デキる社会人の語彙力を身に付ける #10
今回は久しぶりの語彙力シリーズです。#09に続き今回もまた紹介してまいります。早くもシリーズ10作目です。無料版でもなかなかビュー数やスキの数も増えないので、今回もそこまで反響が大きくない場合はちょうどキリもいいことですし一旦語彙力シリーズは休止して、別シリーズを始めようかと思います。実はまだまだ語彙力シリーズのストックはあるのですが、こればかりだと”飽き”も来てしまうので、潮時かと考えています。どっちにしてもコメントがいただけると嬉しいです。
各語彙の「ジャンル」の定義については、#01のコラムをご参照ください。
【No.104】
・語彙:杞憂
・意味:必要のない、または根拠のない心配や不安のこと。
・ジャンル:熟語(松)
・用例:台風が来るかもという心配は杞憂だったようで、今日は快晴だ。
・解説:
「杞憂(きゆう)」の語源は、中国の古代国家である杞の国に住む人々が「天が落ちてくるのではないか」と恐れていたという故事に由来しているようです。杞の国の人々の心配は、非現実的で根拠のないものであったことから、そこから転じて「杞憂」は「無駄な心配」「過剰な不安」を意味するようになりました。
現代においても、無用な心配をしている状態を指して使われます。たとえば、十分な準備が整っているのに、まだ何か悪いことが起こるのではないかと不安になる場合などに「杞憂である」と言います。この表現は、心配や不安が時に人間の思考や行動に対して無用な影響を与えることを示しています。類義語としては「無用な心配」や「取り越し苦労」が相当すると思いますが、そう表現するよりは、「杞憂だった」と表現する方が簡潔かつ的確で、スタイリッシュではないでしょうか。
【No.105】
・語彙:行間を読む
・意味:文章や言葉の表面に現れない意味や意図を汲み取って理解すること。
・ジャンル:慣用句・ことわざ
・用例:彼の説明資料は大ざっぱで、行間を読まないと真意が掴めない。
・解説:
文字通り「行と行の間を読む」という意味から転じて、表面的には示されていない情報や感情を汲み取ることを意味し、文字通りには書かれていないが、その文章や言葉の裏に隠された意味や意図を理解することを指します。この表現は、人間関係やビジネス、文学など、さまざまな場面で用いられます。
例えば、メールや会議での発言など、直接的な言葉の裏に隠された意図や感情を読み取るさまを指してこのように表現しますが、言葉だけでなく、その背景にある状況や文脈、相手の表情や態度などを観察しなければ真意を理解することができない状態、というものは本来あるべき姿ではないと言えます。行間を読まずとも、額面通りに受け取っても正しい共通認識を持てる状態が本来のあるべき姿だと感じます。しかし、なかなか皆がそれが出来るとは限りません。逆説的になりましたが、だからこそ「行間を読む」力を身につけることが重要です。
【No.106】
・語彙:琴線
・意味:心の奥深くに触れたときに共鳴する感情や感動の源。
・ジャンル:熟語(松)
・用例:顧客の琴線に触れるプレゼンができれば、商品への関心が飛躍的に高まるだろう。
・解説:
「琴線(きんせん)」は、元来、琴という楽器の弦を指し、それが人の心の深い部分に響き共鳴する様子を比喩的に用いられる言葉です。ビジネスシーンでは、顧客やクライアントの「琴線に触れる」といった形で用いられるケースが多く、その人の感情や価値観、共感を引き出す行動や表現を指して使用されることが多いです。ます。特に広告やマーケティング、営業などで、相手の心に響く提案やストーリーを作り上げる際に重要な視点です。
例えば、商品やサービスを提案する際に、相手の”琴線に触れる”ことができれば、単なる機能や価格を超えた価値を認識してもらえるはずです。
この言葉はまた、社内コミュニケーションにも応用できます。部下や同僚の琴線に触れるフィードバックやモチベーションを高める言葉を選ぶことで、より深い信頼関係を築くことにも応用できます。ビジネスシーンにおける成功には、相手の琴線に触れる「共感力」と、それを表現する「伝達力」が欠かせない、とも言えるかもしれません。
【No.107】
・語彙:グランドデザイン
・意味:大規模な計画や構想、特に長期的なビジョンや戦略を指す。将来の目標を実現するために、全体像や基本方針を描く際に使われる。
・ジャンル:ビジネス・カタカタ語彙
・用例:企業の未来を見据えたグランドデザインを策定し、10年後の成長戦略を描く必要がある。
・解説:
元来、建築や都市計画の分野で使われ始めましたが、現在ではビジネスや政策立案の場でも頻繁に用いられています。この言葉は単なる計画やプロジェクトではなく、より大きな視点での長期的なビジョンを示すものです。ビジネスにおいては、企業の成長や発展を導くために必要な全体的な戦略を指し、具体的な目標や方針を示します。政策や社会改革においても、国や地域の未来像を描く際に「グランドデザイン」は重要な概念となります。長期的な視点で、全体の流れや方向性を意識して計画を立てることが、成功への大きなキーパーツとなり得るはずです。
【No.108】
・語彙:芸が細かい
・意味:非常に細かい部分にまで気を配って、丁寧に作業や表現を行うことを指す。また、物事を完成させるために細部まで工夫を凝らす能力があることを称賛する表現。
・ジャンル:慣用句・ことわざ
・用例:彼の作った模型は、細部に至るまでリアルで芸が細かい仕上がりだった。
・解説:
この表現は、もともと芸能や職人の技に対する賛辞として使われていましたが、現在ではより広い意味で、あらゆる仕事や行為の中で細部まで配慮が行き届いていることを指す表現です。たとえば、作品やプロジェクトにおいて、目立たない細かい部分にも十分な気を配り、完璧に仕上げることが「芸が細かい」とされます。日常生活でも、料理の盛り付けやインテリアの配置、会話における心配りなど、細やかな工夫や配慮が感じられる場面で使われます。この表現は、技術や才能だけでなく、相手に対する思いやりや気遣いの深さも評価する言葉です。
【No.109】
・語彙:言及
・意味:特定の話題や事柄について触れること。特定のテーマについて意識的に言葉にして説明や言い及ぶことを指す。
・ジャンル:熟語(竹)
・用例:彼は会議の中で、今回のプロジェクトの進捗状況についても言及した。
・解説:
特定の話題に対して触れたり、意識的に言葉に出したりすることを指す表現で、特に他の人々がまだ取り上げていない重要な事項について、発言や説明の中で言い及ぶ際に使用する言葉です。たとえば、政治家が演説で特定の政策について言及したり、学者が論文で過去の研究に触れたりする場面で「言及する」という表現が使われることが多いです。相手が既に知っていることでも、再び明確に言葉で述べることによって、その内容を重要視していることを強調する効果があります。「言及」は、深い考察や重要な指摘を伴う場合が多く、対話や文章においてポイントを押さえるための手段として使われる熟語です。
【No.110】
・語彙:幸甚
・意味:非常にありがたく、感謝の意を表すこと。自分にとって非常に好ましい状況を指す表現。
・ジャンル:言い換え・丁寧語
・用例:お忙しいところ恐縮ですが、ご出席いただければ幸甚に存じます。
・解説:
「幸甚(こうじん)」は、丁寧な言葉遣いの一つで、自分にとって非常にありがたく思うことや感謝の気持ちを表すときに使います。ビジネスや公の場面で、特にメールや手紙の中で使われるシーンをよく見かけます。直接的に「ありがとう」と表現するのではなく、「あなたの行動や対応が私にとって非常にありがたい」と遠回しに伝える非常に上品な表現方法です。例えば、依頼やお願いをする際に「○○していただければ幸甚です」と述べることで、相手に対する敬意を示しつつ、その行動が自分にとって大変有難いものであることを強調します。日常会話ではあまり使われませんが、正式な場面や丁寧さが求められるビジネスシーンでよく見られる表現です。
【No.111】
・語彙:呼応
・意味:相互に対応し合い、連携して反応すること。また、ある行動や言動に対して応じること。
・ジャンル:熟語(竹)
・用例:彼の投げかけに多くの人々が呼応し、賛同の声が広がった。
・解説:
この言葉は、二つ以上の対象が互いに反応し合い、連携して動く様子を表す言葉で、言葉や行動、あるいは状況に対して反応を示すことを含んでおり、個々の要素が互いに影響し合って、統一的な動きを見せることを意味します。例えば、リーダーの決断にメンバーが呼応することで、チーム全体が一つの方向に動くことができます。政治的な運動や集団行動においても、あるリーダーシップや声に対して呼応することで、大きな運動が形成されることがあります。また、文学や詩の中で、リズムやテーマが互いに呼応し、作品全体に統一感を持たせることも「呼応」の一例です。
【No.112】
・語彙:鼓舞
・意味:人のやる気や意欲を高め、奮い立たせること。
・ジャンル:熟語(梅)
・用例:彼の情熱的なスピーチは、多くの人々を鼓舞した。
・解説:
他者の気持ちや士気を高め、行動を促すことを意味する言葉で、もともとは、太鼓を打って舞を踊ることを指し、それが転じて、人々の心に響くように働きかけ、奮起させる意味で使われるようになりました。リーダーが部下を鼓舞する、教師が生徒を鼓舞するなど、集団や個人のモチベーションを高めるために使われる言葉です。鼓舞の対象は特定の行動に限らず、困難な状況を乗り越える勇気を与える場面でもよく使われます。例えば、スポーツの試合で監督が選手たちに向けてエネルギーを注ぐ姿や、逆境に立たされているチームを鼓舞するための応援がその一例です。
【No.113】
・語彙:采配
・意味:指揮を執って物事を統率し、指示を与えること。
・ジャンル:熟語(松)
・用例:監督の見事な采配でチームは勝利を収めた。
・解説:
もともとは武将が戦場で軍隊を指揮する際に使った「采配棒」という道具を指した言葉だそうです。この采配棒を振るうことで部隊に指示を伝え、戦況を掌握していたことから、「采配」は指揮や統率の意味を持つようになったようです。現在では、スポーツの監督やビジネスのリーダーなどが戦略的にチームを導く場面でよく使われます。特に采配を振るう人の判断やリーダーシップが試される局面での行動を指す場合が多いです。スポーツでは監督が選手の起用や戦術を決める「采配」が試合結果を左右する場面が頻繁に見られ、ビジネスでも、リーダーがプロジェクトを成功に導くために的確な指示を出すことを「采配を振るう」と表現します。
【No.114】
・語彙:サブリミナル
・意味:人の意識では認識されないが、無意識に影響を与える情報や刺激のことを指す。多くは映像や音声に含まれる。
・ジャンル:ビジネス・カタカタ語彙
・用例:テレビCMにサブリミナルメッセージが含まれていると、視聴者に無意識の影響を与える可能性がある。
・解説:
サブリミナルは、心理学や広告業界で使われる言葉で、意識的に捉えられないレベルの刺激を利用して、無意識に影響を与える手法です。例えば、映画の一コマに非常に短い時間で特定のイメージやメッセージを挿入することにより、視聴者が気づかないうちにそのメッセージが記憶に残るようにします。ビジネスや広告の分野では、商品やブランドイメージを潜在的に強化する目的で使われることもありますが、倫理的な問題や法規制により、使用が制限されている国もあります。サブリミナル効果の科学的な実証は議論が続いていますが、無意識の行動に与える影響は長く研究されてきました。決してポジティブな手法として受け入れられているものではありませんが、この語彙を知っていればこのような手法が取られた場面で、「サブリミナル的な効果を得ようとしているのか?」といった指摘ができるようになります。
【No.115】
・語彙:ジェネリック
・意味:本来の意味は、特許が切れた薬の代替品として同じ有効成分を持ちながら、低価格で提供される医薬品を指す言葉。「後発医薬品」とも呼ばれる。ここから転じて、「下位互換」の表現として用いられる。
・ジャンル:比喩表現
・用例:このバッグ、某有名ブランドのデザインとそっくりで見た目は似てるけど、やっぱり質感やディテールが違うから、ジェネリック版だね。
・解説:
元来、ジェネリック医薬品は、新薬の特許が切れた後に製造・販売される薬で、新薬と同じ有効成分を持ち、同じ効能を期待できるにもかかわらず、研究開発コストがかからないため、安価で提供されるものとして知られています。ここから転じ、とある物事・役割を指して、その下位互換のものを元の「ジェネリック」的な立場として表現されることがあります。近年はさらにそれが先鋭化し、「さえない」「ぱっとしない」「二流品」などネガティブなニュアンスとして用いられる言葉にもなっていますので、使用する際は注意が必要です。
【No.116】
・語彙:十把一絡げ
・意味:異なるものをまとめて扱い、区別をせず一括りにすること。
・ジャンル:慣用句・ことわざ
・用例:彼は、意見の違う人たちを十把一絡げに「反対派」と呼んでしまう。
・解説:
この表現は、細かな違いを無視して、さまざまなものを一まとめにすることを意味します。「十把」は多くの束を意味し、それを「一絡げ」にしてしまう様子から派生した言葉です。物事や人を一律に評価する際に使われ、どちらかといえば、否定的なニュアンスを込めて用いられることが多いです。たとえば、多様な意見や個性が存在する場面で、それらを一つにまとめてしまうことは、個別の違いや重要な要素を見落とすリスクがあります。ビジネスや議論の場面でも、異なる立場や視点を考慮せず、一括りにすることで、相手の主張を軽視したり、誤解を招くことがあります。したがって、「十把一絡げ」的な考え方や、物言いには注意が必要です。
【No.117】
・語彙:邪推(する)
・意味:相手の言動に対して、根拠のない悪意を持って疑ったり、悪い方に解釈すること。
・ジャンル:熟語(竹)
・用例:彼の言葉を素直に受け取るべきだったのに、つい邪推してしまい、無用なトラブルを招いた。
・解説:
他人の行動や言葉に対して、根拠もないのに悪い意図や下心があると勝手に想像してしまうことを意味する言葉です。「邪」は「悪い」「不正な」という意味を持ち、「推」は「推測する」という意味です。つまり、「邪推」とは不正な推測、悪意を持って考えることです。多くの場合、邪推は自己中心的な解釈に基づいて行われ、実際には存在しない問題を生じさせることがあります。例えば、何気ない一言を「嫌味だ」と感じたり、善意の行動を「裏があるのでは」と疑うなどです。このような誤解は、人間関係のトラブルや信頼関係の崩壊を招きかねません。正当な「推測」か、悪意を持った「邪推」かは表裏一体のため、物事を冷静かつ客観的に捉え、必要以上に相手を疑わない姿勢が大切です。
【No.118】
・語彙:逡巡
・意味:決断や行動をためらい、躊躇すること。
・ジャンル:熟語(松)
・用例:彼は新しいプロジェクトに参加するべきかどうか、しばらく逡巡していたが、最終的に挑戦することを決めた。
・解説:
「逡巡」とは、物事の判断や行動を起こす際に、慎重になりすぎて決断をためらい、ぐずぐずと迷って動けない状態を指して用いられることが多いです。「逡」は「後退する」「退く」、「巡」は「巡る」「回る」を意味し、両者を合わせることで、「足を引いて後ろを振り返り、前進をためらう」というニュアンスが生まれます。逡巡は、多くの場合、リスクや失敗を恐れる気持ちから生じますが、あまりに慎重になると、機会を失ったり、決断が遅れることで問題が大きくなることがあります。
他方で、逡巡は慎重さを示すことでもあり、軽率な行動を避けるための重要なプロセスとも言えるでしょう。ビジネスや人間関係において、逡巡が良い結果を生む場合もありますが、時には決断力も必要です。
~~#11に続く・・・かも?~~