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パリオリンピックで印象的だったのは乙女の涙😭

パリオリンピックは時差があって、真夜中から早朝にかけてだったので、あまり実況中継は観なかった。マスコミの浮かれぶりやメダル偏重にもついてゆけない。ただ深夜覚醒した時に、インターネットで戦績をついついチェックして寝不足に。終わると寂しいものだ。
 そんな中で印象に残ったのは、乙女たちの涙。勝者は記録に残るが、敗者は記憶に残る。ことに阿部詩選手の2回戦敗退後のシーンだった。連れ合い曰く「いきなりすごいものを見せられた」。親が死んだかのような号泣を見たのは、人生初めての衝撃だった。これを観たら、その後のどんな光景もシックリ心に入ってこなかった。世間から、試合後の態度に対して「相手への礼を失している」「感情にとらわれて子供みたいだ」との批判も数多かった。たしかに相手のディヨラ・ケルディヨロワ選手(ウズベキスタン)が、阿部詩選手への敬意から、勝利の感情を押し殺していた態度と比べると頷けなくもない。しかしあの獣のような慟哭を聞いていると、われ知らず感情が共振してしまった。人間って、ここまで泣けるんだと。その日に至るまでの苦労や努力、プレッシャーも伝わってきた。スポーツマンシップとか、そんなことはどうでもよくなってしまった。スポーツサイトによれば、2回の双肩の手術を経ての国際大会欠場によって、世界ランクが9位と降下したことが、世界ランク1位と2回戦で当たった理由とのこと。そのため敗者復活戦もなく、銅メダルも逃した。対戦後のフランス観客席からの労りの「ウタコール」にはひたすら感謝だった。阿部詩選手は持ち前の闊達さから、世界中のファンに愛されていた。だからこその「ウタコール」だったのだろう。その後で兄・一二三選手を応援する観客席で、阿部詩選手が家族とおにぎり🍙を食べているシーンを観て『あ、食べられる精神状態になったんだ』とホッとした。おそらく世界中の人がそう思ったことだろう。

敗れて号泣する阿部詩選手
兄の応援の観客席で家族とおにぎり🍙を頬張る阿部詩選手


 100mバタフライで決勝進出を逃した池江璃花子選手もそうだが、人生は勝負だけが全てではない。「何のために努力してきたかわからない」と嘆いていたが、そんなことはない。池江璃花子選手が、白血病から立ち直って、五輪に二度も出場したことは人類史上最高の偉業である。ウクライナの美女柔道家ダリア・ビロディド選手も2回戦で舟久保遥香選手に、ゴールデンスコアタイムで反則負けで敗退の涙。2022年のロシアによるウクライナ侵攻で奪われた生活の全て。故郷を追われ、スペインに拠点を移しての苦しい毎日だった。オリンピック会場でウクライナ🇺🇦国旗を揚げることは、対露国策として彼女に課せられた十字架であった。もう一人傷心であったろう、未成年で喫煙と飲酒によって出場を辞退した、女子体操の宮田笙子選手。公の場には出てきていないが、おそらく失意の蟄居を続けていることだろう。5人のチームから主将が抜けて4人で戦った団体戦は、見事に決勝進出して8位入賞。宮田笙子選手から贈られたヘアピンを身につけ、入場時に宮田笙子主将の決めポーズを4人で表現したというニュースは、大会上最も心温まるエピソードだった。家族や友人という存在がどんなに大切なものか伝わってくる。傷ついた乙女たちを、きっと癒やしてくれたことだろう。

準決勝で敗退して嘆く池江璃花子選手
2回戦で敗れて号泣するダリア・ビロディド選手
宮田笙子選手の決めポーズを取る日本女子団体チーム


 自分はオリンピックは止めた方がいいとずっと思っている。開催国は途方もないお金を注ぎ込んでいるし、その後の建設施設の維持にも多額の費用がかかる。IOCの振る舞いは特権貴族そのものだ。東京オリンピックでは、政治と業者癒着が多発。また国際政治の不安定化から、テロの発生も危ぶまれる(事実開会式の日に、意図的な鉄道事故が頻発した)。何よりもオリンピックは4年に一度の開催で、たまたまその年に好調だった選手が世界最強の称号を手にする。しかしその前3年間の世界選手権優勝者は、なぜ同様に評価されないのだろう。冬季オリンピックの高梨沙羅選手になどは、特にそれを感じた。またサッカー⚽️では年齢制限があり、ワールドカップとの位置付けは何が違うのだろうか。プロとアマの混在も意味があるのだろうか。サッカー⚽️、テニス🎾、ゴルフ⛳️、バスケットボール🏀などは、選手の戦績に関係なく、やる意味がないのではないだろうか。それでいて4年に一度だからこその、異様なプレッシャーが選手にかかる。オリンピックの存在意義は、ふだんはテレビ中継される野球とサッカー以外のスポーツを観る機会はほとんどないので、敢えて言えばメジャーでないスポーツ(例えば近代五種、セーリング、馬術、射撃、水球、自転車、アーチェリーなど)に接する機会とPRだろうか。

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