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六道慧「公儀鬼役御膳帳」

六道慧「公儀鬼役御膳帳」(徳間文庫)。電子書籍版はこちら↓
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 将軍の毒味役「鬼役」を務める御膳奉行いわゆる膳之五家。その筆頭格である木藤家の妾腹の子である隼之助。父である多聞は、隼之助を敢えて武家ではなく市井で暮らさせる。それは多聞が嫡男を差し置いて、隼之助に「鬼の舌」の天分を見切ったからだった。多聞には毒味役としてだけでなく、江戸の臓腑を守るお役目もあった。その意味で、まさに隼之助は多聞の秘密兵器であった。
 本作は時代小説としてのシットリとした味わい、そしてミステリー作品としてのハラハラドキドキがたすき掛けになっている。そしてストーリーとしては「塩を制するものは天下を制す」という塩騒動を縦軸として、忠臣蔵を巡る吉良上野介側の歴史的反駁が横軸となっている。そして敵味方いずれにも味のある配役揃い。どの登場人物にも一癖ある。読み進まないと、誰が敵だか味方なのかわからない。読み終えてもどちらだったかわからなかったキャラもいた。何より主人公の隼之助が、親である多聞の言動を読み切れない。切れ者の言動には何かがある。表にしたり、裏をひっくり返したりして、その真意を探る。それが優れたミステリーの一筋縄ではいかないところ。


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