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カセットテープ、そしてそのCMと音楽。【SONY編】

カセットテープ。
 
実はこの令和の時代に再び脚光を浴びているという。

カセットテープを知らない若い世代が新鮮な感覚で興味を持ち、取り入れるアナログ回帰現象がレコードに次いで起こっていると言えよう。

私にとってはカセットテープとは懐かしいもの。

しかし、懐かしさだけではとどまらない、あの頃の音楽に向き合っていた想いや温度を蘇らせてくれる素敵なアイテムだ。

以前お話ししたが、FMのエアチェックに勤しむ毎日を送っていた私にとって、お気に入りの曲を編集録音するテープ選びは楽しみのひとつだった。

幼児の頃から自分が歌うところを録音したり、機器にマイクを繋げて歌番組を録音していたりしていた私はまず、親から貰った数本のカセットテープをローテーションで使い分けていたが、やがて小学生になり学年が上がるにつれて当然の如くその数本では立ち行かなくなり、買い物に連れていって貰う度にねだっていたように思う。

6年生にもなればその所蔵たるや、な状態になっていた。

学習机の目線の高さにあった棚にはお気に入りのコバルト文庫「なんて素敵にジャパネスク」シリーズとお気に入りの数本のカセットテープ(残りは足元の引き出しにぎっしりと)とオートリバースのWデッキ。

勉強する気はあるのか、あの頃の私よ。(ながら勉強でどうにか、な言い訳)

その棚に並んでいた精鋭カセットテープのメーカーは主にSONYとTDKの二代巨頭。

やがてmaxellとAXIAが加わってゆく私のカセットテープ遍歴。

今回は【SONY】についてお話を。


私はSONYのカセットテープに対し憧憬を抱いていた。

その頃、80年代のSONYは時代を先取りし、音楽や映像の独自の世界観を持って日本を牽引しているイメージが私にはあり、カセットテープのデザインやCM、それに使われる音楽も洗練されているような感覚だった。

しかしながら、今回このテーマで思い起こされたカセットテープのCMで直ぐに浮かんだのはとある一曲くらいだった。

おかしいな、他にも沢山あった筈なのにと調べてみたら、意外にもSONYはカセットテープのCMにミュージシャンを起用していなかったのである。
 
愕然とした。
SONYの世界観はやはりSONYならではなのだと思い知らされた結果になった。

ウエストサイドストーリー風のミュージカル仕立てやフラッシュダンス風のオーディション仕立て等の超オリジナルテイストが続き、漸く80年代の最後にプリンセスプリンセス(CBSソニー)が登場するという。

完全な私のミステイク。
張り切ってタイトルをつけた割に初回から足を挫いてしまった。

いやいや。
諦めるのはまだ早い。

思い入れの強い一曲が残っているじゃないか。


それは、

テリー・デサリオ、「オーバーナイト・サクセス」だ。

この曲がまさか、SONYのオリジナルのCM曲だったとはつい先程まで知らなかった。

詳しくは上記のサイトにて掲載されている。

私はてっきり既存の曲を引っ張ってきたのだとばかり思い込んでいたら、そのCMも曲もSONYが独自に作り上げたものだと知ってかなりの衝撃を受けたが、あの頃のSONYの力を持ってすればなんてことないのかもしれないと納得がいく。

打倒maxellで作られたとか、なんて熱いエピソードだろうか。

当時のカセットテープの重要性、そして各社がその売り込みに鎬を削りあっていた様子が垣間見える逸話だ。

そのSONYの思惑と目標は見事に達成され、1984年、小学生5年生だった私の胸にも深くこの曲が刺さり、焼き付いたのである。



前にも書いたが私は洋楽には疎く、歌詞が何を言ってるか分からないという理由で敬遠していたのに、何故かこの曲はすんなり受け入れてしまい、FMで捕獲した後はそれこそカセットテープで何度も聴き、出鱈目の発音だけれど自分なりに気持ちよく歌えるまでになった。

改めて聴いて思うのは、イントロから希望に満ちた前向きな軽やかなメロディーとテリー・デサリオの伸びやかで適度にパワフルな歌声に胸が自然と躍るのと、この頃の洋楽が一番私には馴染みが深かったなということだ。

maxellのワム!然り、TDKのエリック・クラプトン然り、また改めて別のメーカーの時にお話したい。

余談だが、この「オーバーナイト・サクセス」の間奏を聴いていたら、渡辺美里の「恋したっていいじゃない」の間奏に似ているなあ、なんてうっかり空耳アワーしたり。


そして当時、私がよく購入していたのは、

この辺りのラインナップ。
懐かしい!!!(感涙)

それから最も憧れたカセットテープというものが存在するのだが、それはSONY製のメタルテープ。

その名も「SONY Metal Master」

これがめちゃくちゃカッコよかった!!

これが欲しくて欲しくて。
でも、かなり高価だったので手が出せなかった。

どうにかやっと手に入れて(親にねだった)触れてみると、

お、重い!?
なにこの質感!?

と、仰天する羽目に。

明らかにこれまでのカセットテープとは価格と共に明らかに違ったそれはなんとセラミック製。

その高級感は別格で、これはアレを入れるしかないと決心した私は迷わず、TM NETWORKの「Self Control」を録音した。

私の耳では明らかな音質の違いが分かる訳ではなかったけれど、なんだかいい音で聴けている気がしてとてもいい気分だったし、そのテープを手に取って眺めているだけでも至福だった(単純)

なんだかまたとりとめのない話をつらつらと書いてしまったが、カセットテープはあの頃を生きていた人間にとってはとても身近で愛着のあるアイテムだったということを思い出した。

現在のカセットテープブームが一過性のものではなく、再びあの頃のように音楽好きにとって「なくてはならないもの」のひとつになったら楽しいだろうなと思いつつ。

次のメーカー話では是非、アーティストとカセットテープのタイアップ曲について熱く(?)お話ししたい。

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