北朝鮮のミサイル

北朝鮮のミサイルに関する「報道」ほど、納得できないものはない。たとえば2022年10月05日の読売新聞(西部版・14版)の見出しは
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北ミサイル 日本横断/飛行4600㌔ 過去最長/太平洋EEZ外に 上空通過5年ぶり/中距離弾「火星」か
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 非常に盛りだくさんの内容だ。どこにも「間違い」はない。記事と整合性がとれている。でも、私は、変だなあ、と思う。何が、変か。記事前文には、こう書いてある。
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 日韓両政府によると、北朝鮮が4日午前7時22分頃、北朝鮮の北部慈江道(チャガンド)・舞坪里(ムピョンリ)付近から、東方向に弾道ミサイル1発を発射した。青森県上空を通過し、太平洋上の日本の排他的経済水域(EEZ)外に落下した。日本政府によると、飛行距離は過去最長の推定約4600キロ・メートル、最高高度は推定約1000キロ・メートル。平壌(ピョンヤン)から約3400キロ・メートル離れた米領グアムを射程に収める距離で、攻撃能力を誇示し、米国をけん制する狙いがあるとみられる。
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 「飛行距離4600キロ」の「意味」は何か。「日本横断」か。「日本横断」は「日本射程」という意味ではないだろう。日本よりも遠くにあるものを狙えるということをアピールするためだろう。前文にはちゃんと「平壌から約3400キロ・メートル離れた米領グアムを射程に収める距離」と書いてある。これがニュースのポイントであり、北朝鮮はいつでも日本ではなく、アメリカと交渉するためにミサイル実験を繰り返している。
 だから、二番手の見出し、記事はかなり変である。
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日米首脳「重大な朝鮮」/電話会談 抑止力・対処力 強化へ(見出し)
 岸田首相は4日夜、北朝鮮の弾道ミサイル発射を受け、米国のバイデン大統領と約25分間電話で会談した。両首脳は、「国際社会の平和と安定に対する明白かつ重大な挑戦」との認識で一致し、日米同盟の抑止力と対処力を強化する方針を確認した。
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 岸田とバイデンは、北朝鮮のミサイルは「ミサイル発射は「国際社会への挑戦」というのだが、正確には「アメリカ(主導、支配の)社会」、いいなおせば「アメリカ」への挑戦であり、日本への挑戦ではない。日本を攻撃するのに飛行距離が4600キロのミサイルは必要ではない。
 なぜ、日本上空を飛んだのか。なぜ北太平洋に落下させたのか。
 とても単純。グアムの方向へ飛ばせば、グアムを照準に実験していることが露骨にわかるし、もし間違って(飛行距離が足りず)グアムに落下してしまったら、アメリカを攻撃したことになるからである。そうなってしまったら、「戦争」に直結する。「実験が失敗しました」と言っても、だれも信用しないだろう。グアムを射程に収めたはアピールするが、グアムの方向へは飛ばさない、というのが北朝鮮の「作戦」である。狙いは「アメリカへの牽制」だからである。
 だから、岸田の言っていることは、「アメリカへの挑戦(攻撃)を抑止するために、日本は努力します」であり、バイデンの言っていることは「アメリカを攻撃させないように、日本は北朝鮮を攻撃できる態勢を整えよ」なのである。
 これは三面の「スキャナー(解説記事)」にはっきりと書いてある。
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北、米拠点を射程/「グアム攻撃可能」誇示(見出し)
 北朝鮮は4日、5年ぶりに日本の上空を通過する中距離弾道ミサイルを発射した。朝鮮半島有事で米軍の拠点となるグアムに、核攻撃を加える能力を誇示したとみられる。今後、武力挑発をエスカレートさせる可能性がある。
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 日本を挑発しているわけではないし、日本を射程に実験をしているわけでもない。でも、なぜ、グアムを射程にいれることが、そんなに大事なのか。
 こう書いてある。
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 アンダーセン空軍基地があるグアムは米軍の西太平洋の一大拠点だ。朝鮮半島有事で爆撃機などの前方展開の基地となる。
 昨年11月に公表した米軍の世界的な態勢見直しでもグアムの基地強化を掲げた。今年1月には核搭載可能な戦略原子力潜水艦「ネバダ」をグアムに寄港させた。異例の措置で「米国のインド太平洋への関与を示すものだ」(米海軍)としていたが、北朝鮮をけん制する狙いもあったとみられる。
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 アメリカの態勢が、北朝鮮のミサイルを誘発しているのである。アメリカがグアム基地を増強したから、それに北朝鮮が対抗しているのである。
 アメリカが「引き金」というのは、「ロシアのウクライナ侵攻」でも「台湾有事」でも同じ。アメリカが軍事強化をしなければ起きなかった(起きない)ことだ。アメリカが、アメリカの軍需産業に金をもうけさせるということに血道をあげない限り、そんなことは起きない。
 ロシア・ウクライナは少し事情が違うだろうが、北朝鮮・韓国、中国・台湾は、もし「統一」が実現すれば、それはあっと言う間に「団結」し、「ひとつの国」になってしまう。これはベルリンの壁崩壊後、東西ドイツが「ひとつの国」に生まれ変わったのと同じだ。「文化(歴史)」が同じなのだから、すぐに融合する。
 そのとき、困るのはだれなのか。
 アメリカである。アメリカが「孤立」するのである。

「アメリカの孤立」は、アメリカ周辺に目を向けると、すぐわかる。アメリカ大陸(北と南)では何が起きているか。「アメリカ資本主義」と距離を置く国が増えている。いわゆる「左傾化」が進んでいる。ブラジルも左翼政権になるかもしれない。ボルソナロの巻き返しで、30日の決選投票がどうなるかわからないが。

プーチンは焦ってしまって(?)失敗したが、アメリカもそうとう焦っている。軍需産業をはじめ、アメリカの政権を支えてきた産業が金もうけできずに、政権を突っつかれているのだろう。
 金もうけ(強欲主義)を捨てて、方針転換しないといけないのだ。アメリカが強欲主義を捨てれば、中国も変わらざるを得ない。なんといっても、中国というのは「金しだいでなんでもする」という国だ。「金持ちが一番」というのはアメリカの思想のようにみえるが、中国の基本的な思想でもある。アメリカが強欲主義をふりかざしているから、中国は「二番手」を演じることで批判をかわしながら、トップの座を奪い取ってしまうだろう。そうなったら、アメリカが強欲主義を捨てるチャンスはなくなり、悔し紛れの戦争がはじまる。
 そんなことに岸田は手を貸していいのか。日本は手を貸していいのか。

横道にそれてしまった。

アメリカは日本を守ろうとはしていない。ただ、アメリカを守るために日本を利用しようとしている。中曽根が言った「浮沈空母」は日本の理想ではなく、アメリカの理想だ。日本を拠点にして中国や北朝鮮を攻撃している限り、アメリカ本土は安全なのだ。
 どんな戦争でも、いきなり核爆弾(核攻撃)はできないだろう。まず地上戦がある。アメリカは、どの国からも遠い。(陸続きは、アメリカ大陸にある国だけ。だから左傾化が不安でならないのだろう。)アメリカ本土で、中国や北朝鮮を相手に「地上戦」を展開するということは、ほとんど考えることができない。
 そして、逆に言えば、中国や北朝鮮で「地上戦」を展開するには、日本や台湾にアメリカ軍の基地が必要なのだ。ミサイルや核があれば、すぐに「勝つ」というわけではない。それはロシア・ウクライナの戦争が証明している。
 日本はアメリカに利用されているだけだ。北朝鮮のミサイル問題は、日本を中心にして考えると本質を見間違えると思う。私はとても個人主義的な人間(自分のことしか考えない人間)なので、北朝鮮がアメリカを照準にミサイルを開発しているのだから、その貴重なミサイルを日本に向けて発射するはずはないと、逆に、妙な安心をしている。日本に向けてつかってしまえば、肝腎のアメリカ攻撃につかおうにも、それがなくなってしまうのだから、そんなことをするはずがない。

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