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宮下暁「東独にいた」

宮下暁「東独にいた」①②(講談社)。東西冷戦体制時の東ドイツ。しかしソ連では、ゴルバチョフが政権を取り、東欧諸国にも雪溶けムードが漂い始めてきた。東独では「フロイハイト」と名乗る反体制組織が、政府要人や施設を狙ったテロを繰り広げるようになった。そんなテロ組織に対して、国家が編成した多目的戦闘群「MSG」。超人的に身体能力を鍛えられた「身體兵器」と恐れられる。
 「MSG」に身を置く、美しいアナベル・フォードール(アナ)には、心に秘めた男性がいた。小さな書店を営む日本人のユキロウ・フジサキ。銀髪にして知的な雰囲気を漂わせるツンデレ。彼女は自分の職業を隠して、ユキロウに仄かな好意を示す。しかし、実はユキロウは別名「フレンダー」と呼ばれる「フロイハイト」の隠れたリーダーであった。お互いへの慕情とイデオロギーの板挟みになった二人の運命は?
 未だ完結には至っていないが、敵味方とも超人的な身体機能を保有している戦闘シーンが魅力。ことに狙撃されたアナが寸前で弾をかわすシーンは、スローモーションのように見事。人体の動きがコマ送りされた高速フィルム的に繰り広げられているところが、この作品の見せどころ。鉄のような意志と信念を持つ「MSG」と「フロイハイト」の構成員。そんな中で、アナとユキロウに通う交情だけが、この物語の揺らぎであり、物語の鍵を握る分水嶺である。国を社会を守り、変えようとする若者たちの葛藤。身体はターミネーター級であっても、人は心を持つのだから。
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