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産後パパ育休の記録① 取得を決めた理由

妊娠から出産まで

 2022年7月に妻が妊娠した。
 結婚してしばらくしたころに子供のことを考え始めたものの、それから数年は授かることができず、いろいろ試した結果である。

 一般的に「不妊症」と言われる状態ではあったが、妻の体には異常がなく、私の体にも決定的な異常は見つからなかった。唯一不妊の原因になっているかもしれない可能性として私に精索静脈瘤が見つかった。

 妻の体は健康。私の体にはこれだとは言い切れないものの、原因になりえる異常が一つ。ということで私の治療を即決し、手術を受けた。
※この手術については別の記事にあるので、こちらをご参照ください。

 手術後、効果はじわじわと現れるらしいので、何度か検査を行った。
 確かに数値的なものは若干ではあるが改善が見られた。
 しかし、妊娠には至らなかった。
 それからはただただ試行錯誤の不妊治療へと移っていくわけだが、その過程はとりあえず置いておいて、結果的に子供を授かることができ、先日無事に出産。元気な男の子が産まれた。

産後パパ育休という制度がタイミングよくできていた

 妊娠発覚が2022年7月。そして、タイミングのいいことに2022年4月以降、男性の育休について様々な法改正が行われており、産後パパ育休なる制度が新設されていた。

 産後パパ育休。通常の育休とは別に、子供が生まれてから8週間以内に4週間まで取得できる休業制度である。休業するので当然会社からの給料はなくなるが一定の条件を満たせば「出生時育児休業給付金」を受けとれる。
※ちなみに「産後パパ育休」の正式名称が「出生児育児休業」らしい。

 つまり、男性も女性の「産休」と同じように会社を一時的にお休みしながら、会社からの給料とは別に、国からの給付金を受け取りつつ、産後の大変な育児に力を注げるということである。

 この給付金の額は直近の給与額(額面)の67%になるらしい。

 ほんなら33%も収入が減るやんけ、と思いながらよくよく調べてみると、この給付金は「所得」ではないので所得税がかからなかったり、そのほかにも産後パパ育休期間の社会保険料が免除されたりする関係で、受け取れる給付金額は直近の給与(額面)の67%だけど、直近の給与の手取り額と比べると80%程度は保障されるとのこと。

 ……それでも20%も収入減るんかい!!

 もちろんそう思った。なぜ20%ケチるのさ……と。

 実際、収入が減るから育休も産後パパ育休も取らないという声は周りでよく耳にする。しかし、ここはひとつ「ないよりマシだ」とプラスに捉えていこうと思い、私たちはこの産後パパ育休を取ることにした。
※こういった「収入減」を問題視して、収入を100%保障できるように制度を改善していこうという動きもあるようだが、現時点ではまだそうなっていない。

 実際に会社からの給与がどう減って、給付金の額がどの程度になり、どういったタイミングで給付金を受け取れたかなどは、また追々書こうと思う。なんせまだ私は産後パパ育休期間中。この期間の給与が支払われるのは来月だし、手当を受け取れるのも結構先になるらしい。

 ちなみに私は4週間(28日間)の産後パパ育休を取得したが、期間中にどうしても外せない仕事が2日分だけあったので、期間中も2日間だけは出勤するという手続きを育休申請の後に別途進めたので、おそらく2日間分の給与は来月の給料日に受け取れるし、育休手当は26日分になるだろうと思われる。

産後パパ育休を取ろうと決めた理由

 まず、どこで産むのかという議論があった。選択肢は2つ。今住んでいる東京で産むのか、妻の実家近くで里帰り出産するのか、である。周りの子育て世代の状況を見てみると、里帰り出産が多数だったし、里帰り出産は確かにメリットが大きいと感じた。

 特に第一子の誕生にあたっては母となる女性は父となる男性以上に様々な不安を抱える。これは妻を見ていても強く感じた。男からすれば極端な話、10か月後に突然妻から子が出てきて「あなたの子ですよ」となるわけだが、女性にすれば10か月も自分の胎内で大切に育てた子供である。男以上に子供への執着は強くなるのは当たり前だし、大切にしたいという思いも男より強いと思う。男が大切にしたいと思っていないわけではなくて、男も女も産まれてくる子供のことを割合的には100%の力で大切に思うとしても、その力の絶対値は女性のほうが強いと思うし、その反動的に不安も大きいのだと思う。

 それを考えると、育児経験者である母や父がいる実家で里帰り出産をすることは、母となる女性にとっては非常に心強いはずだ。

 しかし、私は妻と里帰り出産の弊害について話し合ってみた。

 確かに里帰り出産は妻を想っても、子を想っても、メリットは大きい。しかし、父となる私にとってはどうだろうか。我が家の場合は妻が里帰りしたとして、私までそれにくっついて妻の実家に長期間お邪魔させていただくのは、様々な問題から現実的ではなかった(両者間の関係は良好ですが、部屋の間取りとか、そういう問題です)

 つまり、里帰り出産を選ぶと私と産まれてくる子供&産後の妻は一定期間において距離ができてしまうのである。

 まぁ、里帰り出産ってそういうもんですやん、とも言える。実際、私たちの周りの子育てしている友人たちは里帰り出産をし、旦那さんは子供が産まれて1週間程度は付き添うけど、その後は今の住まいに戻ってきて仕事をしながら、妻と子が実家から帰ってくるのを待つ、というケースが大多数だった。

 仮に私たちもそうした場合、夫婦間の育児スキルに実力差がうまれるのでは、という懸念が話し合いの中で出てきた。この懸念を里帰り出産の弊害として話し合い、結果的にこの弊害を避けるため、里帰り出産ではなく、東京の家の近くで産むという選択をすることになった。

 育児スキルの実力差という里帰り出産の弊害。具体的にはこうである(妄想ではありますけどね)

 里帰り中に出産し、その前後数日間は私も妻の実家へ行って出産に立ち会い、産まれて間もない子供の世話も少しは体験し、その後に私だけは妻と子を義母などにお任せして東京の家に帰宅。そこから私はつかの間の一人暮らしをしながら妻子の帰宅を待つ。

 妻は実家にて実の母からの手ほどきやサポートを受けながら母としてのスキルを磨き続ける。赤ん坊の抱き方。沐浴のさせ方。母乳のあげ方。ミルクの作り方。おむつの替え方。うんこの拭き方。赤ん坊の気持ちを推し量る勘。新生児と対峙する度胸などなど。

 仮に里帰り期間を2か月とした場合、2か月でそれらの育児スキルは急激に伸びる。部活に例えるなら、バドミントン部に入部したての新入部員だって、2か月もあれば試合くらいはできる実力にはなる。そして、私の待つ家に帰ってくる。

 するとどうなるか。世にも恐ろしいことになるのである。きっと。

 2か月分の育児スキルを蓄えた妻が2か月間独身者のような暮らしをしていた私のもとに帰ってくる。私としては子育ての本格スタートである。妻とのコンビで子育てにあたらなければならない。しかし、バドミントン部の新入部員1日目と入部3か月目の部員とでいきなりダブルスの試合に臨めるだろうか。

 きっと、無理だ。
 
 私は子育ての足を引っ張りまくるに違いない。慌ただしい乳児との生活の中で、例えばオムツ替えという基本作業ひとつすらスムースにこなせない私に妻は苛立つだろう。当然、私の育児スキルはLv1であり、自分自身の育児スキルはLv15くらいで実力差があることは妻だって理解しているはずだが、乳児相手の必死の子育ての中で、そんな頼りない夫を慮る余裕なんてあるわけないのである。

 となると、バドミントンのペアだったらどうなるか。当然、ダブルス解消である。

 私は妻からオムツも代えられないのねと呆れられ、役立たずと見放され、子の父として認められず、男としても失格の烙印を押され、ただ収入を家庭に持ち帰るだけのATMとして扱われ、子育てがひと段落する数年後には離婚を申し渡され、離婚原因は子育てへの不参加だという主張も通り、多額の慰謝料と当然の養育費を払いながら寂しい独り身生活を強いられるのである。

 いわゆる「産後クライシス」とは、このような要因でも発生するのではないかと思う。

 こんな話を妻と真面目に話し合った結果、育児スキルは夫婦で均等に獲得していくべし、という基本方針が私と妻との間で確立されたのである。

 そして、その基本方針に沿って、夫から育児スキル獲得の機会を奪いかねない里帰り出産は控え、今住んでいる家の近くの病院での出産を決めた。

 となると、里帰り出産であれば妻の母が担当するであろう産後の妻のサポートを私が担わなければならないのは明白であるため、産後パパ育休を取得することに決めたのである。

【補足】
 里帰り出産を否定するものではありません。あくまでも、私たち夫婦はそういう考えのもとでこうした、というだけの話です。正解は妊婦さんの数だけ存在すると思います。

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