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PPP的関心【鹿児島訪問記。場と機会を創る官と、場と機会を活かす民、の良い関係】

2022年8月、久しぶりに鹿児島を訪れました。訪問のきっかけは、鹿児島県内でまちづくり・人財つくりに奔走するKISYABAREE代表の須部さん を私の講義にゲスト講師としてお招きした際のお約束でした。お返しというわけではないですが、そのご縁で今回は須部さんが運営するまちづくりセミナーで少しだけお話しさせてもらいました。
偶然ですが、訪問した日程は「3年ぶり」の「かごしま錦江湾サマーナイト大花火大会」開催の日でした。街中の人々もどこかソワソワした、でも笑顔が溢れる雰囲気を感じました。毎年当たり前だったものが戻ってくることは人と街を元気にしますね。
*写真は今回訪問した鹿児島県庁最上階にあるコワーキングスペース「かごゆいテラス」からの景色。

公民連携。官の役割と民の役割の再確認

以前のPPP的関心でも書きましたが、行政と民間が連携して地域社会の課題をクリアしてゆく際に、大事なことはイコールパートナーという関係の構築だと書いたことがあります。
その根底には、従来は「主に」官が引き受けてきた公共サービスの提供を、官民の共同による「事業」として公的(社会課題解決に貢献する)サービス提供を行う際、事業で発生しうるリスクやリターンの設計において「透明」と「対等」が重要だからです。

イコールパートナー関係の構築にとってとりわけ重要なことは、官と民ではそれぞれが「できること」「得意なこと」が異なるということを受け入れ、理解しておくことだと私は思います。
その上で、双方の「得意」を持ち寄って成果創出を目指すことが共同事業の成果を大きくするための秘訣ではないかと思います。

鹿児島市、鹿児島県の「得意」とそれを活用する民間の「得意」

今回訪問したのは鹿児島市が運営する「mark MEIZAN(マークメイザン)」というコーワーキングスペース、そして、タイトル写真とした鹿児島県庁の最上階に位置するコーワーキングスペース「かごゆいテラス」です。

クリエイティブ産業創出支援拠点。
mark MEIZAN(マークメイザン)

現地入りしてまず訪問した場所は鹿児島市(産業局 産業振興部 産業創出課)が運営するクリエイティブ産業創出支援施設「mark MEIZAN(マークメイザン)」です。元々はIT企業の誘致とその拠点として創られた空間だったそうですが、現在は地元で起業意向のある人々やスタートアップを幅広く支援することを目的とした施設に生まれ変わっています。
ちなみに。名前のMEIZANは、施設が立地する名山町(戦災にあわなかった街区で、既存のストックをリノベーションで活用した飲食やクリエイティブ事業者が集積した地域)にちなんだものですが、まさにクリエイティブ拠点にふさわしい街の空気感のようなものを感じる場所でした。

mark MEIZANのエントランス

いろいろな見方はあると思いますが、こいいう「場(空間)と機会」創りは「官」の得意分野(というかPPPにおける官の役割)の一つだと思います。
得意を発揮した鹿児島市のご担当の取り組みの注目点は、場創りや機会創りを担った行った上で、人財を呼び込む・発掘する・繋がるを得意とする「民(この場所の例でいえば須部さんとその仲間たち)」の強みを活かし、即ち民に託して地域に新たな産業・仕事を起こすという、官民の得意分野を理解した取り組み方を選択したことだと思います。

県庁にできたコーワーキングスペース「かごゆいテラス」
「窓 SOUU」+「結 YUI」+「耕 KOUU」

かごゆいテラスは、会員制のコーワキングスペース「窓 SOUU」、イベント開催などに対応した「結 YUI」、「オープンライブラリー」として起業家等から寄贈された本が配置され、訪れる学生や企業との出会いの場を創出する「耕 KOUU」の3つのゾーンから成り立っています。
元々は展望ロビーとして無料開放していた場所だそうですが、鹿児島県商工労働水産部新産業創出室と民間団体(鹿児島全域から多様な専門性を持った人材が集まった特定非営利法人薩摩リーダーシップフォーラムSELF)の共創によって生み出された空間です。ここでも官による「場の提供」とその場を活かすアイデアを持つ民間人材の活用というコンビネーションがあったからこその空間だと思います。
余談ですが。
何より素晴らしいのは、この記事のトップ画像にもあるように県庁の最上階からのビューです。こういう景色を眺めていると、一瞬、仕事の手を止めてしまいそうな(笑)気もしますが、世界を見渡す気分になれるような環境は素敵だなと思いました。

まかない種からは絶対に芽吹かない

鹿児島市役所の「mark MEIZANN」も、鹿児島県庁の「かごゆいテラス」もすぐに実りをもたらすかどうかはわかりません。しかし、種をまかなければ永遠に芽はでません。
新しい事業や仕事・サービスはお金を出すから考えろ、といっても一朝一夕に出てくるものでもないかもしれません。あるいはアイデアを持っている人は既に世の中に存在していても、外に発信するきっかけを持てないだけかもしれません。その意味で「場の創出」「人の発掘」は、一見回り道に見えても公民連携による事業創造におけるセオリーだと思います。

次世代地域経営にとっても重要な産業創出支援

今回は官民共創による事業創造のステップを鹿児島で体験したわけですが、先週のPPP的関心で書いた「担税力のある市民」が住みたい街にするという視点との繋がりについて考えてみました。

あくまで極論ではありますが、個人住民税を納める市民が勤め人「ばかり」だとすると、いずれ(定年という)社会システムの中で仕事と収入を失い、所得が下がり、地域社会の共通課題を解決するための財源の一つである税を負担できる市民が減ってしまいます。それは支出面でも扶助を受ける人々が増え、投資ができなくなる地域になるということでもあります。
それを回避するには、社会システムに左右されず「自分で働き方を決める」人材を増やすことが、多様な方法論の一つとして浮かびます。
もちろん、自営業者だけにせよということでもないですし、専業でなくても自営に限らなくても、むしろ兼業・副業を含めた仕事を持つことでもよく、仕事で地域に貢献し、仕事で稼いだ分を地域に還元するという手段を多様化する、そんな暮らし方を取り入れるきっかけを見出してゆくべきではないかと思うのです。起業の勧めが必要な時代に入ったということだと思います。

最後に改めて。得意を持ち寄る

鹿児島県、鹿児島市の「空間」提供という環境整備と、やりたいことを実現してくれそうな期待値の高い人を見出し、連携し、そこに託して成果を引き出そうという行政(個人かもしれないけど)としての姿勢に着目しました。

官が民に事業とその成果創出を託したのであれば、民間が力を発揮できる、民間が自分の力を試してみたいと思える、民間が何か自分も関わりたい!という気持ちを呼び起こす、そんな場と機会の創造(協議会の設置とか今回のようなセミナーや勉強会の主催とか)と、民間が成果創出に向かって進みやすくなるような関係の創造(庁内の理解醸成とか)ということに「徹する」動き方ができるか?が大事なのだと思います。

今回はここまで。

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