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ショウリのことだけ考えた~「Endless SHOCK」2週目~

Endless SHOCK初見の衝撃から一夜明け、見逃し配信のチケットを追加購入して2回目を見ました。だって買っていた見逃し配信のチケットは5月末だったんだもの。今すぐ見たかったんだもの。

初回はステージに飲まれていたら終わってしまったので、2回目はSexy Zoneのファンらしく、勝利くん演じるショウリに注目して見ました。ショウリのことだけ考えた主観入りまくり感想文です。

■ショウリとコウイチの関係

コウイチと対等でいたいショウリ

初見の段階で、ショウリは「コウイチを見ているだけでは嫌で、コウイチに追いつきたいしライバルでありたい人」なんだなと思いました。だからこそ刀を入れ替えてまで「ほら! なにがShow must go onだよ!」と言い負かしたかったのかなと。まあコウイチの狂気の前にそれは叶わなかったのですが。

二人の言い争いである「Missing Heart」は非常につらいです。お互いにあの日の夢を追いかけて進みたいだけなのに、なぜ袂を分かつ形になってしまうのか。それはやっぱりコウイチの常人には理解しがたいエンターテイメントへの情熱ゆえだと思います。

いいエンターテイメントを届けるためならなんでもするんですよね、この人……。必死に続けていたショーの最後に登場するコウイチ、つらいですよ。「全てこの手の中に」と思っていたらコウイチが出てくるんですよ。ライバルでありたいショウリからしたらたまったもんじゃないはずです。

ショウリの「Higher」を乗っ取ったコウイチは「何度でも手を差し伸べる」と歌います。でもそうやって上から手を差し伸べられるのがしんどかったんじゃないでしょうか。背中を追うのではなく、引き上げてもらうのではなく、隣で対等なライバルでいたかった。だからこそショウリは下手で顔を歪めつづけているのかなと思いました。

また見せ場を奪われたからというだけでなく、コウイチが天才的な閃きでサッと素晴らしいエンタメを作ってしまったところもしんどいポイントなんじゃないかなと。ショウリが前半で「決められたことをきちっとやるのがプロじゃねえのかよ」「毎日変えやがって」と言っていたのを思うと、コウイチの天才的な思いつきに憧れと嫌悪を抱いていたのかなあなんて想像します。

コウイチのすごさを一番理解しているのはショウリだけど、それに目を輝かせるだけではいられないライバルでもある。リカのようにキラキラと目を輝かせるだけでいられたらどれだけ楽だったでしょうね。

……などと考えながら見ていると「俺がいつ戻ってきてもいいようにショーを守り続けて」と言い放つコウイチはしんどいポイントを踏み抜く天才で何度見てもぞわっとします。そういうとこだよ~~~~。

迷子のショウリ

コウイチとバチバチしている面がある一方で、ショウリはいつまでもコウイチに追いつけない感もあります。コウイチが逝った後、あまりにも幼い顔していたのには泣いてしまいました。

ステージ上でのミスがきっかけで言い争いになる前半のシーン。コウイチにステージに立つなと言われた瞬間、ショウリは見放されたような顔をしています。「俺の立ち位置もお前がやればいいだろ」と言われても何も言い返せないところに実力差が表れています。コウイチに追いつけていないことはショウリが一番よく分かっているんだなと感じました。

コウイチを刺した後の「コウイチ、どこへ行くの」。これがショウリの本音なんじゃないかなと思いました。ずっと迷子の子供みたいなんですよね。

夢の中で「リチャード3世」をShow must go onしたのはショウリなりにコウイチに近づこうとした結果に見えましたが、結局罪の意識から抜け出せずに怯え続けています。

そこからの「Don't Look Back~戻れない日々」の歌いだしには、まさに迷子のショウリがいます。震えていて、頼りなくて。「なあコウイチ」と問いかけることしかできない。コウイチに歯向かうようなことをしたけれど「戻りたい夢の続きへ」と思っている。結局コウイチと見た夢を忘れられない人なんだなと思いました。

対等でいたいショウリと迷子のショウリの根源

対等でいたかったショウリと迷子のショウリは、刀のすり替えを告白するシーンで融合します。「俺の勝ちだよ!」と叫びながら嘲笑から泣き顔に変化していくのを見て、ぐっと心が締め付けられました。強がる姿、コウイチになんでとわめく姿……感情がわっとあふれ出すのを見て、ショウリの中のぐちゃぐちゃした感情が全部そこに出ているように感じました。配信でいうと1:51:10あたり。前のセリフ含めて何度でも見返したいシーンです。

コウイチと対等でいたかった。でもいられなかった。そして置いていかれる不安にさいなまれ続けた。対等でいたいバチバチのショウリと迷子のショウリの根源は同じなんだろうなと思います。「誰も振り向いてくれない苦しみ、俺にはよくわかるんだよ」「止まったやつは切り捨てられんだろ」。このセリフから感じたのは怒りよりも孤独感や寂しさでした。

わめく姿は本当に子どものようです。オーナーに泣いて縋る姿はあまりにも幼く見えます。恋するリカちゃんの方がよっぽど強い人です。その対比がまあショウリの幼さを露わにするんですけれど……。

本編後のショウリはどうなるのか

これはもう3年後を描いたEternalを待てって感じです。でも考えずにはいられない。

ショーを続ける強い心と引き換えに、ショウリはあまりにも大きいものを失いました。「俺たちは一つ苦しめば一つ表現が見つかる。一つ傷つけばまた一つ表現が作れる。ボロボロになるその分だけ輝けるんだぞ」。コウイチはそう語りかけましたがそのシーンのショウリはもうボロボロでした。丸まった背中があまりにも小さくて、この人はこの先生きていけるんだろうかと心配になりました。

でもショウリはコウイチの言葉にうなずきますし、最後にコウイチの舞台に立つ道を選びます。コウイチのエンターテイナーとしての生き様をすぐそばでその目に焼き付けることを選んだショウリは、やっぱりコウイチに魅せられた一人だなと思いました。「CONTINUE」でショウリだけがはっきりとコウイチを見ていたところにも、ショウリからコウイチへのめちゃでか感情を読み取らずにはいられません。

ショウリには、横にいるコウイチへのアイコンタクトではなく、宙を舞うコウイチを見上げる姿が似合いました。そして、ああコウイチには勝てないだろうなと思いました。だって見上げる姿があまりにもさまになっているんですもの。

見上げるといえば、コウイチがハシゴの間を行き来するコウイチのシーンって多分別映像、ですよね……? だとしたら太鼓を打ち鳴らす勝利くんの目の前で光一さんがフライングをしていたわけではなかったんでしょうか。それであのコウイチの姿を目に焼き付けるような顔をしているんだとしたら役者・佐藤勝利が怖いです。完全にあの視線の先にはコウイチがいますもん。

コウイチの最後の公演が始まる前のシーンのラスト、ショウリは「行くぞー!!」と声をかけます。あのカンパニーを続けるならきっと座長は彼なわけで、あの一声がまだ幼い座長の始まりなのかもしれないなと思いました。まあEternalで全然違ったらさーせん!!

そんなことを思いながら聞く勝利くんのソロ曲「Show must go on」を聞くと、ショウリとコウイチの歌に聞こえてくるから不思議です。きっと歴代のライバルとコウイチの歌にはならないだろうけれど、ショウリとコウイチの歌ではあるような気がしてしまいます。

■Endless SHOCKで示された価値観は何なのか

初見では「エンターテイメントのためならなんでもしろ」といわんばかりの狂気に正直衝撃を受けました。でも2回目を見たとき、とにかく夢に向かって進むことが是とされているわけではないのかも、と思いました。

きっと「一人で走りたい」は違うんです。恐れることなく仲間と走ることが是とされているんだと思います。「ONE DAY」はまさにそういう歌ですよね。

あの星に手を伸ばし 掴まえるその日まで
信じ合い走り続けるのさ 決して立ち止まらずに

「ONE DAY」

ショウリは恐れや怯えから一人で無理に前に進もうとしていたので、この世界だと是ではないのでしょう。だから主人公の立ち位置ではないんだろうなと。

コウイチの周りには常に仲間がいますし、慕われています。マツザキにショウリのことを頼むくらい、ショウリを筆頭に仲間のことも思っています。ショーを続けていたショウリに「俺がいつ戻ってきてもいいようにショーを守り続けて」とか言っちゃうのはやや傲慢だと思わんでもないのですが、それは周りがついてきてくれることを純粋に信じているからでもあるはず。時に周りが見えなくもなっていたけれど、仲間を信じて仲間に信じられているコウイチはやはり座長であり主人公です。

でもショウリの不安に共感できるほとコウイチはある種狂気的ですし、エンターテイメントの消費者として「ボロボロになるその分だけ輝けるんだぞ」の精神は手放し称賛していいのか迷ってしまいます。だからこそ人間臭いショウリに感情移入しました。

「傷つくことを恐れて立ち止まるな」の自己犠牲精神とコウイチの死を象徴する桜、かなり日本的だなあと思います。そのメッセージ性をふまえると、これだけ和の演出が取り入れられているのにも納得です。

コウイチを見ているとKinKi Kidsの「光の気配」を思い出します。光の気配というよりまさしくEndless SHOCKなのでもっと激烈なのですが。

どこまで行けば僕は満たされるだろう
彷徨いながら あきらめ方も知らない
ただ かすかな光の気配が
歌声のように 僕を捉えて話さないんだ

KinKi Kids「光の気配」

つらい道であろうと失うものがあろうと、夢を追いかけて走っていく。そんなエンターテイナーの純粋な姿に胸を打たれ、励まされていることもたしかにあります。でもエンターテイナーにその身を削ることを求めていいのだろうか。自分はどんな気持ちでエンターテイメントを享受すればいいんだろうか。「Endless SHOCK」はそんなことも考えさせられる作品でした。

まあお芝居なんで現実に重ねる必要はないんですけど、応援している人たちには時に立ち止まって、自分と周りを愛しながら幸せに生きてほしいなと思っちゃいますね。ニコニコ笑顔であれ……。

■余談:オタク的勝利くんへの感想

……まああの、ニコニコしていてほしいって話をした後にこんな話をするのも恐縮ですが、ショウリの顔が絶望や恐怖、悲しみに歪む瞬間の目の引き方はすさまじかったですね。

コウイチがステージに刀を突きさしたときの表情。真剣を握らされた上でコウイチに迫られたときの表情。表情は見えずともコウイチを刺してしまったときの背中。悪夢のシーン、そしてその後に床に丸くなっているときの表情。コウイチに舞台のスポットライトを奪われたときの「またか」といわんばかりの絶望の表情、コウイチやみんなに当たり散らすときの泣き顔……。なんというか、オタクのシンプルな感想としてはいろんな勝利くんが見られてよかったです!!

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