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北重人「汐のなごり」

北重人の2作品を電子復刻。先ずは短編集「汐のなごり」。雄大な鳥海山(物語では海羽山)を望む、酒田の港を舞台とした(物語では水潟)、北国の商人たちの六つの短編。どの物語にも人生の含蓄と余韻があり、それぞれに運命の織りなすドラマがある。その光景には印象派の絵のように、背後から光が射しているような気がするのは気のせいか。電子書籍版はこちら↓
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①海上神火
水潟の茶屋「汐浦」の女将である志津が待つは、船持ち船頭となった吉蔵。齢48になっても志津の容色は衰えず、幼馴染の港への訪れを今か今かと待ち焦がれる。
②海羽山
津軽の飢饉から羽前に逃れた一家だが、父母妹は途中で朽ち果てる。水潟で古着を扱う木津屋に拾われ、商いを喜三郎は継ぐ。代替わりを前に、生き別れとなった兄の消息を聞く。
③木洩陽の雪
一代で北嶋屋を起こした吉太郎に嫁いだ千世。夫が逝った後も家業を支える。何故か授かった男子だけが早逝し、孫の弥一だけが無事。娘時代に弟を喪った記憶が千世を不安にする。
④歳月の舟
兄の仇を追って30年、箕輪伝四郎が帰郷。仇は既に死んでいた。後に真相を知る十大夫に、伝四郎からの便り。藩の政変を間近に、いかに伝四郎と向き合うか、十大夫は迷う。
⑤塞土の神
娘のお勢が男に狂っていた。何も言えない娘婿や店の者たち。思い返せば先代である自分の夫にもあったこと。お以登は、その時に問題を解決してくれた妙慶尼を訪ねる。
⑥合百の藤次
水潟の米相場。悪どい商法で値を吊り上げる河北屋寅造。そんな寅造に反発して売りに徹した芳五郎だが、相場は天井知らずで窮地に。そこに現れた加賀屋三九郎の相談とは。

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