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ダメ男、イギリス料理を満喫する

ダメ男がイギリスへ人生初ひとり旅をした時の完結編です。
うだうだやってるとまた怒られるので、とっとと参ります。


◆ ちょっと待て

ツッコまれる前に書いておきますが、いやもう、最初の時点で「人生初海外ひとり旅なんつっても、宿泊先は妹夫婦とやらの家じゃないか。どこが<ひとり旅>なんだ」とお気づきの方もおられると思います。

たしかにアタシは飛行機の往復チケットを予約しただけでホテルの予約をしたわけでもなければホテルに宿泊したわけでもない。
しかし妹夫婦宅に泊まったといっても純粋な宿泊先として利用させてもらっただけで、現地の最寄り駅までは自力で行きましたし、そこからクルマで迎えに来てもらったのはケンブリッジ駅から妹夫婦宅まで公共交通機関がないからだけの話です。

・・・とまあ、逆ギレっつーかひとりで興奮してるみたいですが、まァ、正直、ひとり旅云々はどう思われてもいいんです。
それに、さすがにケンブリッジ市内での移動にかんしては妹夫婦の主導というか、向こうが案内してくれるままについていったにすぎない。
ただし、アタシはひとつだけ、どうしても行きたいところがある、とリクエストした。それがこの連作の最初に書いた、つまりはアタシがイギリスへ興味をいざなった張本人である、イタリアンシェフのジェイミー・オリヴァーのレストランだったんです。

前回書いたように、たしかにスタジアムツアーは良かったし、大英博物館には心が震えた。しかし初志貫徹(←オーゲサ!)、やはり最初の目的であるジェイミー・オリヴァーのレストランは外せないわけで。


◆ オー、ジェイミー!

ここでもう少しだけジェイミー・オリヴァーという人のことを記していきます。

彼が注目されたのはBBC(日本でいうところのNHK)で1999年に放送された料理ショウ番組(「裸のシェフ」。原題は「The Naked Chef」)で、当時若干24歳の若きイタリアンシェフが「延々喋り続けながら」本格イタリアンではなく、スーパーでも売ってるような食材を用いて短時間かつなるべく手間暇を省いた料理を次々に作っていく。
この番組が画期的だったのが(本当に<イギリスで>画期的だったのかは知らない。しかし少なくとも日本で同様のスタイルの料理ショウは存在しない)、料理人兼主演であるジェイミーが「私生活フルオープン」でやったことです。

調理が行われるのは彼の自宅のキッチンだし、友人や馴染みの店もそのまま出てくる。それだけでなく両親も、そしてガールフレンドまで出てくるんだから徹底している。
もちろん全部が全部<リアル>ではなかったんだろうけど、ガールフレンドとして登場したジュールズとは後に結婚しています。
つまり、料理ショウ番組でありながら、ある種のリアリティショウ番組でもあったのです。

そして何より、ジェイミーの<喋り>が抜群に面白い。
え?面白いって、英語だろ?と思われるでしょうが、日本放送分は当然吹き替えになっており、吹き替えを担当したのは声優の川島得愛。
これがもう、ハマりすぎるくらいハマっており、むしろジェイミー本人の地声よりもジェイミーのキャラクターにピッタリなのです。
というかジェイミーの地声(ってのも変だな。とにかく本人の声)って妙にこもった低い声で「ジェイミーのキャラクターと合っていない」んですよ。本人の声なのに本人のキャラクターに合ってないって。どういうことだよ。

ま、近年の番組は他の人が吹き替えをやってるんだよね。出来れば川島得愛に戻して欲しいわ。


◆ 食いたくなるのは当然っしょ

ジェイミー・オリヴァーの「裸のシェフ」にハマったのはたしか2008年くらいで、録画して繰り返し見たし、見れば見るほどイギリスに、というよりはイギリスの料理に惹かれていったのです。

ま、イギリスの料理っても、何たってジェイミーは<イタリアンの>シェフなのですからイギリス料理ではないんだけど、食材は紛れもなくイギリスのスーパーには売ってるもので、んで結構いろんな食材を使っているし、何より美味そうだ。
まァね、世間一般ではイギリス料理(というかイギリス<の>料理)は世界一マズい、と評判ですから、逆に興味を惹かれたんです。
こうなると自分でも食べたくなる=作りたくなるのが人情ってもんでして、ジェイミーが番組中で使った食材をね、いろいろ探したりしたんです。

ところがこれがぜんぜんない。野菜にしたところでセロリヤック(セロリではない)とかどこにもないし、最近はまだ見かけるようになったバターナッツもまったく売ってなかった。
何よりハーブは極端で、日本のスーパーとかハーブの種類がちょっとしかないんです。乾燥させて細かく砕いて瓶詰めにされたものでもあればまだいい方で、これはもう、イギリスくんだりまで行かないことには食材すら手に入らないぞ、と。

んで実際、イギリスくんだりまで来たんだから食材が手に入るのは確定としてね、ジェイミーの<味>を再現するとなると、やっぱ、実店舗に行ってみたい。
だから、もう、それだけは頼む、と妹夫婦にお願いしてたんだけど、運良くケンブリッジにも店舗があったのです。


◆ ジェイミーの実店舗に来て

2011年2月某日、妹夫婦、姪っ子、アタシの4人は待望の、ケンブリッジ市内にあるジェイミー・オリヴァーのレストランに行きました。
ま、待望なのはアタシだけだけどさ。

こういう場合、というかアタシも何度かテレビで紹介されているのに触発されて食いに行ったことはあるんだけど、期待が大きすぎて大抵はガッカリしてしまいます。
もちろん「こういうのは最高の状態の料理をテレビで出してるんだから、期待が大きいと裏切られることになる」とわかってはいるんです。わかっているから「まァ、モノの試し」という姿勢は崩さずに行くんだけど、それでも裏切られた感じになっちゃってたわけで。

しかしジェイミーの店は別だった。
っても「どれだけ大きな期待をしてもジェイミーの店なら大丈夫!」と思ってたわけじゃないんですよ。そうじゃなくて、そもそもアタシはイギリスという国でまともなレストランに行ったことがない。だからもう、何をどう期待すればいいのか、どの程度の期待の大きさがベストなのか、それすらわからなかったのです。
だからアタシはこう思うことにした。

この際、美味いかマズいかはどうでもいい
とにかく「味わう」というよりも「体験する」ことに重きを置こう
というか、どうせジェイミー本人が調理してるわけじゃないんだし

正直アタシは出てくる料理の数々に面食らった。といっても奇抜な料理が出てきたってことじゃなくてね、普通にオードブルからメインディッシュときて、最後はデザートというオーソドックスきわまるコースで、一品一品も何ら奇をてらったところがない。
たしかに味付けはちょっと日本のイタリアンではない感じではあったんだけど、何より驚いたのは、どれもこれも、マジで美味い。
オードブルのオリーブからして出色で、以降、日本でもイギリスでもいろいろオリーブを買って試したけど、どれもジェイミーの店のオリーブには<はるかに>及ばない。
メインディッシュのパスタも、デザートのレモンケーキも、満足も満足、大満足でした。

しかしここで新たな疑問が湧いてきた。
ジェイミー・オリヴァーの店は「間違ってもマズくはないけど、特別どうこうという店ではない」という評判で、ま、言ってもチェーン店だからね。妥当な評価かもしれません。
でもこれが飛び抜けた店ではないとするなら、もしかしたらイギリス<の>料理ってのは、言われているほど酷くはないんじゃないか、と。


◆ もちろん、マズいものもある

イギリス料理と聞いて日本人が思い浮かべる「マズいものの代表」と思われる「うなぎゼリー」など、この時のひとり旅の時はもちろん、その後半年ほどロンドンに滞在した時も一度たりとも<食べたことがない>どころか<実際に見たこともない>のですよ。

つまりうなぎゼリーというのは、少なくとも日常的にイギリス人が食しているものではない。食している地域もあるのかもしれないけど、日本で言えば<くさや>とか<鮒ずし>などの存在に近しいのではないかと思われます。
ではフィッシュ&チップスは、というと、まァうなぎゼリーよりは食べられているけど、そこまでね、国民食というほどでもない。
というかアタシも今まで現地でフィッシュ&チップスを食べたけど、美味いマズい以前に「あんまり味がない」んです。その代わりテーブルに様々なソースが置いてある。つまりは「勝手に自分の好きなように味付けして食え」という感じなんですな。

ま、ここまでだと「イギリス<の>料理は言うほどマズくはない」ってことになるんだけど、もちろん信じられないくらいマズい、しかもうなぎゼリーなんかと違いイギリス人が日常的に食べている、なんてものもあります。
たとえばマーマイト。これの味の形容は難しい。通常はパンにスプレッドして食べるんだけど、独特の臭みと強烈な塩っ辛さがあってアタシには無理だった。

もうひとつ。これはケンブリッジのスーパーに連れて行ってもらった時に「お兄さん、これ、一回食べてみてください」と妹のダンナに強烈に勧められて買ってみた「缶入りベイクドビーンズ ウインナー入り」です。
そもそもアタシは豆類があんまり好きじゃないんだけど、それでもビーンズの方は「マズいなぁ」と思いながらとはいえ口に入れることは出来た。
しかしウインナーは無理だった。日本で言えばポークビッツくらいのが缶の中に数本入ってるんだけど、ウインナーというより、ソーセージというより、早い話が「段ボールを固めたものがマズい汁に浸かっている」としか思えなかったんですよ。

これ、今思い出してもイマイマしい。妹のダンナ、はかりやがったな。こんなもん食えるか。これならまだ乾いた段ボール食うわ。


◆ 姪っ子に会いに行ったんじゃニャいのか

まァね、そりゃあ姪っ子に会いたかったからイギリスまで行った。一番の理由はそれです。いくらジェイミーの店といっても、それは枝葉なのには違いない。あんまり説得力がないけど。

しかしこの時点で姪っ子はまだ一歳になったばかり。一緒に遊ぶといってもさすがに小さすぎるし、いくら<叔父さん>の肩書きがあるとはいえ<ヨソのオジサン>には違いないわけで、というかまだこの頃はお父さんとお母さんにベッタリで、かなり人見知りでしたからね。
しかしそれから約10年の月日が経った今、アタシは毎週姪っ子とFaceTimeでビデオ通話している。

当然のことながら、向こうは日本語で喋ってくれます。バリバリのバイリンガルだけど、両親が日本人なので何の問題もなく日本語も喋れるわけで。
しかも何のことか、アタシがかつて仕事でやってたミニチュアや、アタシの中学生時分以来の趣味であるプログラミングに強い関心を持っている。だから姪っ子と喋っててもネタが尽きないのです。

あー、すまん、ぽんぽこ。もうロンドンの話は昨日で終わったんだわ。

待て!ロンドンに<アレ>を観に行った話があるんじゃニャいのか!

それな。いや待てぽんぽこよ。その話は今度たっぷりしてやるから。んでちゃんと歌わせてやるから。
というわけで、3日間にわたってお付き合いありがとうございました。よろしければリアクションお願いします。さらばじゃ!