見出し画像

コンビニ密度が世界トップクラス。圧倒的な流通網は、希望なのか悪夢なのか

こんにちは。春節休暇が終わり、今日が仕事始めの台湾です。
春節休暇中、次男がサイズアウトして着られなくなった洋服や靴を整理してとてもスッキリしました。

まだ着られそうなものはメルカリ的なアプリで売りました。

できるだけゴミを減らしたいという気持ちと、まだ着られるから大切に着てくれる次の方にお渡ししたいという気持ちで、すごく安価だけれど出品しています。そして、自分が人からいただいたブランドものだったりは、何かしらアイテムを買ってくれた人におまけとして無料で譲っています。

先日販売したレインコートは、台湾南部まで届いたようです。

そんなこんなで、今日は台湾で暮らしていて「最近、変化が加速しているな」と思う件について書いてみます。

「コンビニの店舗間でモノが送れるサービス」がめちゃくちゃ発達している

便利を追求するためなら労力を厭わない台湾(個人の感想です)。

台湾はオンラインショッピングもめちゃくちゃ発達していて、Amazonが進出してくる隙もないくらいです(Amazonが使われているのは海外通販程度。もしかしたら台湾市場はハードルが高い割にリターンが見合わないと判断されているのかもしれません)。

ありとあらゆるものはネットで買うことができるのですが、「買ったものは近所または職場近くのコンビニで受け取る」という人が多いです。

オンラインショッピングで買った商品をコンビニで受け取る

オンラインショッピングで買った商品は、コンビニで受け取ることができます。
しかも何の手続きも必要なく、レジカウンターで携帯番号の「下3桁」を言えば店員さんが持ってきてくれて、身分証を見せて確認が取れたら受け取ることができます。この間わずか1分程度、めっちゃスムーズです。

相手の情報を入力しなくても荷物を送れる

そして、送る方もとても簡単です。
冒頭で書いたフリマアプリも、商品を買ってくれる人がいたら、商品をコンビニに持って行き、アプリで表示されたQRコードを端末にかざすだけで、端末から宛名ラベルが出てきます。(不具合でQRコードが表示されない場合も、注文IDを入力すればOK)

端末から出てくるシール

送る方は、それをペタッと荷物に貼ってレジカウンターに渡すだけで、荷物を送ることができます。これまた2分程度で完了します。

ペタッとシールを貼るだけで荷物を送れます

郵便以上、宅配未満。あらゆる物をコンビニから送り合う私たち

フリマアプリやネットショッピングだけではありません。仕事で使う書類などのやり取りでさえ、コンビニで送り合っています。
会社の会計をアウトソースしている方に書類を送る時、友人宛に何かを送る時、普通郵便以上、宅配未満といった感じで利用しています。

メリットは
・送料が安い(宅配便やバイク便に比べて)
基本的に60元程度(日本円でおよそ300円。しかも、たまに35元など優待価格になる)。
台湾クロネコヤマトが130〜250元程度、郵便局の小包は70〜135元程度です。

・普通に速い
基本的に、17:00までに送ったものは翌日正午以降に受け取り可能(離島などを除く。もっと速いサービスもある)

・送るのが簡単
前述したように、送るのがとても簡単です。郵便局や宅配会社の営業所まで行ったり、伝票を書いたりしなくても端末でピピっと発送手続きが済みます。

・受け取りも簡単
受け取る人にとっての負担が少ないのも大きなメリットです。
小包の宅配だと、その時間に受け取り人がその住所にいなければならないのですが(管理人や宅配ボックスがある家ばかりではありませんよね)、コンビニに届くと携帯のショートメッセージに通知が入り、好きな時間に受け取ることができます(受け取り期限はあります)。

台湾版Amazonのようなショッピングサイトは台湾にたくさんありますが、

博客來」という本を中心にしたネットショップも、セブンイレブンを擁する統一グループから出資を受けており(株の過半数を取得済み)、買った本はセブンイレブンでの「受け取り時支払い」を指定することができます。住所への宅配も指定可能なのですが、セブンイレブンの店舗で受け取りを指定すると送料がかなり安くなる(20元〜)ので最高です。

「博客來」の送料比較表。セブンイレブンでの受け取り・支払いが圧倒的にお得。
決済方法もさまざまですが、上から見て、セブンイレブンの店舗で受け取り支払うことを推奨されているのが一目瞭然なUIです。
セブンイレブンのポイントで値引きできるのには驚きました(しかも、今回本を買ったことでまたポイントが貯まります)。

セブンイレブンの個人販売支援サービスもすごい

実は、前述のフリマアプリを介するとコンビニ間の送料が60元かかるのですが、そのアプリ経由で「このアイテムを買いたい」という連絡をくれた買い手の方が100%「これで送ってくれない?」と指定してくるサービスがあります。

それが、セブンイレブンの個人販売支援サービス「買賣便 myship」というサービスです。

めちゃくちゃ便利なセブンイレブンの個人販売支援サービス「買賣便 myship」。
写真は私が販売して物を送った履歴です。

売り手はネット上で自分の売り場を開いて、売ったアイテムをセブンイレブンの店舗間で送ることができ、買い手は受け取り時に送料込みの価格を支払うという仕組みです。しかもこれはセブンイレブン自社サービスなので、送料が35元で済みます(サービスを普及させるための限定価格だと思います)。

買い手が払ったお金は、セブンイレブン店舗間の送料が引かれ、残額を私が登録してある銀行口座へと振り込まれます。

【考察】台湾のコンビニは流通で死角なしなんじゃないだろうか

ここまでは日本の方が読んでいてもピンと来ない話だったと思いますが、ここからが私の考察です。

台湾には1万3,000軒を超えるコンビニがあり、韓国に次いで世界2位なのだそうです。

2021年の時点で、台湾人の1,582人につき一軒のコンビニが存在する計算。1位の韓国は1,200人に一軒。
(出典:「全台逾1.3萬超商,全球密度第二!台灣超商覆蓋率全球第二 超商群雄的下一戰(經濟日報、2022/09/13)」

2010年の時点ではネットショッピングの配送のうち77%が宅配便を指定していたのに対し、2019年時点では85.9%がコンビニ受け取りを指定しているそうです。
(出典:『萬能店員:我的便利、你的過勞,超商的社會代價』著:張立祥、出版:游擊文化)

ここまで普及しているのは、まず台湾のコンビニ店舗がここまで数多く存在し、人口や地域をカバーしているという基礎があるからなのでしょう。

日本は少子高齢化の影響でコンビニ市場が減少傾向にあるとされていますが、台湾のコンビニが流通の要となっている現状を見ると、日本の現状とはまた少し異なるように感じています。

ネットショッピング界でめきめき頭角を表してきたシンガポール発の「蝦皮購物 Shopee(親会社は李小冬 Forrest Li Xiaodong 氏による創業の「冬海集團 Sea Limited」)」も、荷物の受け取りや発送の起点にすべく「蝦皮店到店」という拠点を全台湾で900店舗まで増やし続けてきていましたが、2023年1月に送料を45元まで値上げすることを発表しています(それまでは送料ゼロ→19元→29元→39元とじわじわ値上げしてきていた)。

出典:「網購族哭了!蝦皮店到店2月1日起運費調漲為45元(聯合報、2023/01/19)」

ちなみに、台湾の4大コンビニは、2021年時点で

  1. セブンイレブン(統一グループ)46.5%

  2. ファミリーマート(日系の日商全家便利商店股份有限公司(45%)、萬寶開發 (19.40%)、光泉牧場 (5.29%)、泰山企業 (3.06%))22.0%

  3. ハイライフ(光泉グループ)6.5%

  4. OKマート(豐群グループ、サークルKとのライセンス契約を終了して以来、独自経営)2.5%

となっているそうです。
(出典:未来流通研究所

ただ、こちらはこちらで統一グループがカルフールの全株を290億元で取得したりと、台湾国内の小売業における境目がどんどんぼやけてきています。が、本題からずれるので、その話はまた。

やはり、もともとある流通網から横展開していくコンビニの手法に死角はないのでしょうか。

生活者としてすごく気になっているのが、コンビニのフランチャイズオーナー含む店員さんたちの労働環境について

こうした台湾におけるコンビニの勝ち筋は、一見日本が参考にできそうにも思えるかもしれませんが、生活者として台湾で暮らしていると、普段からお世話になっている近所のコンビニのスタッフさんたちを見ていると、おせっかいにも「ちょっと、いやかなり心配」になっております。

我が家の近所のセブンイレブンは、おそらくフランチャイズ店で、そのオーナー含む店員さんたちの労働環境はかなり過酷であるように見受けられます。

今回書いた流通など含め、台湾のコンビニの業務範囲はかなり広く、店頭でカフェサービスも行われています(タピオカドリンクやソフトクリームを店頭で作ってくれるんですよ!)。

春節に食べたいちごソフト。スタッフさんがその場で作ってくれます。

そして、「SOP(Standard Operation Procedure)」と呼ばれるマニュアルが事細かに決められています。

「あれ? オーナーさん、今日も出勤してる」

同じ方(特にオーナーさん)がずっと出勤されているのを目の当たりにすると、身体がボロボロになっているのではないかと心配になりますし、女性スタッフの方が出勤されている時などは、お子さんがコンビニ店内でスマホゲームをしながらずっとお母さんの仕事が終わるのを待っている様子も頻繁に見受けられます。

このあたりはやはり社会問題にもなっているらしく、本も出ていましたので、勉強してみようと思いました。

最近買ったコンビニ事情に関する本、2冊。

血汗超商:連鎖加盟如何變成鏈鎖枷盟』(著:吳偉立、出版:群學、2010年3月)
萬能店員:我的便利、你的過勞,超商的社會代價』(著:張立祥、出版:游擊文化、2021年5月)

このテーマに興味がある方がどれくらいいらっしゃるか分かりませんが、生活者として関心を持ち続けたいなと思った次第です。


こちらでいただいたサポートは、次にもっと良い取材をして、その情報が必要な誰かの役に立つ良い記事を書くために使わせていただきます。