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四股の美しさ

相撲の取り口に感じる美意識はもちろんある。現役では、力自慢の栃ノ心による吊り出し、上手を取った逸ノ城のぶん投げ、朝乃山の華麗な寄り身、御嶽海の一気に電車道、玉鷲の重量感ある突き押し、若乃花仏壇返しの再現狙いの白鵬、琴恵光の網打ち、サーカス並みの宇良の居反り。土俵を去った力士では、玉の海の盤石の右四つ、魁皇の強引な小手投げ、琴錦の前陣速攻、麒麟児の回転の速い突っ張り、しぶとい旭国の食いつき、立ち合い一閃の藤ノ川の蹴たぐり、舞の海の八艘跳び。どの技も個性的でウットリする。
 その一方で、四股が美しい力士が好き。虚空に粘りつくように、高く、ゆっくりと上がる。これがどんなに大変なことかは、先日の阿夢露による「ニコライのオンライン相撲道場」で、身に染みて感じた。弛まぬ鍛錬の末に生まれたパフォーマンスである。現役力士では、阿炎、遠藤、明生、千代の国。そして引退した力士では、横綱・貴乃花、片山。今場所は阿炎が途中休場となって残念だったが、明生が十両優勝、千代の国が幕下優勝と、四股の美しい力士が活躍したことも、密かに嬉しかった。

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