情報操作の仕方(読売新聞の場合)

情報操作の仕方(読売新聞の場合)
   自民党憲法改正草案を読む/番外388(情報の読み方)

 2020年09月03日の読売新聞(西部版・14版)は菅の自民党総裁選出馬の記事でいっぱい。1面の見出し。
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菅氏、安倍路線を「継承」/自民党総裁選 出馬正式表明/感染防止と経済活動を両立
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 私は「記者会見」を見ていないし、その際、記者がどれだけ踏み込んで質問しているのかも知らないのだが、読んだ瞬間に「情報操作の仕方があくどい」と感じた。
 緊急の「課題」として「感染防止と経済活動を両立」をあげているのは、たしかに「安倍路線」の継承である。
 しかし、安倍が「辞任会見」で主張したのはコロナ対策だけか。そうではない。こう言っている。https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2020/0828kaiken.html
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 コロナ対策と並んで一時の空白も許されないのが、我が国を取り巻く厳しい安全保障環境への対応であります。北朝鮮は弾道ミサイル能力を大きく向上させています。これに対し、迎撃能力を向上させるだけで本当に国民の命と平和な暮らしを守り抜くことができるのか。一昨日の国家安全保障会議では、現下の厳しい安全保障環境を踏まえ、ミサイル阻止に関する安全保障政策の新たな方針を協議いたしました。今後速やかに与党調整に入り、その具体化を進めます。
 以上、2つのことを国民の皆様に御報告させていただいた上で、私自身の健康上の問題についてお話をさせていただきたいと思います。
</blockquote>
 そして30日の読売新聞の「特ダネ」以降、方々で「迎撃だけではだめだ、敵基地を先制攻撃する必要がある」という安倍の主張にもとづく「安全保障政策」が問題になっている。
 この問題を菅は、どう「継承」するのか。そのまま推進するということだろう。そのことが、紙面のどこを見ても書いてない。書いているのは「普天間基地」のことだけである。
 これは、どういうことか。
 これ以上踏み込むと、安倍とアメリカの「密約」がばれるからだ。私は河井問題で安倍が逮捕されるのを避けるために、アメリカに「ミサイルを買うから助けて」と安倍が泣きつき、アメリカは「安倍はまだまだつかいがってがある(すぐに金を出す)から助けてやろう」と手を回したのだと思う。田中角栄逮捕のときも、本当かどうか知らないが、立花隆の告発(金脈列島)が引き金のように見えるが、裏でアメリカが動いたといわれる。立花の情報なら新聞記者はみんな知っていた。知っていて書かなかった。田中はベトナム戦争への自衛隊派兵要請を拒否したから、アメリカから「切り捨てられた」と一部で言われている。そのアメリカの「情報操作能力」(日本の捜査機関にどれだけ情報を提供し、それによって何をするか)ということを頼りにしたのだと思う。
 こんなふうに「泣きついてくる人間」は操作しやすい。石破は「泣きつき型」の人間ではないように見える。防衛についても、タカ派だが、かならずしもアメリカの思惑どおりには動かないだろうと思う。自分の方針を打ち出すと思う。そういう人間ではなく、いつでもアメリカの言いなりになって「金をばらまく人間」をアメリカは求めているのだ。
 沖縄から基地を撤退させると「公約」していた鳩山が首相になったとき、鳩山がつまずいたのが、「日米委員会」であった。首相の決断より上に「日米委員会」がある。日本はアメリカの属国から脱けだせない状態がつづいている。「日米委員会」の「決定」にしたがいながら、日本の政治(アメリカの世界戦略)を動かしている。鳩山が感じたのは「首相の限界」だったのだ。
 安倍はどうか。安倍の「主義主張」はたったひとつ。「ぼくちゃん、何も悪いことをしていない。ぼくちゃん、金をばらまき、みんなからありがとう。安倍ちゃん、大好きといわれたい」。これだけなのだ。逮捕されたら、ストレスで病気が悪化して、それこそたいへんかもしれない。いま泣きつかないでどうする。それで「敵基地を攻撃できるミサイルを買うからなんとかして」と間接的にアピールしたのが「辞任会見」である。その「間接的アピール」が新聞などで報道されなかったために、大慌てで読売新聞に「リーク」し「特ダネ」を書かせた。他者が追いかけ、安倍の訴え(約束)が嘘ではないことがわかり、アメリカは安倍逮捕回避に動いた。
 そういうことが自民党内で明確になった。まだまだ安倍の時代なのだ。だから、あっという間に、菅総裁で一致したのだ。
 菅総裁は、単に菅総裁ではなく、石破つぶし、岸田つぶしでもある。石破や岸田が総裁になれば、安倍は復活できない。安倍を復活させるためには、石破、岸田をつぶす必要がある。それには菅で団結するしかないのだ。

 私の書いていることは「憶測」にすぎないが。
 なぜそんな「憶測」をするかというと、「敵基地を攻撃するシステム」問題について、菅はどう考えているのか。その「路線」を継承するのかどうか、どこにも書いていないからである。
 アメリカと安倍の「密約」がないのなら、「辞任会見」でわざわざ語り、また、その後急浮上してきた問題について触れないのは、不自然としかいえない。「感染防止と経済活動の両立」はもう使い古された「キャッチコピー」である。しかも、その「両立」というのは「国民の自己責任」のように言われている。国の政策が悪いのではなく、ひとりひとりの行動に問題がある、と。そういう「自己責任論」を展開するために、最初に利用されたのが「夜の街」という考えである。「批判できる対象」を見つけ出し、それを「排除」する。「差別」を持ち込むことで、国民を団結させる。権力の力で差別を確立し、国民を差別する側で団結させ、「悪いのはあいつらだ」と叫ばせることで鬱憤晴らしに手を貸す。
 これはすぐわかるように、「北朝鮮は敵だ。北朝鮮は日本へ侵略してくる」と主張し、国民を不安にさせ、団結させる手口に似ている。その手口で防衛費を増やす。つまり、アメリカへ武器の代金を支払う。武器の「爆買い」。安倍は、それをいつでもやってくれる。安倍がいるかぎりアメリカの軍需産業は不況知らずなのだ。
 このアメリカからの武器の「爆買い」を菅は継承するのか、どうなのか。そのことについては、ひとことも書いていない。
 「情報操作」には2種類ある。ひとつは「書く」こと。30日の「特ダネ」のように。もうひとつは「書かないこと」。知らせないこと。きょうの読売新聞は「書かない」を選択している。
 そして、念入りにも。
 4面には菅の総裁選出馬に関係して、細田・麻生・竹下の3派閥が共同会見を開いたと報じている。このニュースは、この会見に二階が出席していないと伝えることで、自民党内で「主導権争い」が起きていると言うのだが、「狙い」は、そんなことではない。自民党内の「主導権(権力争い)」など、国民には直接関係がない。そういう「なまぐさい」ものへの好奇心を刺戟することで、「菅総裁」そのものを決定事項にすると同時に、「適地攻撃ミサイル」のことも忘れさせようとしているのだ。「ほら、こんなふうに自民党内で争うが起きている。おもしろいでしょ? 知らないでしょ?」というわけだ。これは「書く」ことで、国民の関心を「適地攻撃ミサイル」からそらさせるという作戦なのである。
 「書く」と「書かない」を巧みにつかいわけている。


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