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宮下暁「東独にいた」④

宮下暁「東独にいた④」(講談社)。電子書籍版はこちら↓
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 東西冷戦体制時の東ドイツで「フロイハイト」と名乗る反体制組織が、政府要人や施設を狙ったテロ活動。テロ組織に対して、国家が編成した多目的戦闘群「MSG」。MSGに身を置く美しいアナは、書店を営む日本人のユキロウと恋仲になる。しかしユキロウは別名「フレンダー」と呼ばれる「フロイハイト」の隠れたリーダー。前作③でユキロウがフレンダーであると認識したアナは、ベルリンの教会がフロイハイトの拠点であると見込んで、地下道の捜索に乗り出す。実態はアナの見込み通りで、MSGによる襲撃から激しい攻防戦と闘争劇となる。
 フロイハイトの活動資金が西側諸国からの援助であり、東独政府内部にも西側への内通者がおり、MSGは次第に立場が追い詰められてゆく。国のために生死を賭けて尽くしてきたはずが、いつのまにか孤立した立場に変わってゆく。それが政治の身勝手で無責任なところである。この作品の魅力は登場人物たちの極めて超漫画的なアクロバット的身体能力であるが、今回は主役のMSGメンバーだけでなく、フロイハイト側にも異才を示すメンバーが登場していることが、いかにも東独らしく当時を知る自分にはリアリティを感じさせろ。

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