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矢部明洋のお蔵出し日記編1999年11月

▼11月某日・トリスならぬトリックウイスキー

  サントリーのトップ、佐治氏が亡くなった。新聞はどこも、メセナでの氏の業績を取り上げた追悼記事を掲載している。
 山口に転居してからというもの、家で食事することが多いので、ウイスキーには少々うるさくなったせいで痛感するのだが、サントリーの酒はどうして、ああ出来が悪いのか。
 酒のディスカウント店に行くと、外国のウイスキーが安い値段で並んでいる。英国製でもボトル1本、950円。これが、またサントリーのローヤルなんかより各段に味がいい。何でも外国製を有り難がるわけではないが、これを飲めば、サントリーの酒は「業務用水割り専用アルコール」にしか思えない。
 最近の当たりは酒は、1本1980円のコーン・ウイスキー。熟成期間30日という珍品。ウイスキーらしくない、えもいわれぬ生々しい味わいが新鮮で目下のお気に入りである。
 こういった酒を飲みながら、佐治氏の訃報をながめていると、「メセナもいいが、本業の方でもうちょっといい酒が造れなかったのかな」と思ってしまうのは死者に対して罰当たりでしょうか。 


▼11月某日・酒乱復活

  うちのオニが書店員に復職してからというもの、仕事でストレスを発散するせいか、家庭での私にアレコレうるさく言わなくなった。
 のはいいのだが。オニの飲酒癖が復活してしまった。私が家で食事する日が増え、いろいろ酒を飲むもんで、奴も飲み出したのだ。
 今、我が家には我が家にはラム、スコッチ2種、バーボン、芋焼酎があるが、冬なので私の場合、焼酎お湯割りからスタートし、ラム・ロックで刺身などをつまみ、続いてウイスキー・ロックに突入するというのが腰を据えて飲む時のパターンだ。
 オニは食事の時から焼酎をストレートでやっている。しかし、これは序の口。私とみえぞうが眠ってしまった後、仕事をやりながらであったり、パソコンに向かいながら、ぐんぐん杯を重ねているのである。最近の好物はラムのようだ。ひどい時は2日でウイスキーのボトルが空いてしまう。  おかげで、みえぞうは空の焼酎1・8リットル入り紙パックを玩具がわりに遊んでいる始末。
 しかし、おそろしいのはこれからだ。オニは黙って飲んで、静かに酔っ払っているようなタマではないのである。暴れるのである。幸い、山口ではまだ不祥事は起こしていないが、私には気の抜けない夜が続く。 


▼11月某日・サッカー初陣

  我らがサッカーチームが初めて試合をやった。対戦相手は地元放送局のチーム。夜7時から市内の中学校グランドを借りて対戦した。
 サッカーといっても5人制のフットサルだが、初陣で何と我がチームは3点を挙げた。当然、相手チームは数え切れないほど得点したが。
 試合に備え、朝1時間ほど走ったりしたが、瞬発力、ダッシュ力が要求される試合では屁のつっぱりにもならず、すぐ息があがってしまった。
10分マッチを4回やったが、その10分間がもたないのである。
 しかしゲームは面白い。下手ながら徐々に上達するのも分かるし。スポーツは見るのも面白いが、やはりやるのが一番面白いのである。
 


▼11月某日・久しぶりの博多

  北九州の本社でミーティングがあったので九州に出かけた。
 当然のように終われば飲み会となる。
 新幹線はあるかなー、と小倉駅に行ったら、例のトンネル点検というやつで博多行きはまだあったが、上りが終わっていた。少々酔っていた勢いもあって下りの「のぞみ」に乗ってしまった。
 博多駅に着いても、まだ勢いが残っていたせいで、タクシーで通い慣れた酒場へ乗りつけた。
 久しぶりに鳥の水炊きで焼酎を飲んだ。もう後はイケイケである。午前2時半ごろ、古巣の福岡総局にたどり着き、宿直勤務の人たちをひやかして、オフィスの片隅で眠った。
 あー、都会はいいな。田舎もいいけど。 


▼11月某日・みえぞう中耳炎

  オニが生意気にも「きょうは北九州へ出張だから、保育園で何かあったらそっちへ連絡がいくからヨロシク」と言い捨てて仕事へ出かけた。  よりよって、こんな日に何かは起こるのである。
 11時過ぎ、ポケベルが鳴って、会社に連絡すると、「保育園からすぐ連絡がほしい」と伝言があったという。保育園に電話するとみえぞうの耳から耳だれが出ているとのこと。「きょうはお医者さんも午後休診だから、早目に診察に連れてゆけば」という親切なアドバイスであった。
 12時半と2時から取材の予定があったので、すぐ駆けつけて12時半に間に合うようにと耳鼻科へ向かった。幸いなこと空いていて12時過ぎには診察が終わり、仕事へのしわ寄せもなく、事無きを得た。
 しかし、振りかえってみれば、みえぞうはずーっと鼻水を垂らしていたし、午後になると熱っぽかった。「これくらい」と放っておいたせいで中耳炎に発展したようだ。まっ、中耳炎くらい何度もやるだろうが、両親ともに仕事に出かけていれば子どもへの注意も怠りがちだ。
 みえぞうよ、独りで強くなってくれ。

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