見出し画像

「白鵬本紀・英雄の子」白鵬からのメッセージ

(監修)白鵬翔(作画)山崎享祐「白鵬本紀・英雄の子」(徳間書店)。https://www.amazon.co.jp/dp/4197806450/週刊誌「アサヒ芸能」に連載されている白鵬の入門以来の相撲人生を描いた漫画である。モンゴル相撲の横綱であり、レスリングでメキシコオリンピック銀メダルを獲得した白鵬=ダヴァの父であるジグジドウ・ムンフバトは、モンゴル国民の英雄であった。白鵬が少年時代に相撲の面白さに目覚め、日本の角界を志願する。しかし身体が細かったため、どの部屋にも相手にされなかった。唯一手を差し伸べてくれた宮城野部屋には旭鷲山の紹介があった。「とにかく食べて身体を大きくしろ」という親方の教えを守り、スクスクと成長したダヴァ。白鵬という勇壮な四股名ももらい、激しい稽古に耐えて、徐々に頭角を現してくる。
 物語はまだ白鵬デビュー直後の序章であるが、この漫画の注目すべき点は、白鵬自身のインタビューによることばが盛り込まれていることだ。そこには場所を終えての感想や、横綱としての心構えなどが語られている。それを読む限り、私には白鵬が日本相撲協会や横審に糾弾されていることへの回答である気がする。言いたくても正面から答えればカドが立つ。だからこの作品から遠回しに迂回して、自ら考えを述べている。語られている内容は至極真っ当である。これが現実の行動にどう解釈されるかは難しいところであるが、一つ考えられることとして、白鵬には日本の角界以外に、もう一つの考え方の基準があるのではないかと。それはもちろんモンゴル相撲であり、父親の教えである。おそらく白鵬と日本相撲協会が相容れない面があるのは、そのあたりに問題と課題がありそうだ。皆さんも白鵬の声なき声に耳を傾けるために、この一冊を手に取って欲しい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?