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鈴峯紅也「警視庁公安Jクリスタル・カノン」

鈴峯紅也「警視庁公安J クリスタル・カノン」(徳間文庫)。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B09RQK27LW/
 中国一人っ子政策が生んだ「黒孩子」。国家から許されざる出世によって日本に売られた余分な子供たち。人身・臓器売買に手を染める中国犯罪集団「ブラックチェイン」。日本には跡継ぎを必要とする需要が少なからずある。かつて小日向純也が解決した事件から三年が経過。生き残った「黒孩子」の中で日本で財を為した者に、過去を暴くという脅迫電話が。そこにやって来た中国政府情報機関の全道安。一連の裏を探る小日向純也だったが、襲う者も襲われる側も次々と築かれる死屍累々。果たして欲望と遺恨の連鎖は断ち切られるのか。 大人気警察小説「警視庁公安J」シリーズ第七弾は、2017年に発表された「警視庁公安J ブラックチェイン」の続編。
 現実の日常は組織の壁に阻まれ、資金の枯渇に泣き、偶然の運不運に翻弄される。しかし小日向純也の率いるJ分室には、そのようなことはない。首相一家の異端児にして、警視庁の爆弾男である小日向純也。億単位のポケットマネー。組織の順列をすっ飛ばしての指示命令。甘い端正なマスクと、卓越した戦闘能力。揺るぎない部下たちからの信頼。天は小日向純也に二物のみならず多くの天恵を与えた。宇宙怪獣のような巨悪に立ち向かう時、こういうウルトラマンが必要だ。良き上司との巡り合わせは人生最大の幸運である。小日向純也の冷静沈着にして理路整然たる行動の陰に、さりげない手回しや配慮を見つけた時。それはまさに「ツンデレ」となる。秘書の大橋恵子の純也への切々たる慕情は、部下の鳥居と猿丸の上司への信頼と相通ずるものがある。それにしても今回のエンディングの種明かしには、度肝を抜かれた。
 

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