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精索静脈瘤手術記録①

 先日、手術を受けてきたのでその記録をつけておこうかなと思う。

 結婚して4年。私が30代半ば。妻は30代前半。そろそろ子どものことでも考えようかということになり、チャレンジするも半年ほど子供はできなかった。一般的に、1年くらい妊娠しなかったら「不妊症」として認識し始めるらしく、半年で子供ができなかったくらいではまだ何とも言えないようだけど、自分たちの体のことを知っていくのは早いほうがいいだろうということで、健康診断を受けるくらいの気持ちでお互いの体を調べた。

 妻が調べて見つけてくれた病院に予約し、受診することになったのだが、コロナの関係で女性しか病院には行けないとのこと。妻にはいろんな検査項目があるようだが、私の検査項目は「精液検査」のみ。女性って大変だなぁと、その時は漠然と考えていた。

 検査当日。病院へ行けない私は自宅で採精。思春期以降、何度も繰り返した作業ではあるが、さすがに恥ずかしいということで、妻には15分ほど散歩に出かけて頂いた。笑って出て行った妻の足音が消えたころ、作業開始。少し深いシャーレのような容器にブツを採取し、一息ついていると妻が帰宅。保温のためにタオルを巻いた容器(そうしろとのクリニック側からの指示)を、一仕事終えた男の顔で妻に託した。

 結果はすぐに出た。詳しい数字は差し控えるとして、総評としては「元気がない精子の割合が通常より多いけど、全体的な数も多いことから元気な精子もそれなりの数がいるので、まずは治療も精密検査もせずに経過観察」というもの。ちょっとショックな結果だけど、あまり気にしなかった。

 それから定期的に妻は病院へ通った。ホルモン検査、卵管造営検査などなど、それなりの苦痛を伴う検査だったようだが、それをこなしていった。男性は採精して提出するだけ。なんなら快感すら伴う作業をこなすだけ。女性は苦痛でしかない検査ばかり。やっぱり女性って大変だなと、改めて認識。

 何度か通院していくうち、どうも病院の雰囲気が合わないと感じていた妻がセカンドオピニオン的に他の病院も受診してみたいと申し出たので、それに同意。この時点で、妻の検査結果には特に大きな問題は見つかっていなかったけど、家から通える別の病院を受診してみることに。

 その病院も、基本的にはコロナ対策で女性のみが通院となるとのことだったけど、初回のみは男性も帯同を許されるということで、初めて私も病院へ。前の病院での検査結果を医者に見せると、私の結果も妻の結果も、結果を見る限りは前の病院の先生と同じ見解だとのこと。一応、この2つ目の病院でもゼロから検査をすることとなり、後日精液を提出することとなった。

 それから再び妻の病院通いが始まり、私の精液検査も進んでいった。2つ目の病院での結果はやはり「元気のない精子が多い」というものだったが、男性の精子の状態はコロコロ変わるので4~5週間後にもう一度検査をしましょう、ということになった。何やら、精子は3か月くらいの期間で作られるようで、その期間に受けたストレスなどによって状態が変わりやすいらしい。すぐに再検査しても、同じような時期に作られた精子が出てくるだけなので、同じ結果になる可能性が高いようだ。

 その後、妻は再び検査を進めていた。苦痛を伴う検査も再び受けた。そして、結果は問題なしだった。その間私は、自分の睾丸の中の精子たちが世代交代するのをただ待つだけ。この頃から妻は病院で排卵のタイミングを計ってきており、性交渉を持つべきタイミングなども聞いてくるようになった。

 そんなとき、ふと思った。我々が不妊症だとして、今のところの原因は私だ。妻の排卵も順調だったし、ホルモン値などにも大きな問題は見受けられていないのだから、異常なのは私の精子の状態だ。病院の先生が言うには「旦那さんの前回の精液検査の結果は顕微授精を勧めるレベル」だとか。でも、病院に通えるのは妻のみ。

 治療が必要なのは私かもしれないのに、病院に行けない。妻は、今後も不妊治療を続けるのであればどういった治療を行うのか、という話を医者から聞いてきている。俗にいう、治療のステージを上げる、という話だ。でも妻に異常は見つかっていない。しかし、治療のステージを上げると負担がかかるのは健康な妻の体であり、異常かもしれない私の体ではない。それでも、治療の話は妻と病院の間で進んでいく。不妊の原因かもしれない私を置いたままで。

 なんとなくそんなことを感じ出し、私はこのまま妻の通う病院に身を任せておけないと思った。もちろんその病院で再検査を行う予定だったし、その結果次第では私の精密検査や治療が始まったのかもしれないが、それをただ待っていてはいけない気がして、男性不妊の検査を受けられる病院を探し始めた。決して妻の通う病院が悪いのではないが、やはり私も医者と話をして質問したりアドバイスを受けたりしたいのである。コロナ対策はわかるが、男性が通院できない病院には妻を任せられても、私のことは任せられない。

 妻も私の考えを理解してくれ、背中を押してくれたので、目星をつけていた病院をさっそく予約し、受診した。

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