見出し画像

日高義樹「世界ウィルス戦争の真実」

日高義樹「世界ウィルス戦争の真実」。世の中がコロナ禍で不況に沈む中、パンデミックが商売に貢献している業界もある。巣篭もり生活によるスーパー、宅配便。マスクや消毒薬の衛生用品。そしてコロナ本を出すことで、出版業界も禍福を転じている。世の中に問題が生じると、直ちにそのテーマで執筆できる著者がいる。北朝鮮問題しかり、香港問題しかり、米中貿易摩擦しかり、仮想通貨トラブルしかり。いかにそういう能力のある著者を揃えられるかが、編集者の腕である。本書の著者である日高義樹先生は、ホットな時事局面になると、必ずスルスル出てくる才覚のある著者。
 ふだんは電子書籍のオーサリング業務において、月20冊くらいを担当しているので、全部を熟読できる余裕はない。それで極力フィクションだけは精読するよう努力している。ノンフィクションは、よほど興味深そうなコンテンツ以外は、読み込むより迅速な校閲校正に徹するようにしている。「世界ウィルス戦争の真実」は、第5章「日本よ、オリンピックを忘れよう」の目次にギョッとした。1年間の延期が決まった東京オリンピックだが、本書はその実現性に疑義を呈するものである。コロナウィルスの蔓延だけでなく、世界各国が防疫的な意味において、鎖国状態となり、世界平和イベントを楽しむ風潮ではなくなると予言している。そういう意味で、観光業やインバウンドに傾斜しており、食料自給を放棄し、原料調達を海外に依存している日本経済に警鐘を鳴らしている。これからはいかに自国内で自立した経済や需給関係を成立できるかが、立国の鍵となると説く。著述内容はマスコミやWebで流れているニュースの寄せ集めであり、中国の生物兵器説など実証性に乏しい記述も多いが、ポストコロナに向けた一つの近未来シミュレーションを試みようとしている。
https://www.tokuma.jp/book/b515808.html

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?