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【エッセイ】レモンジェット

 レモンの木は大食いである。もっと具体的に言えば、年に四、五回、適度に間隔を空けながら肥料を施す必要があるのだが、要求の多さに比例して果実が実ってくれるため愛情を注いだだけ、育て甲斐が大きい。最初こそ鉢植えで、家の縁側で栽培するつもりだった。しかし著しい根詰まりに悠長には構えていられなくなり、結局、庭に移した。性質上温暖な気候に適していても寒さには弱く、厳寒期を迎えたときには枯れるか不安で成り行きをそっと見守っていたものの、無事、翌年の春に新たな枝葉を茂らせたのでほっとし、野性に還ったような本来の力強さを心底感じた。地植えは逞しくなる。収穫を終えたらレモンジェット作りに取り掛かる予定で、輪切りに切りシロップで煮詰め、乾燥後、透き通って光沢の生まれた断面が半分程度隠れるぐらいにビターチョコレートで包みたい。酸っぱい柑橘類でも、割と糖度を上げるから、甘ったるさを回避すべくほろ苦系でバランスを取る。

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