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白いカーテンが、ただ揺れるだけの未来

ずっと思い描いていた、ある風景。

それは、なんてことのないもの。


そこは未来の自分の家の中、窓際。

明るい茶色のフローリングが見える。

開けられた窓から、ゆるやかな風と太陽の温かな光。

白い清潔なカーテンが、静かに、ふんわりと広がる...


描かれるものは、たったそれだけ。


だけど、その家の中は家族のぬくもりで満ちているのがわかる。

あとは猫がきっといて、私のピアノがどこかにあるだろう。


幾度となく、私のまぶたの裏を温かくしてきた、そのシーン。

そのささやかな幸せの中の、そのカーテンのゆらめきが示すものとは。


今までわからなかった。

ただ、思い浮かべると、気持ちが穏やかになった。


だけど、この間..


2人暮らしを始めて、今の家に越してきて。

1人の、静かな休日の午前。

換気のために開けた窓際で、うちの猫がうたた寝をしていて。

舞い込む風はやわらかで。

黒くて長いしっぽが、カーテンから覗いていて。

家の中は2人で買い揃えたお気に入りのものが彩って。

昨晩の無邪気な笑い声が今も漂っている気がして。

そして白いカーテンが、ふわっと広がった。


あぁ..これは。

もしかして。

思い描いてきた、あの風景が、今のこれなのか。


そうして、気がついた。


あの風景は、きっと目に見えない「こころ」を、代わりに表現している。


私にとっての、完璧な状況。

私にとっての、幸せ。

過不足のない、こころの満たし。


ひとりではここまで来られなかった。

長くかかったけれど、

誰にも知られずに描いてきた理想は、

こんな風に突然、でもその通りに、

目の前に現れるものなのだと知った。


そうだったらいいなぁと思うものが、もしあるのなら。

ただ純粋に、その未来を持ち続けて。

そして叶った時、あなたは、歩いてきた道が間違っていなかったことに気がつくのだと思う。

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