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国技館開場直後の静謐

大相撲初場所7日目を国技館で2階席から観戦(枡席は膝が痛くて無理)。コロナ禍規制が緩んで、朝8時半に開場。朝早い総武線には、序ノ口らしき力士たちが鬢付け油の匂いをプンプンさせて乗り合わせている。熱心なファンは開場前から並んでいる。取り組みは9時からだが、誰もいない静まり返った土俵を見るのが好き。とても神聖な印象で「相撲が単なるスポーツではなく神事である」という科白は、こういう時に実感する。やがて呼び出したちが土俵を掃き清める。そしていよいよ勝負審判の入場を経て、力士たちが入場。観客はまばらで、無名力士たちが土俵で明日を夢見て戦っている。行司は裸足、呼び出しも新米で調子っ外れ。今や序ノ口には伝説の服部桜もおらず、特にご贔屓の力士(三段目の慶天海は難敵・朝弁慶に上手投げで敗れる)もいない。それでも肉弾相撃つ熱戦が続く。裾野があるからこそ、上位力士は輝ける。この日はとっくり投げの奇手も見れた。この助走の1時間の静謐を味わいたいために早く行く。もちろん満員御礼の垂れ幕で、三役陣が活躍するところも楽しい。しかし端緒の静謐はテレビでは決して味わえない体験である。

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