【エッセイ】べったりさん
ミィはべったりさん。元々は野良猫で、事実、出会った当初は少なからず警戒があって、緊張を解くべく、わざと無関心を装い、恐怖心を煽らないようしゃがみ込み体勢を低くし、敵意のなさをアピールせねば絶対に近づいて来ない。さらに告白すると、自分の中での猫って、つーん、とした自由気ままで、自ら孤独を好む一匹狼のイメージが強く、そんな先入観が空回りしたからか、同居する段に入り、人の身体に凭れて眠ろうとする素振りにはじめの内は戸惑いを隠せなかった。意外だった。いえこれが本来の姿ですよ、とでも言いたげに思いの外結構よくすり寄って来て、そして寝る。ソファの上では真っ白いお腹を触らせてもらえる。すっかりうちでの生活が板につき、心を開いた状態が如実に表れている。
屋外でもそう。日没に差し掛かって私は家の前の田んぼをぐるりと一周する。散歩中にいつの間にか小さな影が後を追う。自宅に戻ると、母から鴨の親子だと笑われる。