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『京都不案内』どころか『京都首ったけ』

森まゆみ『京都不案内』(世界思想社)。電子書籍版はこちら↓
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 冒頭には、身体を壊して、気功で体質改善するために京都に行ったとある。しかし『京都不案内』というタイトルを裏切って(これは謙譲の科白だろう)、縦横無尽に京都に深入りしてゆく。それも若い頃からの京都とのおつきあいの集大成である。京都と言っても神社仏閣を巡るだけでない(その知識たるやすごいものがあるが)。古都ゆえの歴史的建造物の作り手や作風にまで触れている。そして何より人との交流。京都という街を愛する文化人たちとの胸襟を開いたおつきあい。歴史を紐解いて、文豪や俳人たちの京都との関わりにも遡っている。そんな探究心が、著者の数多くの著書を生んでいる。そして谷根千で名を馳せた著者が、京都という文化を守ろうという姿勢も共通して筋が通っている。インタビューでピックアップされている京都人たちも、個性的かつ魅力的な、いかにも「森まゆみ」的チョイスの方々たちだ。聴き取った内容も『ウフフ』とほくそ笑んでしまうユーモラスな箇所も散見。何より食い道楽の自分には、紹介されるお店の数々に垂涎。観光ガイドに載っているお店ではなく、地元在住の人に教わったから、あるいは自らが住んでいたから紹介できるお店ばかりだ。僕がタイトルをつけ直すなら『京都首ったけ』ではないかなと思う次第。


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