見出し画像

ダメ男、姪っ子に会うためにケンブリッジに行く

♪ ソ ラ ソ ファ ミ ファ ソ レ ソ ミ ド~

お前が歌うんかい!
・・・てな「ごっつええ感じ」のネタは置いといて。

ニャんだ、今日はロンドンの話をするって聞いてたから気を利かせてニャったのに

すまんなぽんぽこ。今日はロンドンとはちょっと違うんだ。ま、同じイギリスなんだけど、イギリスから北へ1時間ほど行ったところにあるケンブリッジって街の話なんだよ。

お、ということは、ニャアの妹の話をするんだニャ

おいおい、アタシの姪っ子がいつからお前さんの妹になったんだよ。たしかにトシはお前さんの方がひとつばかし上だけどさ。
いや、そんなことよりも。
今回のエントリは通常の「毎週日曜日更新」から外れて金曜日に更新しましたが、この「人生初イギリスひとり旅編」は全3回の連作なのでまとめて更新しようと。さすがに続き物で一週間間隔が空くのは長すぎるって怒られたから。
なので明日土曜日に連作第2回目を、明後日日曜日に連作第3回目、つまり完結編をアップします。

HDDをいろいろ探ったら当時撮った写真が出てきたんで、なるべく画像多めでやりたいと思っております。
それではどうぞ。


◆ 嫌で嫌でたまらなかったダメ男初めての海外ひとり旅

中学での英語の通信簿は、3年間通して、ずっと<2>

もうこれだけで、アタシが如何に英語を苦手にしていたか理解してもらえると思います。
たしかにアタシは短期間とはいえ小学生の時に英語を習ってたことはある。しかし英語そのものに興味をおぼえるには至らず、だから正確には苦手というよりも「興味がない」「嫌い」という域だったんです。

そんなアタシでしたが、人生というのはわからないものでして、英語と無関係でいられなくなった。
とくに大きかったのは、妹が結婚して、相手は日本人だったとはいえ21世紀に入ったくらいからイギリスに居住し出したのです。
ま、それでもね、兄妹仲も良い方ではなかったし、わざわざイギリスに遊びに行こうとは露ほども思わなかった。はっきり言えば、関係ねぇや、と。
ところが妹夫婦に子供が出来た。アタシにとっては初姪ってことになるんだけど、それでもなぁ、英語は苦手だし、そこまで会いたいってほどでもないし、わざわざイギリスくんだりまで行くってのは、ねぇ。

ところがこの頃から徐々に周りが固められていってることにアタシは気づきませんでした。

イギリスにかすかな興味をおぼえたきっかけはスカパーでやってた、とある番組です。
ま、かいつまんで言えば料理番組ってことになるんだけど、この番組がね、見れば見るほどにハマったんです。
若い、ケーハクそうなイギリス人のアンちゃん(©ビートたけし)が、絶え間なく喋り続けながら<雑>としか言いようがない感じで料理を作っていく。
最初はこのアンちゃんの名言(本当の名言ではなくネットスラング的な名言)に笑っていたんだけど、だんだん料理そのものにも興味が出てきてね。
当たり前だけど、イギリスで制作されている番組なんだから、使われる食材もイギリスで普通に手に入るようなものばかりです。しかし、それらの大半は日本では入手出来ない。

ああ、これ、どんな味なんだろ
一度食ってみたいな

この料理人の名前はジェイミー・オリヴァー。今も活躍する著名なイタリアンシェフですが、彼のプロデュースするレストランがイギリス中にあるという。
ならば、もし、イギリスにいけば、この料理が食えるし、当然食材もスーパーなんかに行けば手に入れられるわけか。

ビートルズでもUKロックでもなく、クリスティーでもシャーロック・ホームズでもなく、007でもハリーポッターでもなく、アタシはたったひとりの料理人の<仕業>でイギリスへの興味を惹き付けられたのです。


◆ UKへ、ゆけぇ!(©ミスター(©ムッシュ))

それでもなかなか重い腰を上げないアタシを見かねた母親がとうとうこんなことを言い出した。

「飛行機代だけ出したるから、イギリスに行け!絶対に行け!!」

ま、これは強制です。カネまで出すんだから行かないことは許さない、という。
いやいや、そんなカネもったいないよ。何よりアタシはたいして行く気がないし、そのカネで自分のものでも買ったら・・・なんて言えるわけがない。
こうして、甚だ消極的ではあったのですが、アタシはイギリス行きの手配をはじめたのです。
とはいえ、出発当日まで、憂鬱でしかたがなかった。嫌だなぁ。だって、向こうに行けば、みんな英語を喋ってるんでしょ?日本語なんてまるで通じないんでしょ。
この時点でアタシは海外旅行には一回しか行ったことがない。その一回も「まだ日本語でも何とかなりそうな」グアムで、しかもこの時は連れもいた。
ところが今回はイギリス。しかも初の海外ひとり旅。不安を感じない方がどうかしてる。

2011年2月、と言えば当然震災の直前ってことになるのですが、もちろんこの時はそんなことはわからない。
アタシは不安いっぱいのまま、成田空港からイギリスはヒースロー空港に向かって旅立ったのです。


◆ ダメ男、イギリスの地に降り立つ

10何時間か経った頃、地上が目前まで迫っていた。うん、これは、たしかに日本の地形とは違う。そうか、これがイギリスなんだ。

しかし着陸態勢に入ってから妙な感覚に襲われた。何だか、見慣れた福岡空港っぽい。ここ、ホントにイギリスなの?と一瞬疑ったけど、空港の中に入るとそこは紛れもなくイギリスだった。
海外初ひとり旅の最大の難関である入国審査は「何でもいいからとにかく笑顔で」というアドバイスで切り抜けることが出来ました。
妹夫婦というか姪っ子が住むのはケンブリッジです。ロンドン市内にある(といっても端っこだけど)ヒースロー空港からケンブリッジに行くには、地下鉄でキングスクロスに行って、そこでケンブリッジ行きに乗り換えなきゃいけない。とりあえず、そこまでは妹に教えてもらってた。

ところがまず、ヒースロー空港と直結しているはずの地下鉄の駅までの行き方がわからない。案内はあちこちに出ているのに、どこにも「SUBWAY」という文字が見つからない。
というのもアタシはね、地下鉄の英訳=サブウェイだと思い込んでいたのです。
しかしイギリスではサブウェイとは言わない。アンダーグラウンド、もしくはチューブと呼ばれている。まずこれがわからなかった。
やっとのこと、地下鉄の駅を見つけた。んでこれまたやっとのこと切符を買えて地下鉄に乗り込んだ。
路線で言えばピカデリーラインってことになるんだけど、ありがたいことにピカデリーラインでヒースロー空港からキングスクロスまで一本で行けるようだ。

ふぅ~、ここまでくれば勝ったも同然だ。あとは地下鉄に揺られていればキングスクロスに着くし、そこでケンブリッジ行きの電車に乗り換えれば完璧。何だ、たいしたことないじゃないか。
気が緩んだこともあって、アタシは買ったばかりのiPhone4でツイートしまくりました。Twitterが本格的に存在感を見せるのは翌3月に起きた震災からだけど、よほどホッとしたのでしょう。やっぱ、霧が出てるね、霧のロンドンだなぁ、などとくだらないことを書きまくっている。

そう、この後起こる悲劇のことなど想像だに出来ずに。


◆ 駅が、ない!

何の問題もなくキングスクロス駅に到着したアタシは、最終目的地であるケンブリッジ行きの電車に乗り込む、つもりでした。

ところがところが!ない!いくら探したところで、ケンブリッジに行きそうな電車の発着プラットフォームが見当たらないのです。
やっとそれらしきプラットフォームを見つけたと思ったら行先表示が「PARIS」になっている。パリ!?そう、これは最近放送された「水曜どうでしょう」最新作でもどうでしょう一行が乗ったユーロスターのプラットフォームでした。
いやいやいや、パリって。それじゃ、方向がまるで反対だよ。つか国が違ってる。

こうなりゃもう、人に聞くしかない。いやこれが日本なら普通に人に聞くし、聞かないまでも案内板で何とかなるのかもしれない。
しかしここはイギリスです。つまりは、日本語なんて、ぜーんぜん、まったく通じない!!
とはいえ、まだ黎明期だったとはいえスマホのある時代です。Google翻訳で何とかなるんじゃないか、と思い案内所に駆け込んだ。
ところがまだこの頃は精度が悪かったのか、それともアタシの日本語が怪しかったのか、まったく先方に伝わらない。

ソ、ソーリー・・・

それだけを言い残して、アタシは案内所を後にした。
ああ、こんなことなら、もっと英語を本気で勉強しておくべきだった。今さらすぎるけど。
たったひとつ、頼みの綱は妹夫婦に電話して教えてもらうことだったけど、何故かまったく電話が通じない。
いよいよやることっつーか、やれることがなくなった。
異国で、たったひとり、まったくどうすることも出来ない。途方に暮れるとはまさにこのことです。

・・・だからイギリス旅行なんて嫌だったんだよ
やっぱ、来るんじゃなかった・・・


◆ ダメ男、覚醒する

ふと、目の前に光が射した。といってもケンブリッジ行きのプラットフォームが見つかったわけじゃない。

でもここにきて、この人生最大のピンチを迎えて、もしかしたら、この状況って、メチャクチャ面白いことなんじゃないか、と思い始めたのです。
本当に突然だった。気持ちがネガティブなものから前のめりに変わった。

この状況を、思う存分楽しもう!

何故だかそういう感情になったのです。
人間ってのはフシギなもので、こうなると物事は好転していく。案内板をすべて無視して、先入観をすべてかなぐり捨てて、直感だけを信じて、たぶんこっち!と思う方向に足を進めると、信じられないことにあっさりケンブリッジ行きのプラットフォームが見つかったのです。

ちょっとだけ<からくり>を説明しておきます。
ユーロスター云々の話が出てきたので、一度でもキングスクロスに行った方ならおわかりでしょうが、キングスクロス駅と隣接される形でセントパンクラス駅ってのがあるんです。
地下鉄の駅舎はセントパンクラス駅とつながっており、そのまま出るとユーロスターの発着プラットフォームがあるセントパンクラスに行ってしまう。
つまりアタシはセントパンクラスの方ばかりをウロついていたのです。
で、ケンブリッジ行きのプラットフォームがあるキングスクロス駅は駅舎から一旦外に出たところにあった。今はキングスクロス駅が改装されてもうちょっとわかりやすくなってるけど、2011年当時はこうだった。

つまり完全な初見殺し。これは、迷うよねぇ。東京メトロでも時々わからなくなるのに。


◆ ダメ男(フラフラになりながら)ケンブリッジに到着!

ケンブリッジ駅に着くと妹夫婦と姪っ子がクルマで迎えにきてくれた。

「お兄ちゃん、もしかして電話くれてた?ちょっと忙しくて出れなかったわ」

・・・おいおい、こっちは死ぬ思いをしたんだぞ。ってまあいいけどさ。貴重きわまる体験が出来たんだから。

おい、もう歌はいいニョか

ぽんぽこよ。とりあえずケンブリッジに着いたから歌はいいわ。またロンドンに行った話になったら歌ってもらうから。
てなわけで、話としては続く。もしご関心がおありでしたら何らかのリアクションお願いします。
さらばじゃ!