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葉真中顕 「W県警の悲劇」

葉真中顕 「W県警の悲劇」(徳間文庫)。警察官であるより前に、一人の人間として、常に正しくありたい。「警察官の鑑」と誰からも尊敬されていた熊倉警部。W県警初の女性警視へと登りつめた松永菜穂子は、彼にある極秘任務を与えていた。その最中の、突然死。事故かそれとも事件か。事故として処理したい菜穂子の胸中を知ってか知らずか、熊倉警部の娘が事件現場についてあることに気づく。『絶叫』『凍てつく太陽』の著者が贈る、ネタバレ厳禁の前代未聞の警察小説。
 ここまでが公式の内容説明。本書は6つの短編で構成されている。全てが別の女性警察官が主人公。そのいずれも『あっ!』と驚く起承転結。それぞれの冒頭で設定されていた物語の与件。しかしパズルのピースは巧妙に隠されている。6つの短編は連環している。思わぬ結末に読者は作者にしてやられたことを知る。そしてタイトルの一部である「W県」が物語のキーワード。それは日本に一つしかない頭文字の都道府県。古い慣習が厳然と残る片田舎の県警。そしてエラリー・クィーン「Wの悲劇」も表徴した「Woman」の「W」。W県警で初めて県警幹部である警視正に上りつめた松永菜穂子をはじめとする、田舎警察での女性警察官たちのシビアな戦い。それは決して綺麗事では済まされない、泥水を啜っての試練である。天使と悪魔の顔が入れ替わる。地位の高みを目指す野心や活気の中に、シャンプーや化粧が入り混じった女性特有の甘い香りが漂ってくるような気がするのも、筆者の筆力のなせるわざ。
1️⃣洞の奥
尊敬する警察官の父・熊倉哲を喪った熊倉清。事故なのか、事件だったのか?
2️⃣交換日記
12歳の江川瑠美を殺したのは、日下凛子が愛する同僚の祐司への疑惑。
3️⃣ガサ入れの朝
自分を庇ってくれた野尻恒之警部を慕う千春。恩返しに発動する秘密能力。
4️⃣私の戦い
柔道を極めても弱気を克服できない葛城千紗。痴漢退治の秘策とは。
5️⃣破戒
実父殺害で自首した佐山伸一郎神父。滝沢純江は、神に裁きを求める。
6️⃣消えた少女
女性にして初の警視正となった松永菜穂子。最高意思決定機関・円卓会議に加わるが。
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