先が見えない。

どうしようもなく悲しくて苦しいことがある。友人のことだ。
この話をこうやって書くことを彼女には伝えていないけれど、私の何かが限界寸前なので理解して欲しい。

私にはもうずっと昔に、古のmixiで知り合った友人が居る。
彼女は少し不思議なオーラを纏っていて、ネガティブな私は一緒に居ても彼女は楽しそうに見えずずっと不安だった。
それでもたくさんの時を経て、彼女のことを知って、私のことを知ってもらって、なんでも話せるかけがえのない友人になった。一緒に居てとても心地いい存在だった。

私たちはお互い心が強くなくて、生きているのが辛かった。
私のパートナーは、私が「死にたい」と言うと苦い顔をする。心底つらいのだろうと思う。それも事実であって、それが彼女の愛情だとわかる。それでも、同意が欲しい時もある。ただただ話を聞いて欲しい時が私にはある。そんな時、その友人に気持ちを話すととても落ち着いたのだ。
彼女は私の「死にたい」に対して、「わかる」を返してくれた。
私も彼女の「死にたい」に対して、「わかる」を返した。
どんなに人に話しにくいことでも彼女には言えた。嫌なことは嫌と言ってくれる彼女だったからこそ、傷つくこともあれど自分を曝け出しやすかった。

去年の11月、彼女と突然連絡が取れなくなった。
いつもは割とすぐ既読になるLINEも未読のままで、嫌な胸騒ぎがした。
翌日も翌々日も連絡はなく、二人で好き勝手ネガティブなことを書いていた交換日記みたいなアプリを更新しても何も反応がなかった。
いよいよ吐き気がした。最悪な結果ばかり考えた。
「知人と連絡がつかない時」をググれば、死臭だとかなんだとか嫌な単語ばかり目に入った。本当に生きた心地がしなかった。

パートナーと一緒に彼女の家に突撃した。何度か行ったことがあったので場所はわかった。近くない道のりがさらに長く感じた。行きの電車では、オートロックをどうやって突破しようかとか、いろんなパターンの行動を考えた。死にたかった。

案外あっさり彼女の生死はわかった。インターホンを鳴らしたら、数秒の間の後に彼女の聞き慣れた声がした。明らかに戸惑っていた。私たちは「よかった」とか「心配した」とか彼女に伝えて、「いきなり来てごめんね」と言った。
彼女は何回か謝って、「ごめん、でも今出れる状況じゃなくて、」とどもった。
「いいよいいよ！無事だってわかっただけで！スマホ、電源切ってた？落ち着いたらLINEして！」
そう告げて帰った。ほっとしたし、少し腹立たしかった。ほんの少し。

すぐに彼女のLINEは既読がついた。久しぶりの既読が嬉しかった。重たい友人で申し訳ないなあと思いつつ、あんなに死にたいと言ってた奴が急に音沙汰なくなったらこれだけ心配するのもわかってほしい、と思った。
友人のLINEには、人の感情を受け取る余裕がなくなったことや、しばらく人との関わりを断とうとしていたこと、申し訳ないけどそっとしておいて欲しい、と書かれていた。

そりゃあ、しばらくは大人しく待った。
LINEもしないし日記も書かなかった。生きていて安心したのもあるし、彼女が死なないと名言したことで少し余裕が生まれたのもある。

けれど、いつまで経っても彼女の音沙汰はない。
たまに、本当にたまに、一緒にやっていたゲームのログインがあるくらいで、あとは何も音沙汰がないのだ。
大晦日に痺れを切らして送ったLINEも未読のまま。
交換日記は見ているかすらわからないけど、今まで通りしんどい時は書いたりした。直接彼女への愚痴を書いたこともある。

だって、寂しい。
今まで、しんどい時はいきなり電話をしたり、毎日のように連絡を取ったり、連絡がひさしぶりでもお互いの話を聞いて寄り添って、年末年始を我が家で過ごしたこともある。生まれて初めて親友と思える存在だった。皮肉にも、それに気づいたのは今回のことがあってからだが。

私がなんでも話せるのは彼女だけだった。
パートナーの愚痴や相談事も、彼女にしか話せなかった。なんでもないオタク話をするのも楽しかったし、彼女の描く絵が好きだった。
あんたは距離置きたくて置けてるかもしれないけど、その間私はどうすればいいの！？誰に話聞いて貰えばいいの！？寂しい時どうすればいい？今まであんたしか居なかったのに。
そう言って本人を責め立てたいけど、既読にすらならない。
もう、生きているかも今はわからないのだ。

日々の生活の中で、悲しみと悔しさと、怒りと寂しさと、そういう感情が忙しなく襲ってくる。
生理前の不安定な時期とか、寛大な心が薄れてしまって、彼女への罵倒ばかり頭の中で埋め尽くされる。

それでも、今、あの子から連絡が来たら、私はきっと泣いて喜ぶ。
会いにこいって言われたら、ダッシュで会いに行く。

あの子の居ない世界はつらい。
つまらなくて、不安で、味気なくて、ずっと物足りない。

話したい。
くだらない話がしたい。
会いたいよ。
いつまで待てばいいか、せめて教えてよ。

やどり