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スパイ罪で起訴されたが……

Column~№10
 アステラス製薬の社員が「スパイ罪」で起訴された。身柄が拘束されたのは昨年3月のことで、1年が過ぎたこの時期に司法手続きが始まるという日本では考えられない不当な拘束期間である。しかもスパイ罪ということだが、具体的にどのような行為をしたのかも詳細は明らかになっていない。
 権威主義国家での恣意的な逮捕は中国だけではないが、どのような行為で逮捕に至ったのかが判然としないのは釈然としない。司法権の行使はその国の自治権に基づくものであるため、他国が騒いでもどうにもならない。だが人を拘束するのであれば理由を明確にすべきであろう。
 このような国であることを知りながら旅行に出掛ける方には驚かされる一方、会社の命で渡航される方は気の毒にさえ感じる。誰もが「自分はそんなことには巻き込まれないだろう」と思っているが、当局者はそうではない。だから私は権威主義の国への渡航は控えている。
 この事件で最初に耳にした情報がある。裏が取れていない話なので真偽の程は分からないがアステラス製薬の臓器移植で使用する薬品に関係するとの話を聞いた。
 アステラス製薬は臓器移植の際に使用する薬品が業界トップを誇り、中国で行われた臓器移植の患者リストの情報を知っていた。その情報が流出することを恐れて身柄が拘束されたという話だったが、先ほど申し上げた通り真偽については確認ができていない。
 また拘束された方が「中国日本商会」という日系企業で構成する経済団体の副会長という役職から、低迷する中国経済で日本企業の撤退を抑制するための人質という話も聞いた。もちろんこの話も真偽は不明だが、このように身柄が拘束された時にはいろいろな情報が飛び交っていた。
 日本の公安当局も企業の方やメディア関係者からその国の情報を入手している。そして在外日本大使館でも直接現地の情報を入手しているが、権威主義国家はどの国も「中枢の情報」は簡単には摑めない。したがって断片情報を組み合わせながら情報を分析することになるが、その結果がすぐに分かるものもあれば、何年後に明らかになる場合もある。
 今回起訴された方のご家族や企業関係者の方々の心中を思えば、すぐに真相が明らかになることを切に願っている。

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