山形県「デジタル技術の活用による県民生活の利便性の向上と安全なまちづくり」に対する議員提言
※山形県議会の関係人口拡大・活力ある地域づくり対策特別委員会において、二つ目の柱となる表題のデジタル技術に関する提言について。山形県議会の特別委員会は提言型を指向しているので、今回の提言についてわたし矢吹個人の意見を提出したので、投稿します。
凡例:「・」=背景課題 「→」=施策提言
ウイルスの脅威に対する安全なまちづくりのために、アフターコロナのキーワードは、「非接触・非現金・非人力」となるだろう。それにはデジタル技術の社会実装が不可欠だ。また、少子高齢化と人材不足が深刻な地方こそ、デジタル技術による効率的な社会の実現が急務である。この前提のもとに、以下、提言する。
1 県民生活へのデジタル技術の浸透
・仮想空間はボーダーレスであり、デジタル技術は都市と地方の格差を縮めるため、都市機能(買い物・文化・娯楽など)を補うデジタル技術が重要。
→5Gは地方こそ必要としており、県としても早急に普及すべく尽力すること。また、仮想空間において買い物や芸術鑑賞や観光体験ができるVRは、今後あらゆる分野で生活に不可欠になると予想されることから、積極的な普及活用すること。さらに、eスポーツなどによる県民の娯楽創出と関係人口の増加。
・デジタル技術は地方にこそ不可欠なものであるが、反面、高齢者が多い地方では普及にハードルがある。しかし、高齢者にあわせて電話対応や紙媒体を併用していては、スマホ予約決済やペーパーレスがいつまでも実現せず、予算も莫大にかかってしまう。
→高齢者へのスマホやタブレットを普及し、生活に直結するようなデジタル技術に対応できるよう啓発研修を行うこと。
・地方においては二次交通が脆弱で、とくに山形においてはマイカー社会である。これはエコの観点からも良くないし、お年寄りや子どもなど車を持たない交通弱者にとって住みづらく、それを送迎する側にとっても負担となる。県在住者と観光客、両方の観点から、持続可能な地方のために交通へのデジタル技術が不可欠。
→デジタル技術によってマイカー以外の交通手段を障害なくつなぐMaaSの実現により、脱マイカー社会を創出すること。また、自動運転技術やドローンタクシーなど、近未来に社会実装される技術を見越し、官民協働でいち早い県への導入へと準備すること。
(国への提言)観光や福祉における送迎、塾や部活送迎のための乗り合いタクシー、出前や製品配達など、乗り合いタクシーや荷客混載への規制があって、地域での細かな交通を阻害するため、規制緩和を行うこと。
・日進月歩するデジタル技術を全分野で一気に完成形まで導入することなど不可能。地域によっても緊急性と必要性が違う。
→県内でモデル地域を募集し、観光や農業などの分野でデジタル技術を集中的に導入した、いわばミニスーパーシティといったものを現出させ、デジタル技術の便利さと有用性を一目で示した上で、県全体への普及を図ること。
2 産業界でのデジタル技術の活用
・コロナ禍と人材不足により、「非接触・非現金・非人力」が求められる。また今回、コロナ禍で発行されたクーポン券などはほとんどが紙媒体であり、事務経費と購入配布手続きの作業量が膨大となった。
→セルフレジの導入などを積極的に進め、「非接触・非現金・非人力」の持続可能な地方を創出すること。また、クーポン券などを電子的に発行・購入・決済できるシステムを構築し、今後の地域経済活性化策を講じる際にそなえること。さらに、その技術をもとに、電子的に地域通貨を発行し、来県者や山形ファンに活用してもらい、観光や物産流通に繋げること。
・コロナ禍と働き方改革の観点から、テレワークの重要性が高まってきたが、セキュリティー・公私の別・過重労働の危険性などの課題もある。
→テレワークを普及するため、タブレット機器・Wi-Fi・セキュリティーシステムを社会実装(これは行政も教育も同じ)すること。さらにコワーキングスペースなどを充実させ、テレワークの環境整備をすることで地元と同時にワーケーションの呼び込みにも繋げ、逆に山形内外へのワーケーションも励行して働き方改革につなげること(この点も行政も同じ)。
・現在、世の中にはカードがはびこっていて、各社それぞれが各々のサービスを展開している。それ自体は問題ではないが、小さな商店街などで発行するサービスカードなどは非常に利用度が低いのが現状である。また、高校卒業時や就職時に、多くの若者が県外に出て行くが、彼らを山形ファンの関係人口として縁を切らさず、いずれはUターン予備軍としておく必要がある。
→e県民証カード=県民あるいは県出身者・山形ファンに発行し、山形の情報を発信するとともに、民間と連携してそのカードで買い物をするとポイントが貯まり、県産品などと交換できるカード。同時に買い物金額の1%ほどが地元自治体に寄付される。こうしたe県民証カードを民間大企業とともに作成発行し、このサービスに地元商店街も参画し、山形の産物もそこに加えることで、県の産業振興に寄与するとともに、関係人口を創出維持する。カードの集約化によって消費者側の利便と小商店の利益も確保し、大企業は自社のカードの普及、行政側は寄付金収入、という四方両得のe県民証カードを創設すること。
・少子高齢化の地方にあって、特に人材不足となっているのが、農業・建設・観光・福祉分野などの職種である。
→デジタル技術の導入によって徹底した省力化をはかる。と同時に、初期投資と省力の費用対効果を見極めつつ、より効率的な人材不足産業へのデジタル技術導入を促進。
3 自治体DXの促進
・国では自治体DXを謳っており、近いうちに大きく動くことになる。県や市町村としてもシステムの更新料は大きな財政負担となっており、さらに、業務負担の軽減、働き方改革も解決すべき命題である。
→自治体DXの流れをしっかりと見極めて対応するとともに、自治体クラウドを促進してシステム導入更新の予算と作業を軽減すること。また、AI・RPAなどの積極的導入により単純作業を軽減する(これには業務そのものの要不要の再検討が不可欠)ことにより、政策立案という本来の業務へ注力する環境を整備すること。さらに、テレワークの促進(県職員によるワーケーションも含め)、ペーパーレス化、脱ハンコなど、脱アナログによる業務軽減(あるいは見直し)と働き方改革を推進すること。自治体DXとともに社会そのもののDXを促進するならば、政府が提唱するスーパーシティ構想にのって対応すべき。
・自治体DXの促進は内部業務もさることながら、住民サービス・行政手続きのデジタル化も重要。現状、書類すべてに住所と名前を書き込み、ハンコを押すというような煩雑な手続きが続いている。
→行政手続きを紙媒体から脱却し、可能な限りデジタル化すること。同時に来庁せずとも手続きできるネット手続き(ネット投票も同じく)を促進すること。また、個人特定にハンコや署名ではなく、前述のe県民証カードとマイナンバーカードを組み合わせるなどして個人同定を簡易化し、書類を軽減すること。さらに、入札や建築報告や補助金申請など、個人や企業による県への提出書類も簡易化とデジタル化を図ること。
・以前から必要とされてきた教育分野におけるICT化は、コロナ禍によって促進し、全児童生徒へのタブレット導入がなされた。しかし、まだまだその活用は緒についたばかりである。
→タブレットを十分に活用できるように、教師側の機器と研修を充実し、電子黒板などの必要ハードをそろえ、タブレットを家に持ち帰って活用するまで、各家庭の環境整備も含めて到達させること。ICT教育の利点は、①個別最適化=各々の生徒が能力に合わせて、より高度だったり不得意を克服したり、の教育実現。そのためにも、タブレットで各々の学習情報が蓄積され、授業中別々の問題をやる、AIによって個別の宿題を出す、塾と連携して情報を共有するなど、官民挙げて児童生徒に最適な教育を提供すること。②遠隔教育=遠隔教育の積極的導入により、病児や不登校児童生徒などに学校に来なくてもしっかりとした教育を提供する、あるいは過疎地域においても安易に廃校統合せずに、小規模だからこその教育を実現する。また、先生の能力の差で児童生徒が受ける教育に格差が出ないよう、名人先生の授業を視聴して現場の生成が質問に応答するなど、遠隔教育による教育の機会平準化を図ること。
・県そのものや観光・産物の発信などは、だいぶSNSの活用がなされてきたものの、県行政の施策発信はまだまだ紙媒体に依存しており、エコ的にも印刷費用的にもよくない。そして紙媒体の情報はクラウド上に蓄積せずに一過性のものとなる。
→VTuberによる発信、県内外のYouTuberとの連携などに、より注力すること。また県の施策発信や広報(県民だより・男女共同参画や交通安全などの啓発広報物・外郭団体や学校の機関誌お便りも含め)を根本から見直し、脱紙媒体を実現すること。
・部局にまたがって業務や行政手続きをデジタル化し、さらに県全体のあらゆる分野にわたってデジタル技術を社会実装しなければならない。そしてデジタル技術は日進月歩であり、それにかかる費用算出も専門家でなければ難しい。
→現在知事が就いている情報統括監(CIO)を外部あるいはプロパーから新たに部長級以上に就任させ、決裁権を持ちながら部局横断的に強力に自治体DXを推進し、社会に対しても県が主導してデジタル技術の社会実装を実現すること。