岸田の所信表明演説(つづき)

「経済政策」の①物価高・円安対応。なぜ、「物価高・円安」が起きたのか。
 私の考えでは、ロシアのウクライナ侵攻が原因。ロシア、ウクライナからヨーロッパへの天然ガス、小麦、ひまわり油などの供給が止まり、燃料費、食糧が値上がりし、その影響が日本にも及んだ。
 でも、この戦争は、私の見方では、アメリカの軍需産業保護(アメリカの軍需産業の売り上げをのばす)ためのもの。実際、アメリカの軍需産業と、石油業界は大儲けをしていると思う。
 しかし、それだけで終わらなかったのはなぜか。アメリカの強欲主義が影響している。ロシアが売れない分、アメリカの石油や小麦などは需要が増えたのだから、いままで通りの価格で売っていても売り上げ量が増え、利益が増えることなる。けれど、アメリカの資本家の強欲はそれでは満足せず、いまなら値上げしても売れると判断し、「資源・食料不足」を理由に、どんどん商品の値段を上げた。そのため物価高(インフレ)はアメリカ主導で世界に広がった。アメリカの「作戦」は失敗したのだ。いまアメリカは失敗した政策のしりぬぐい、物価抑制に躍起になっているが、アメリカの強欲主義が招いたのだから、強欲主義を捨て、値段を下げればいいのだ。ものは大量に売れるから、利益は確保できるはずだ。
 日本(岸田、黒田)は、金利を上げることもできず、物価が上がり続けるのをただ見ている。でも、何もしないわけにはいかないから、こんなことを言う。
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 食料品については、既に輸入小麦価格、配合飼料の負担を10月以降も据え置く措置を講じています。
 これから来年春にかけての大きな課題は、急激な値上がりのリスクがある電力料金です。家計・企業の電力料金負担の増加を直接的に緩和する、前例のない、思い切った対策を講じます。
 さらには、エネルギー安定供給の確保、再エネ・省エネの推進、農産物の国内生産を通じた食料安全保障の確保など、エネルギー・食料品について、危機に強い経済構造への転換に取り組みます。
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 すでに値上げラッシュがはじまっている。「輸入小麦の価格据え置き」「電力料金の負担緩和」「食糧安全保障の確保」というけれど、間に合わないじゃないか。もう、遅いじゃないか。いま、ものの値段を下げないと、庶民は生きていけないのだ。値段を下げることができないのなら、消費税を引き下げ、国民の負担を軽くすべきだろう。
 今年の冬は、ヨーロッパはたいへんだろう。寒さを乗り切れるか。ヨーロッパで燃料費が上がれば、それに連動して日本も上がる。同じように燃料を輸入に頼っているのだから。アメリカは、世界のために安い石油を提供しようとはしていない。強欲主義に走っている。いまが稼ぎ時と思っている。
 この「後手後手」に輪をかけるのが、②の構造的な賃上げ。賃上げはいいが、ふたつ、いやそれ以上に問題がある。ひとつは日本の場合、賃上げはたいてい「春」。つまり、半年間はいまもっている金を減らし続けるしかない。
 ふたつめは、賃上げが「平等」ではないこと。私は年金生活だが、年金は「賃上げ水準」で上がるのか。上がらないだろう。つまり、賃金が見込まれない人(働けない人)は賃上げの恩恵を受けられない。
 そして、問題の「賃上げ」だが。
 今年の春闘のときすでに指摘したが、トヨタはさっさと賃上げしている。(私は、ロシアのウクライナ侵攻にあわせて物価があがるというレクチャーを政府から受けたのだと思う。先に賃上げをしておけ、と。物価高は、アメリカ政府の方針だからだ。)その、今年の春に賃上げをしたトヨタ(を初めとする大企業)と賃上げができなかった(額が小さかった)企業との「格差」は、来春の賃上げでさらに拡大するだろう。賃上げのパーセントを揃えたとすると、分母の大きい(給料の多い)トヨタ社員の所得は大きく伸びるが、所得の小さい企業の従業員は伸びないし、だいたい「我が社はトヨタではない、同じパーセントで上げるわけにはいかない」とトヨタを基準にして低い水準の賃上げにとどまるだろう。その結果、大企業と中小企業、正規雇用と非正規雇用の賃金の格差はさらに広がるだろう。
 賃金の伸びの低いひとは、どうすればいいのか。
 大企業のあげた利益を「分配」するという方法があるはずだが、岸田は、昔つかっていた「分配」ということばを、つかわなくなった。所信表明演説からも、きれいに消えている。
 これは何を意味するか。
 「分配などしない」ということだ。これは、すでに今年のトヨタの春闘で折り込み済みであり、それがこれから先どんどん繰り返されていく。電気自動車で出遅れているトヨタは10年後はなくなっているかもしれない。いまのうちに金を稼ぐことに躍起になっているから、トヨタの賃上げも抑制されるだろう。つまり、日本の賃上げは賃上げといったって、物価高に追いつくことはないのである。円安は加速し(なんといっても、トヨタが儲かる)、1ドル200円になってしまうだろう。物価はさらに上がり、「賃上げ」くらいでは絶対に追いつかない。

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