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大企業からスタートアップに転職して感じたこと

今月末で2年半在籍していたBONXというスタートアップを退職しました。

この記事はいわゆる退職エントリーですが、大企業からスタートアップへの転職してみてどうだったか、という視点で書いてみたいと思います。(最後に僕の今後の話を少し載せています。)

というのも、前職を辞めるときも、というか辞めてから未だに「よく思い切ったね。そんな人なかなかいないでしょ。」と結構な頻度で言われるからです。

僕以外もいるし、なんでそんなセリフが出てくるのだろうと思っていたのですが、確かに世の中には起業ストーリーはたくさんあるけれど、大企業からスタートアップに一社員としてジョインする体験談はそんなに見たことがない。であれば、僕の経験も少しは参考になるかもしれない(特に広告代理店の方には)と思った次第です。

前置きが長くなりましたが、ここからが具体的な話です。

僕の経歴と広告代理店をやめた理由

この辺は企業や業態によるところが大きいと思うので簡潔にしようと思いますが、最初に僕の経歴を簡単にまとめると、新卒で株式会社電通に入り、営業3年→コミュニケーション戦略・コンセプトデザイン3年という経験を積んだあと、BONXに(たぶん)5人目のメンバーとして入社しました。

広告の仕事はめちゃくちゃ楽しかったのですが、マーケティングの4P理論で言えば、Promotionは4つのうちの一つ。Product、Price、Placeまで関わりたいけど、そこまでやれる案件は少なく、提案の機会は得られてもなかなか実現しない。やっと携われた案件も事業会社とのスピード感が合わず、中途半端に。

そういったことがあって段々と事業会社側でやってみたい、という気持ちが強くなり、27歳の時に辞める決意をしました。

自分で何かやるか、スタートアップの創業間もないところに入るかのどちらかかなと探していたところでBONXの創業者と出会い、ビジョンと人とプロダクトの面白さに惹かれて転職を決めた、という経緯です。

入ってみて感じたこと①:決めることの重みと大切さを知る

最初の1年半はマーケティングやクリエイティブ周りを担当しました。

えらいばっくりした言い方ですが、あまりにも色々やりすぎて一言でくくろうとすると、こういうレイヤーまで上げないと言えないのです。

セールス戦略やマーケティング戦略、SNS運用、イベント企画、イベントスタッフ、PR、ウェブサイト制作・運用、メルマガ、ブログ、デジタルアド戦略、グラフィックデザイン、バナーデザイン、、、などなど、これはBONXに限らず人数が少ないところはどこもそうだと思いますが、代理店でやるなら数十人必要なことを1人でやり、肩書きというアイデンティティは失いました。

でも一番大変だったのは、大量にある仕事をさばくことではなく、大量に決めることでした。予算をどうするか、どういうスケジュールなのか、どこを優先して、どこをやらないのか、どういう内容にするのか、誰がそれを決めるのか、実施は誰にお願いするのか、自分でやるのか。

それに直面して、今までは決めていたのではなく、すでに決まっていたのだということに気づきました。事業計画はクライアントが決めていて、スケジュールも予算もターゲットも決まっている。代理店としての目標売上も決まってるし、自分の役割も決まっている。その中で価値を最大化する仕事でした。つまり、1→10にすること。もしかしたら5→10くらいかもしれない。

スタートアップではもちろん自分だけで全て決めるわけではないですが、そこが圧倒的に違いました。0→1とは、世の中にないアイデアを生み出すことというイメージがありますが、それだけでは1にならない。それは大前提中の大前提であり、決めること、アウトプットを出し続けることこそが本当の0→1、0→5になんだなと実感しました。

どちらがいい悪いではなく、そういうことを移ってからようやく分かったことがとても自分にとっては大きい出来事ことでした。広告でも上に行けば行くほど、また役割によっては決めることを若くしてやっている人はもちろんいますしね。

入ってみて感じたこと②:なんでもやれるからジョブチェンジの可能性もある

僕は入社して1年半後にプロダクトオーナー兼UXデザイン担当として配置換えしてもらいました。

プロダクトを作りたいという気持ちが入社時からあり、社長に伝えていたのですが、チャンスが来たタイミングで手をあげました。最初は普通にUXデザイナーの募集をかけていたのですが、なかなか見つからなかったのです。で、僕がBONXのブランドをよく理解している立場だったこともあり、やってみようかということで、ポテンシャル採用のような形でジョブチェンジしました。

正直アプリ自体作ったことないし、コード書けないし、エンジニアチームからすると「何も知らんヤツきた」って感じです。ただ、今までのBONXでの働きを見て信頼してくれたこと、素人質問でも意外と技術のことを聞いてくれるのは嬉しいという開発メンバーが多かったこと、知れば知るほどコンセプトデザインのスキルが使えたこともあり、どんどん面白さにのめり込み、会社のやむ得ない事情で一度外れそうになったときには開発チームが僕以上に反発してくれたこともありました。あれは本当に嬉しかった。

普通の転職でいきなりUXデザイナーやプロダクトオーナー、プロダクトマネージャーにはなれないでしょうから、こういった畑違いのジョブチェンジは大企業にはあまりない点かなと思います。

入ってみて感じたこと③:ビジョンが会社をつくっていること

入社当時から25人くらいで5倍くらいに増えているわけですが、そこで組織デザインの大切さやビジョンの大事さをひしひしと感じていました。

BONXには、世界は僕らの遊び場だという強いビジョンがあり、そこに共感して人が集まってきているということもありますが、日頃からめちゃくちゃビジョンやミッションの話題が出ます。

会社のそれらはもちろんのこと、プロダクトが目指す世界もとても大切になってきていて、それがブレそうになったり、そこに沿ってるかどうかは常に皆の頭の中にあります。

これはスタートアップに限らず、大企業でもきちんとそれを一人一人が意識できているところはあるかもしれません。でも僕自身は前職時代はあまり関心がなく、会社のビジョンは知ってはいたものの、自分の仕事に響くかどうかで言うと、正直どうでもよく思っていました。

だからここまでビジョンが人のモチベーションをつくるのかと驚く毎日でした。徐々に僕もそれを通して社会にどう貢献するかということも考えるようになっています。これはそれが命綱でもあるスタートアップにいたから感じられたことだと思います。

今後どうするのか

以上が参考になるかなーと思うところです。ここからは僕の話を少し。先日書いた記事がありますが、ここからデザインに専門領域を絞っていきます。

ここで僕のビジョンについて書いています↓

これだけ聞くと、またジョブチェンジなの?と思うかもしれませんが、地続きなものだと思っています。

20歳の時に深澤直人さんの『デザインの輪郭』を読んでからデザインの世界に目覚め、前職ではブランド戦略やコンセプトデザインを身につけ、今回はさらにそこを深めつつ、UXデザインやアプリ開発に携わり、一部デザインそのものも担当していました。つまりなんやかんや、この8年間はデザインと一緒に歩いてきたわけです。

デザインのいわゆる内側部分、コンセプトや構造的な面を考えてきました。そうしてデザインは表面だけではなく、構造も含んだ広意義なものである、ということを実感してきました。が、でもそれでもやはり最後はそれら全てがアウトプットに詰め込まれます。目に、手に触れた時にどう感じるか。いいコンセプトであっても、いい表現がともわなければダメ。そうしてやっぱり自分自身でデザインすることをどうしても諦めきれないことに気づきました。私生活でもいいデザインに救われてきたこともあり、そこまでやって僕も人をデザインで救いたい。

そうなったときに今いるべき場所はBONXなのか、という疑問が湧いてきました。大好きな場所でしたが、自分のミッション・ビジョンを叶えるのには遠回りかもしれない。そうしてより近い場所へ移ることに決めました。

まだウェブサイトも準備しているところなのですが、コンセプトデザインやビジネスデザインに強く、ブランドデザイン・アプリデザイン・ウェブデザイン・広告デザインまで担える会社に明日から入社します。色々な企業のデザイン支援以外にも、自分たちの事業も始める予定です。

デザインだけじゃなく、テクノロジーももっと理解しないといけないし、すでにやることだらけで、より一層自分に厳しく駆け抜けていきたいと思っています。


最後に。

僕の意思に対して、心の底から喜んでくれて全力で背中を押してくれたBONXのみんなにはただただ感謝です。本当に楽しい時も辛い時もいろんな時間を一緒に過ごしてきたのもあるけど、「また働きましょう!」と送別会の時に心から言えたこと、それくらいのメンバーに会えたことがいちばんの誇りです。SNSにいない人が大半なので読んでないと思うけど笑、ずっと応援してるし、また別の立場で一緒に仕事ができればと思っています!

ということで、明日からまた頑張るぞ!

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