PPP的関心【雲南市「企業チャレンジ」の記事を読んで。企業もまちづくりの主体である】
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PPP的関心【雲南市「企業チャレンジ」の記事を読んで。企業もまちづくりの主体である】

矢部智仁 / Tomohito YABE

まちづくりの主体者は誰か。ということを考えるとき、その答えとして「市民、住民」という答えを想定している調査や研究が多くあります。私自身も大学ではまちづくり、特に「公民連携による」まちづくりにおいては、主体は市民であり行政は環境整備・良化や活動支援を行うという関係を前提に話をしています。

「市民(住民)」と言った時、その地域を自らにとってより良い地域にする主役となる存在は個人や市民団体だけではなく「企業」もまた市民(住民)であることを再確認する取り組みだと思う記事がありました。
今回はそれを読んで思ったことを書きます。

企業の貢献。
コカコーラ財団の貢献事例「チャタヌーガの奇跡」

「チャタヌーガ、ピッツバーグの中心市街地再生とその後 」(地域調査情報18-5 ,信金中央金庫 総合研究所 ,2007.2)

2007年のもので少々古いレポートですが、東洋大学PPPスクールの講義でも紹介するこの事例は「チャタヌーガの奇跡」と呼ばれる取組です。

鉄鋼業による繁栄の後、大気汚染、それに続く構造不況による人口流出などで衰退するチャタヌーガ(米国テネシー州)の再生活動に取り組んだ市当局や経済界、住民による取組です。

80 年代半ばからの再生の取組は、中心市街地再生の成功事例として90 年代半ば以降米国内外からの賞賛を浴びるほどの成功を収めています。
成果の詳細にご関心があるついてはリンク先のレポートをお読みいただくとして、この取組の主体者は誰かということに触れるともちろん行政や市民の姿があるのですが、加えて重要な存在であったのが地元に1950年代から進出していたコカコーラなど” 地元企業 ”が出資する団体、リンドハースト財団の存在が大きかったと考えられます。

雲南市の「企業チャレンジ」

記事で紹介されているのは、島根県雲南市の「雲南ソーシャルチャレンジバレー」構想です。

雲南市はもともと市民主導で様々な社会課題の解決に取り組む自治体として

《チャレンジ1》未来をつくる意志と力を育む「子どもチャレンジ」
《チャレンジ2》地域と自分の未来を切り拓く「若者チャレンジ」
《チャレンジ3》自分たちが地域を経営する「大人チャレンジ」
《チャレンジ4》地域と共に社会課題に挑む「企業チャレンジ」

という4つのチャレンジで市民や企業の主体的な「チャレンジ」を支援していくプログラムを展開しています。

紹介サイトでは、同市の「地方創生」リーディングプロジェクトと位置付けられるこのプログラムの4つのチャレンジそれぞれに「新しい時代に対応した「公教育モデル」を構築」「志ある大学生や若者、市内事業者のイノベーションを創発し、地域に必要な新事業を創出」「地域を担う多様な人材を育成・確保する仕組みを構築」「地域と市内外の企業による連携協働を進め、社会課題を解決する新事業を創出」といった目的が示されています。

冒頭のゴルフカート型電動車両を定時定路線バスとして運行するのも雲南市とヤマハ発動機が連携して進めるグリーンスローモビリティ実証事業です。

以降も、島根県雲南市と『企業チャレンジ制度』『地域活性化起業人制度』の2つの協定を締結する企業の登場など、チャレンジは続いています。

地域の利益と自社の利益を一体化させる
まず民間が動く、稼ぐ。そして地域を豊かにする

冒頭に書いたチャタヌーガの事例での財団を通じたコカコーラ社による行動は、実は、自社の存在する地域の衰退が自社事業にマイナスの影響を与えることを避けるという意味もありました。人口流出は工場労働者の減少を意味し、かつ需要の減少を意味します。地域の衰退は自社の事業の持続可能性に直結していたのです。だからこそ財団活動を通じて大気汚染と戦い、新たな観光資源の開発に注力し、住民の居住環境の良化に努めたのだと思います。

同じように雲南市の企業チャレンジに集まってくる企業にとっても、自社の強み(得意な分野)を活かして、雲南市民や地域企業の暮らしやすさや地域経済の活性化に貢献しながら、将来的な自社のビジネスチャンスを創造することを意図しているのが想像されます。

こうした考え方について、私は自然なことだと思いますし、むしろその動機が重要だと考えます。
先日書いたPPP的関心の記事中で「もう一つの利益 民間の新たなビジネスチャンスにできるか」という章でも書きましたが、公民連携事業を通じ民間企業の商機に繋げることは、結果的に域内経済の循環や域外経済との交流の拡大を起こすことに繋がり、地域を潤し豊かにすることになる、という発想は地域の活性化を考える上で合理的な考え方だと思います。

これにも注目。
リノベーションまちづくりにおける企業活動の「創発」

「欲しいまちの姿は自分で創る」という志ある個人、民間団体などを発掘、育成、情報発信の機会でもあったリノベーションスクールでも、「企業」が主役となる動きが出始めています。

浜松のトップ企業である自動車会社も含めた地域企業が参加し、多様な業種の企業が各社の魅力を組み合わせながら空きビルや低利用・未利用な公共空間を使った新しい事業を構想する(実際に、そのような事業が始まった事例もあると聞いています)取組です。

企業が加わることで地域活性化に貢献する事業構想の際の規模やスピード、その裏付けとなる資金調達等において大きな進化が見られるはずです。
そうした利点に加え、特に浜松市の取組に注目するのは取組に建設・不動産業界の地元有力企業が主体的に参加していることです。空きビルや低利用・未利用な公共空間を使った新しい事業を構想するのには施設・設備建設や不動産の運営に関する事業ノウハウは必須だからです。

雲南市、浜松市の取組のように、「企業」も市民(住民)としてまちづくりに参加することが当たり前になることで、公民連携による地方創生がさらに加速するのではないでしょうか。


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矢部智仁 / Tomohito YABE
合同会社RRP( RRP LLC) 代表社員。東洋大学 大学院 公民連携専攻 客員教授。 リクルート住宅総研所長→建設・不動産業向経営コンサルタント企業役員を経て現職。 RRPは地域密着の建設・不動産業を元気に、業界・行政・地域をPPP的取組で繋ぎ地域を元気にする活動を行います