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奇譚集②ー星読みー

あるものを見つけた。それは、全然通らない道で見つけた、お店の中、一枚の古い紙だ。
紙、に見えたのは実は違っていて、星の図がたくさん描かれている。
角度が書いてある円形のものはぐるぐると回る。
昔に、プラネタリウムなど売っていた星図、と呼ばれるものなのだろう。
それにしてはだいぶ古い。茶色く黄ばんでいて、ところどころ染みがある。

「それは100年ほど前に使われていた星読みの道具です」

いきなり声をかけられたので振り返ると、後ろに人が立っていた。
高齢の女性だろうか。白髪が目立つが、それをきっちりとまとめ切っている。
後ろで固く結ばれていて、背筋がしっかり伸びている。
一瞬、某魔法映画に出てくる先生のような風貌だ。
しかし、声音は若い女性を思わせる若々しさがある。

「星読み?」

「一般的には、星占い。と呼ばれていますね。昔は科学などが発展しなかった時代は、星を読んでその先々の行く末を担ったものです。
しかし、科学の発達により、だんだんとその役目も終われていきます。
あなたが今持っているものは、100年前に実際に使われていたものです」

わかったようなわからないような説明に戸惑いを覚えて「はぁ」としか答えることができなかった。
要は星占いの道具ということか。確か、ホロスコープとかというものだろう。
最近よく色々なところで話を聞く。現に私も最近興味があり、勉強を始めたのだ。
しかし、目下のところ星読み自体が本当に複雑すぎて、正直投げ出しているところもある。しかしこの道具がそう言うものとして使われていた、と言う言葉を聞いたら、何かしらの親近感が湧いてきた。
思わず、星読みに使われていたというものを撫でる。すると、一瞬皮膚が熱く感じた。

その様子を見ていてたお店の人は、にこりと微笑んでこういった。

「それとあなたとは相性がいいようですね。しかしお気をつけを。道具というのは、100年経てば何か力を得るものです。あなた様もその力に負けないように」

知らない路地から知らない間に出ていて、私はいつもの道にいた。
手には先ほど店で見ていた星図盤を持っていた。


ここから彼女は不思議なことに、彼女の目には人々の星図とこれから起こるであろう未来が見えるようになった。未来は、星の動きとともに、こうした未来が起こると、ヴィジョンとして見え出したのだ。
最初は戸惑いを覚えた。もちろん、病院にも受診し、目の検査も受けたがあまりにも突拍子のない話のため、医師も混乱するばかりだった。
それは彼女自身が1番とまどった。何せ、人の未来と星の動きが精密機器のように見えるようになったのだ。ホロスコープを勉強しはじめていたから、これがこうなってこうなる、とわかってはいる。しかし、それとともにその人の未来が映像として流れるのは理由がつかない。まるで霊能力者や超能力者になったような気がする。
しかし、それが見えるときは、彼女があの星図盤を持っている時だけだった。
星図盤を鞄に入れていたつもりはない、たまたま入っていたものだ。
星の動きとともに人々の星座、そこからその星座に関する星がどう動いて、これからどう人生が転換するのかが全て見えるようになった。

一度試しに、それを人に話したことがあった。
それからだいぶ経った後、彼女の話したことがそのまま当たったと連絡が来た。
それからどんどん口コミで話が広まり、彼女は占い師、星読みとして地位を確立していった。
地位が確立した分、金銭周りも良くなっていく。
そこから彼女は今までの生活を捨てて、金銭に溺れるようになっていった。
星図が見せるその人の未来、これからの未来、自分だけが知っているこの世の全て。星の動き、全てを知ることへの飽くなき欲望、彼女はまるで神になったようだった。

しかし、そんな彼女にもある時異変が起き始める。
持っていた星図表が少しずつ角度の狂いが出てきた。
最初はどこかで触ってしまったからだろうか?と思って何も思わなかった。
しかし、日を追うごとに角度がどんどん変わり、彼女が見えていた人々の星図もだんだんと狂っていく。
星図が1度でも狂うだけで見える未来が全て違う。前に見えていた未来が見えなくなってくる。
狂ってくる、世界がおかしくなっていく。全てを見通していた、星の動きも、これからの世界のいく末も。全て見えていたのに。
どうしてどうしてどうして!?

ドウシテ、セカイはオカシクナッテイルノ?


「という謂れがあるのがこれだ」

じーさんはそう言うと、懐から包みを出した。

「さて、この謂れについて。お前はどう考える?
真か虚か。俺が聞いたのは3ヶ月前だが、これは本当に起こったことと思うかい?」

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