ノムさんの訃報に思う

野村克也さんが他界されたらしい。


2年前の星野仙一さんといい、楽天ファンの1人としては、球団を支えてくれた方が次々に旅立っていくことは残念だ。



世代的な話をさせてもらうと、僕が物心付いたときにノムさんを知ったのは、阪神タイガースの球団監督をされていたときだ。


あの頃は阪神の暗黒期?と言われていたようで、僕も幼い頃だったので全然ペナントレースの結果などは知らないけれど、ノムさんが監督をした3年間の結果は全て、最下位だったように思う。


でも、葛西と遠山という投手が交代して、ピッチャーとファーストのポジションを守っていたことと、遠山が松井(秀喜)に対してめっぽう強かったこと、そして、暗黒時代と言われた阪神でも、巨人と戦うときは底力を発揮して、なかなか互角に渡り合っていた、ということは、幼い頃の記憶ではあるがはっきりと覚えている(あとは、新庄剛志の、敬遠ボールをさよならヒットにしたことも)。



ノムさんが当時から「再生工場」と呼ばれていたのは知っていたけど、僕自身は、ノムさんが阪神に来る前にヤクルトで日本一を取っていたことは全然知らなかったので(僕がプロ野球に興味を持ったのは、1999年に中日ドラゴンズがセリーグを制覇した時だったように思う)、ノムさんはそこまでたいしたことのない監督なのか…なんてことを、当時の阪神を見ていてなんとなく思ったことがある。


その後、ノムさんは阪神の監督を辞めたが、それも当時は、単純に成績不振が理由だと思っていた(奥さんの件もどうやらあったらしいが)。



という風に、幼い頃の記憶がそんなものだったものなので、ノムさんが楽天に来た時は、期待半分、しかしもう半分は「あの時の阪神と同じになるのか…」という不安だった。




がしかし。



就任初年度の2006年こそ最下位だったものの、岩隈不在の中で一場がエースの役割を果たし、交流戦の巨人戦ではフェルナンデスの逆転3ランホームランも飛び出し、弱小球団ながら応援しているのが楽しかった。


2007年はドラフト会議で、マー君との交渉権を抽選で勝ち取り、彼が入団。特に、ペナントが開幕して間もないソフトバンク戦で、多くの自責点を抱えながらチームが同点に追いつき、何度もマー君の負け星を消したことを「マー君、神の子、不思議な子」とノムさんが言ったのは、未だに覚えている。


この年は自分が受験を控えていたこともあって、楽天という球団にどれだけ心を支えてもらったのか、なかなか簡単に言葉にすることができない。


2008年こそ、パッとしない1年だったように思うけれど(なんせ、この1年の楽天のペナントの記憶が全然ない)、2009年には後半戦で、苦手なロッテに敵地で勝ち越してから勢いづき、リーグ優勝こそできなかったものの、球団創設5年目で初のAクラス入り、クライマックスシリーズに出場という快挙を成し遂げることができたのは、ノムさんの手腕なくして実現は決してできなかったように思う。


クライマックスシリーズでは、最終ステージの日ハム戦(札幌ドーム)で初戦、大逆転満塁サヨナラホームランを食らって失速し、そこで燃え尽きてしまったのは事実だけれど、僕が20歳になる前日に楽天のクライマックスシリーズ(=2009年の試合)も終了、その日限りでノムさんの退任が伝えられていたように記憶しているので、自分の10代が野村楽天と共に終わっていくのは、寂しいながら未だに強く胸の中に残っている出来事だ。


ノムさんが去った後の楽天は、数年間パッとしなかったものの、星野さんがやってきて3年目でリーグ優勝、そして巨人を倒しての日本一になった。この快挙もやはり、ノムさんが作ってくれた土台あってこそのものだったように思う。




ノムさんと言えば、ヤクルトの監督時代に「ID野球」を提唱して、データを分析しながら頭を使って野球をする、というスタイルを確立したイメージが強いのだけれど(ヤクルト時代の話はほとんど知らないけれど)、この「頭を使って生きる」ということは、自分の幼少期にとても強く刺さった考え方だったように思う。


自分はそこまで腕力もなく、小さい頃から、周りを見ても力で勝てる要素はないと思っていた。だから必然的に、自分が生き残るためには「頭を使う」必要があると思い、脳を鍛える、色んなことを考える、ということに、自分のエネルギーと時間を割いていったように思う。



もともと僕は、陰陽で見ると陰に属する人間だと思っていたこともあって、表だったスターとして騒がれる人の脇で、「俺は月見草」と言って自分のポジションを確立したノムさんに、自然と近しいものを持っていたのだと思う。


ノムさんと直接会ったことは当然ながらないけれど、日々のニュースでの報道や書籍から、沢山のことを学ばせてもらったし、まだまだ学び足りていないとも同時に思う。



やや乱文ではあるけれど、ここにノムさんへのお礼と敬意を表して、自分なりの文をまとめて筆を置きたい。


ノムさん、本当に今までありがとうございました。


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