防衛予算方針を転換???(読売新聞記事の書き方、読み方)

 2022年12月13日の読売新聞(西部版・14版)。
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自衛隊施設建設に建設国債/防衛予算方針を転換/1・6兆円充当へ(見出し)
 政府は、防衛力の抜本的強化に向け、自衛隊の施設整備費の一部に、建設国債を活用する方針を固めた。2027年度までに計約1・6兆円を充当する。税制措置では、法人税や復興特別所得税、たばこ税を充てる方向で調整を進めている。24年度からの段階的な増税を目指す。
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 「見出し」と「前文」を読んだときの「防衛予算方針を転換」が前文にないことに、私は驚いた。これは一面の記事としてはとても奇妙なことである。前文にない表現はふつうは見出しに取らない。
 なぜ「防衛予算方針を転換」という見出しにしたのか。記事の読み方進んでいくとわかる。(ここからが読売新聞の「ばか正直」なところ。)
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自民、公明両党による国家安全保障戦略など3文書改定に向けたワーキングチーム(WT)の会合で12日、政府が予算確保策の大枠を示した。建設国債は道路や橋など長年にわたって使用でき、将来世代に恩恵が及ぶ事業が対象だ。財務省はこれまで自衛隊施設は「耐用年数が短い」として活用を認めておらず、防衛予算の大きな方針転換となる。
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 「建設国債」とはどういうものか。「建設国債は道路や橋など長年にわたって使用でき、将来世代に恩恵が及ぶ事業が対象だ」と読売新聞は定義している。(たぶん、これまでの常識。)
 そのあとの書き方が、とてもおかしい。「財務省はこれまで自衛隊施設は「耐用年数が短い」として活用を認めておらず」までは、「定義」の補足、これまでの経緯。問題はない。そう「定義」を補足したあとで、「防衛予算の大きな方針転換となる」と書く。見出しも、それにあわせて「防衛予算方針を転換」と書いている。
 しかし、これは「国防予算」の転換なのか。違うだろう。「国防予算の転換」というときは、地対空ミサイルを買う予定だったが、トマホークに変更するというようなものである。「国防予算内部」での使い道の変更が「国防予算」の変更。
 「国債」を「防衛費」に回すというのは、国の予算全体の変更である。つまり、国全体の予算が、これまでとは違ってくるということなのだ。これを「防衛予算方針を転換」と矮小化することは、読者(国民)をごまかすものである。
 国防予算の記事で「5年間」という期間を隠し続けるように、ここでも「情報操作」が行なわれている。こういう「情報操作」を見逃してはいけない。新聞は、それは「国防予算の変更ではなくて、予算全体の変更だ」と指摘しないといけないのに、問題をごまかすことに加担している。
 「復興特別所得税」も、それは「復興」に特化してつかうための予算だろう。それを「国防費」に回すのは、国防予算の変更ではなく、国の予算の変更である。でも、そう書いてしまうと「問題が発覚する」というか、読者(国民)の反発が強くなると予想できるから、表現を変えているのだ。

 この「建設国債」と「防衛費」をめぐっては、少しおもしろいことが書いてある。
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 1966年の国会で当時の福田赳夫蔵相は「防衛費は消耗的な性格を持つ。国債発行対象にすることは適当でない」と答弁した。ただ、海上保安庁の船などには建設国債が充てられており、自民党内で「自衛隊施設の防護強化なども賄うべきだ」との声が出ていた。↑↑↑
 最初読んだとき、海上保安庁が出てきたことに、私は納得ができなかった。自衛隊と海上保安庁は違う。海上保安庁は、いわば警察である。「防衛」のための、自衛隊との同一組織ではない。
 こんなことを書いたって、何の「補足(論理の補強)」にもならない。どうして、そんなことを書くのか。
 と思っていたら。
 2022年12月14
日の読売新聞(西部版・14版)。
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海保予算 27年度1・4倍に/尖閣対応 自衛隊連携強化/政府「方針」策定へ(見出し)
 政府は、「海上保安能力強化に関する方針」を16日にも策定する。沖縄県の尖閣諸島周辺で中国海警局船の航行が常態化していることなどを踏まえ、海上保安庁と自衛隊の連携を強化し、海保予算を2027年度に今年度の約1・4倍に当たる3200億円程度に増額することなどが柱だ。
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 この記事は、記事の書き方からして、昨日の「防衛予算方針を転換」と同じようにリークされた「特ダネ」だろう。(どこにも、政府が発表した、とは書いていない。)
 そして、重要なのは、「海上保安庁と自衛隊の連携を強化」という表現である。「連携」をするとき、自衛隊と海上保安庁とどちらが主導的立場をとるのか。指揮権をとるのか。たぶん、装備の関係から言っても自衛隊だろう。つまり、自衛隊の配下に海上保安庁が入り、行動する。そうであるならば、「海保予算」は「自衛隊の予算」になってしまう。「国防予算」に「海保予算」は組み込まれてしまう。
 これもまた、国の予算全体の変更である。「海保予算」の変更ではないのだ。
 末尾に、こう書いてある。
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 22年度当初予算で2231億円の海保予算を段階的に拡大し、27年度に1000億円程度増やすことも盛り込んだ。岸田首相は27年度に防衛費と、海保や研究開発などを含む安保関係予算を合わせ、対国内総生産(GDP)比2%の規模にしたい考えだ。
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 ここには「国防予算」という表現はつかわれていない。「安保関係予算」という表現をとっている。しかし、「対国内総生産(GDP)比2%」を手がかりに考えれば、これは「国防予算」である。
 そして、問題なのは、海保予算を増額するとき、その財源をどうするかが触れられていないことだ。きのうの記事にあった「海上保安庁の船などには建設国債が充てられており」を手がかりにすれば、ここでも「建設国債」がつかわれるということであり、その分「建設国債」が発行されるということである。しかも、そのことが問題視された場合は、「海保の船は防衛費とは関係ない」と言い逃れる準備をしているのである。その言い逃れの準備を手助けするために、きのうの問題部分の記事は書かれているのである。

 きのう「国防予算方針転換」の記事をリークされたとき、記者は、次は「海保予算」に関する情報をリークするよ、と言われたのだろう。政府と結託した記事であることが、記事の書き方からわかる。それをわからせてしまうところが読売新聞の「ばか正直」なところだが、「ばか正直」だからといって、正直さに感心しているだけではたいへんなことになる。
 これは「洗脳作戦」なのだ。国の予算の変更ではありません。あくまでも国防予算、海保予算の変更です、という「宣伝」なのだ。国防予算、海保予算が変わる(増額される)ということは、他の部分の予算が減らされるということなのだ。

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