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産後パパ育休の記録⑦ 復職

 育休中のことはまだいろいろと書きたいことはあるけれど、とりあえず復職したのでそれについて。

復職後のお仕事

 私の場合は産後パパ育休を4週間取得しただけ。会社に行ってみると浦島太郎状態、というほどでもなく、ほんの少し前に動いていた仕事が少し進んでいた程度の変化。仕事を進めるうえで混乱することは少なかった。

 それに、コロナ禍を経てリモートワーク環境も多少は揃っていたことから、実は育休中もたまには家でメールチェックをしていた。それもあって仕事のブランクなどは感じなかった。

 このようなリモートワーク環境が整っていたことはよかったと思う。育休中でも仕事のことを考えないといけないのか、という考えもあるが、産後パパ育休はしょせん4週間のお休みでしかない。1年間の育休を前提に仕事を同僚に引き継ぐのとはわけが違うのだ。

 仕事内容にもよるが、休業期間1年間を前提とした引継ぎは「仕事をそっくりそのまま引き継いで、自分が完全にいなくなった環境でも仕事が進む段取りを組む」ということになると思う。それに対して休業期間4週間を前提とした引継ぎは「一時的に仕事を任せて、4週間後にまた引き受ける」ということを前提とした引継ぎになる。となると、リモートワーク環境が整っていたことで、仕事を自分で進めることこそしないけど、メールチェックなどで仕事の進捗を確認しておくことができただけで、復職の際の再引継ぎが楽だった。

 しかし、眠い。復職したとはいえ、子供はまだ生後1か月。夜も泣く。2時間~3時間おきにちゃんと泣く。それにしっかり起こされるわけだから、毎朝寝不足気味で出社する。そして、昼下がりに必ず眠くなる。

 夜は妻に完全に任せるというわけにもいかない。妻も夜はつらいから。この眠気はもう、仕方がないものとして諦めることにした。

かけられた言葉も様々

ゆっくりできた?

 もちろん「おめでとう」という祝福の言葉は頂いたが、それ以外で興味深かった言葉がいくつかあった。

 「ゆっくり休めたか?」という言葉をかけられた。63歳の重役からである。どういう意味で言ったのだろうかと考えた。

 「新生児の育児は大変だろう。そんな中でもちゃんと休めていたのか?」という意味だろうか。それとも「一か月も仕事を休んで、リフレッシュできたか?」という意味だろうか。

 真意はわからなかったし、どういう意味っすか?とも聞けなかったので、とりあえず「いや、全然。今も3時間以上まとめて寝られませんし、仕事してるほうが楽です笑」と答えた。

 63歳のその重役。子供も2人いて、どちらも成人されている。男性の育休など取りたいとも思わない時代に子育てをした人だと思う。残業時間100時間越えなど普通だった、という話も聞いたことがあるし、おそらくは子育てにもそんなに参加していない。だから、新生児の世話をすることと、産後すぐの妻の世話をすることの正しいイメージができないのだと思う。その人からすればきっと、私の育休中は妻も産休中だから「妻は専業主婦と同等の状況」であり、子供の世話と家事全般は妻が担っていて、私はそれを適当に手伝っている、というのが私の育休に対するイメージなのだと思う。

 といっても、私はこの重役を悪いとは思わない。日本はそういう時代を経てきたのは確かだからだ。一家の大黒柱である男が働きに出て、家族全員を養うだけの収入を稼ぎ、家のことをすべて任された妻は専業主婦として家事全般と子育てを担当する。そういう時代は確かにあったし、これを男尊女卑だとは私は思わない。役割分担ができていたし、それぞれの役割を担うことで男も女も充実していたはずだ。

 だから、その時代の感覚しか持っていないその重役がそういうことを口にしても、まぁ仕方がないことだと思う。悪意はない。

 でも、今の時代は聞く人が聞いたら怒るだろうなぁ、とは思う。会社のいち役員として、ハラスメント教育とか受けたほうがいいのかもしれない。

離乳食もまだだろ

 これは復職した後ではなく、育休期間中に子供の保険証を取りに会社に少しだけ顔を出した時のこと。

 保険証を自宅ではなく事務所に送ってしまった、と本社の担当者から謝罪の電話が来たのが子供が産まれて2週間くらいしたころだった。男性社員に子供が産まれたことで、その子供の保険証を手配することは今まで何度もあったけど、その男性社員が育休を取っていたことはなく、今まで通り今回も普通に会社に出勤しているものとして、事務所に子供の保険証を送ってしまったのだという。まぁ、わかる。私が会社で男性育休第一号だから、わかる。

 私は職場まで自転車で15分程度のところに住んでいるので、保険証が会社に届いても全然問題がなかった。簡単に取りに行ける距離のところに住んでいるので、気にしないでほしいと伝えた。

 そして私は平日の真昼間。私服に買い物用のリュックを背負って会社へ向かい、その帰りにこれから旬を迎えるDHAをたっぷり含んだイワシを買って帰ることにした。助産師さんからもDHAを摂るべきだから、青魚を食べる頻度を上げろって言われてたもんで。

 職場につくと私服でダサい買い物リュックを背負った私に対して、同僚たちが口々に話しかけてきてくれた。その時の会話の一つがこんな感じ。

「リュックなんて背負って、どうしたの?」
「今日の買い物をして帰らないとダメだからね。DHAを摂れって言われてるし、イワシを買って帰らねば」
「おいおい、離乳食もまだだろ?」

 この同僚、それなりに学のある男である。DHAで子供の頭がよくなる、的なことくらいは知っているだろう。そして、この同僚は独身で、当然だが育休経験がない。だから、DHAを摂れと言われているのが子供だと勘違いしたのだろう。私が子供にイワシを食わせるつもりだという冗談を言ったのだと思って、ツッコミを入れたのである。

 私はいたって真面目に話をしていた。ボケたつもりは何一つなかった。DHAを摂れと言われている「妻に」イワシ料理を作るために、イワシを買って帰るつもりだと言ったのある。

 だからこそ、この反応は興味深かった。

 育休経験のないその同僚の男は「育休中は子供の世話をしているものだ」という認識を持っているようだが「育休中は産後間もない妻の世話もしている」という認識が皆無だったようだ。

 これは私も育休を取らないとわからなかったことかもしれない。

 改めて、世間一般の「男性育休」に対するイメージと、実際の男性育休に求められるものの現実のズレを感じた。前にも書いたが、男性育休は子供の世話に割く労力より、妻の介護やメンタルヘルスケアに割く労力のほうが大きい。

 自分は今いい経験をしているんだな、と改めて思った。

育児経験がある女性社員と距離が近くなった

 変な意味ではない。

 しかし、今まであまり話したことが無いような他部署の女性社員などから声をかけられることが増えた。確実に、育休取得前より増えた。

 別に私が男性として魅力的になったからではない。声をかけてくれるようになったのはみな、育児経験のある女性社員ばかりだ。

 彼女らからすると、大変な新生児の育児を経験した私のことを「仲間」であり「育児の後輩」として見てくれるようになったのかもしれない。何も相談していないのにアドバイスまでくれる人までいた。

 これからも、彼女ら先輩方からは世話を焼いてもらえそうである。私も、ちょっとした育児の悩みなどを相談できそうな人が見つかってよかった。

広がる妻との溝もあるので要注意

 私は復職し、社会との接点も戻ってきて、さらには育児について共感してくれる育児の先輩方との交流もできるようになった。しかし、妻はそのころまだ「子供と二人きりの毎日」である。

 私の復職をきっかけとして、育児のちょっとした悩みを会社で雑談的に打ち明け、同僚たちから色々なアドバイスを頂いて、少し気持ちが軽くなった私の心情と、一日中子供につきっきりで、それ以外の人間や社会との接点が少ない妻の心情が少し離れ始めたのも事実だった。

 もしかしたら妻からすれば、今まで自分と同じだけ子に接し、自分と同じくらい社会との接点を失っていた戦友のような夫が突然遠くに行ってしまったように感じるかもしれない。

 復職2~3日目で早くもそれを感じたので、率直にそれを妻に伝えた。二人の心の重さに差が出てくるのが心配だと。

 生活環境が私の復職で変わったので、それはもう仕方がないことではあるけど、なるべくその差を埋めるように、夫婦二人で話をする時間を大切にしようと、二人で決めた。



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