているのか?それとも自然と震えるのか?
解らないのだが、裕美さんは別の領域に入ったみたいだ。

しばらくの時間が過ぎ、
今度は、頭だけを上下にゆっくりと動かしている。
その時、林田さんは裕美さんの座る場所の写真を撮った。
……松田さんの霊と、裕美さんが話しをしているのか?……
僕には理解でき無い、ただ裕美さんの姿を見ているだけだ
だが、不思議と恐怖感が消えていた。

松田さんは写真は撮り続けている。
このフィルムは24枚写す事が出来ると言う。
僕はフイルム式のカメラは使った事が無いので初めての経験だ


デジカメでは、幽霊が写らないらしい。
と、言う事はデジカメで撮ると心霊写真は出来ない。
安堵した僕であった

どれ位の時間が経ったいるのだろうか?
時間の流れは人それぞれに違うと、僕は思っている。
僕には長い時間の様に感じてはいるのだが、他の人達は
どの様な想いであろうか?

その時である、裕美さんの苦しがる声が聞こえた。
その声はいつもの裕美さんの声では無い。
うめく様な声で
「熱い・・・・」と言っている。


……熱いって何?裕美さん、大丈夫ですか……と、聞きたかったが見守るだけで声が出なかった。
林田さんは、カメラのシャッターを押し続けている。

不安そうに見つめる、ご夫妻。
緊張と恐怖と不安が入り混じる、部屋の中。

今度は裕美さんが、泣き出した。
声はあげてはいないが、涙が溢れている。

いったい何があったのか?
霊が憑依しているのか?
僕は真剣に裕美さんを見ていた。
でも、手も差し伸べる事も出来ない。

静かな部屋にシャッターの音だけが響いている。

そして、暫くして 裕美さんが静かに眼を開いた。
その瞳は、凛々しく清らかな輝きがあり、裕美さんが別人に見え
凄く綺麗な女性に見えた。



https://note.com/yagami12345/n/n8866e9bb151f





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