見出し画像

2023-24年イベリア半島周遊その7(マドリード・トレド)

 コルドバから2時間ほどでマドリードに到着した。言わずと知れたスペインの首都で、この旅の最終目的地だ。

マドリード・アトーチャ駅

 宿に荷物を置いた後、再びアトーチャ駅方面に向かう。目的はプラド美術館だ。

プラド美術館

 ベラスケスの『ラス・メニーナス』、ゴヤの『裸のマハ』、『我が子を食らうサトゥルヌス』など、誰もが知る有名絵画が数多く展示されているプラド美術館は、平日の18時以降は無料で入館可能となっている。それなりに並ぶが、有名どころをサクッと押さえたい場合は活用の価値アリだ。筆者はここで先に見たかった絵画を優先的に鑑賞し、翌日改めてチケットを買って入館した。
 プラド美術館はスペインやハプスブルク家の王族の肖像画展示も圧巻で、少し西洋史に詳しい人であれば知っている顔がそこら中に展示されていて思わず笑ってしまうだろう。また、ミュージアムショップもかなり充実しており、お土産探しにも使いやすい。

 翌朝はチョコラテリア・サン・ヒネスでの朝食から。チュロスとホットチョコラーテの名店で、日本人観光客も多く見られた。チュロスそのものには砂糖はふられておらず、自分でふるかチョコラーテにつけるかして食べる。チョコラーテはそれほど甘くなく、朝食にちょうどいい重さだった。

チュロスとチョコラーテのセット

 この日はソフィア王妃芸術センターに開館から突入。こういった美術館・博物館系は今や予約前提での訪問を考えた方がいいだろう。並びはするものの、イチからチケット売り場に並ぶよりは圧倒的に時間と体力の節約になる。

ソフィア王妃芸術センター

 ここでの最大の見どころは何といってもピカソ『ゲルニカ』だろう。美術や世界史の教科書で目にした人も多いはずだ。最近になって撮影が解禁されたことも話題になった。絵画自体のサイズがそもそも大きいということもあり、実際に目にするとなかなかの迫力だ。やはり写真や映像などで知っているものを見に行くことはそれなりの価値があるように感じる。

ゲルニカ

 ソフィア王妃芸術センターの周辺には、プラド美術館をはじめとする美術館、博物館が集中している。海事博物館もそのひとつだ。船の模型や海事に関連する絵画、武器などが所狭しと並べられており、軍事や歴史好きにはたまらない博物館となっている。

海事博物館

 博物館地区を後にして王宮に向かう。が、この日は内部公開はしておらず、外観のみの見学となってしまった。少し時間に余裕ができたので、近くのデスカルサス・レアレス修道院の見学ツアーに参加することにした。説明は全てスペイン語なのでほとんど理解できなかったが、フレスコ画や巨大なタペストリーの数々が見られただけでも大満足だった(内部撮影禁止のため写真なし)。

王宮


町はまだまだクリスマスモード

 この日の夜は宿の近くの妖し気な店・El Minibarで夕食をとることにした。近づきがたい雰囲気だが、料理の味は確かだったのでおすすめだ。

半地下の店内
ツナの載ったバゲット
猪肉の春巻きっぽいやつ

 翌日は郊外のトレドへ。1561年にマドリードに遷都されるまで、カスティーリャ、スペインの中心都市であった、歴史ある町だ。

朝のアトーチャ駅
美しい内装のトレド駅

 よくヨーロッパの古城や城塞都市を評して「RPGの町みたい」ということがある。ともすれば陳腐に聞こえるフレーズだが、トレドはまさに「RPGの町みたい」という言葉がぴったりの町だ。城壁と川に囲まれた丘の上に位置する旧市街は、あらゆるロケーションがRPGのそれに見える。

ポケモンSVで見たことのある光景
趣ある通りが続く

 トレドに来た最大の目的はアルカサルだった。しかしながらこの日は公現祭にあたり、アルカサルは休館となっていた。このため、急遽帰国日にトレドを再訪することとし、この日は町歩きを楽しむことにした。
 最初に訪れたのはサン・イルデフォンソ教会。ノーマークだったが、上からの眺望は抜群で、トレドに行くことがあれば是非訪れてみてほしいスポットのひとつだ。

サン・イルデフォンソ教会
上からの眺め。左にアルカサルを望む

 サン・イルデフォンソ教会から西へ歩き、サン・フアン・デ・ロス・レイエス教会へ。ゴシックとムデハル様式が融合した、彫刻が特徴的な教会で見ごたえ十分だ。

サン・フアン・デ・ロス・レイエス教会
教会の外観

 ここから南に下るとサンタ・マリア・ラ・ブランカ教会がある。トレドはキリスト教・イスラーム・ユダヤ教の3つの宗教が行きかった町としても知られ、今でも2つのシナゴーグが残っている。サンタ・マリア・ラ・ブランカ教会は内装がイスラーム様式の影響を受けており、何だか不思議な気分になる。

サンタ・マリア・ラ・ブランカ教会

 トレドはエル・グレコがその後半生を過ごした町としても知られる。サント・トメ教会にはエル・グレコの傑作『オルガス伯の埋葬』を所蔵する教会として有名で、実際入ってすぐの場所にいきなり展示スペースが設けられていた。

オルガス伯の埋葬

 トレドを流れるタホ川は、イベリア半島を西に向かって流れており、最後はリスボンから大西洋に出ていく川だ。この旅はリスボンから始まっており、実際にタホ川(テージョ川)も目にした。図らずも旅の最後にまた目にすることになり、達成感のような感情が少し湧いた。

旧市街側からの眺め

 トレドからマドリードに戻り、ティッセン・ボルネミッサ美術館へ。中世の宗教画からモダンアートまで幅広いコレクションが特徴で、丁寧に鑑賞するには時間がいくらあっても足りない。ミュージアムショップもプラド美術館に負けず劣らずの充実ぶり。

ティッセン・ボルネミッサ美術館
ドガ『緑の服の踊り子』

 この日はスペイン最後の晩餐ということで、ラ・グロリア・モンテーラでモダン風のスペイン料理を食べることにした。……の前に市場のフードコートでちょっとつまみ食い。

バゲット系は何を食べてもおいしい
本丸のラ・グロリア・デ・モンテーラで鶏と海老の煮物を食す

 翌日、遂に最終日を迎えた。早朝から再びトレドに向かう。お目当てはもちろん、昨日入場できなかったアルカサルだ。

アルカサル入口

 アルカサルはもともとは11世紀に築かれた要塞で、1936年のスペイン内戦でフランコ軍が籠城戦を展開したことでも知られており、現在は軍事博物館になっている。内戦時や内戦後にドイツの高官が視察しに来た際の写真などを見て一度は行ってみたいと思っていたが、実際に行くと既に持っている知識の輪郭がくっきりとしてくるような感覚を得られた。この感覚を得るために旅をしているのかもしれない。

内戦時の兵器も展示されている
第三帝国の高官が視察に来たことでも有名な中庭

 トレドを後にする前に広場の屋台でエンパナーダを買った。アルゼンチンなどラテンアメリカでも有名な軽食で、いつか現地バージョンのものも食べてみたいものだ。

エンパナーダ
トレド北側の風景

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?