ないものねだり(ハンチバックを読んで)

読み終えて、まず後悔した。
今のメンタルの状態で読むべきで無かった。
眠れるか不安にすらなる。
凄かった、心の突き落とし方が。

以降ちょびっとネタバレがあるやもしれません。悪しからず。



ないものねだり。
私にはそんな感想が、頭の角に日常をこなすことで追いやってきたそれが、心に墨を垂らしたかのようにじわじわと攻めてきてしまっていた。

私は色々拗らせている。
作品の中の釈華も拗らせている。

歪みが歪みを見つけたら、マイナスとマイナスが掛け合わせるとプラスになるかのように、共感からの「よくぞ言ってくれた!」ばりの感動になるかと思いきや、同族嫌悪のような後味の悪さで、危うく作者を嫌いになりそうにさえなってしまった。

障害者、被虐待児、貧困層、不細工。
あげたらきりがない程、世の中にはいっぱいの「生きていくためには劣勢」であるものを持つ人がいる。

個性?みんな違ってみんな良い?

そんな言葉で騙されるほど、誰も馬鹿ではない。
劣勢を、なんとか「生きていくために最低限大丈夫」な状態へと持っていくための術はいくつもあり、もちろんその張本人たちも重々承知している。

しかし、いじめられた人がいじめられる前のその人に戻ることが無いように、
折り紙を折っていて、途中で間違えて最初から折り直しても最初の間違えた折り筋が消えないように、
どんな術を駆使しても「最初から劣勢を持たない人」にはなり得ない。
それが心底憎くて辛くてどうしようもない。

どうしようもないことを飲み込む。
私はそれがこの世で一番の苦行では無いかと感じている。
釈華はBuddaha、紗花のような存在を軽蔑していて、凄く羨ましかったんじゃなかろうか。
私にもその節があるように。
いつか私の心に涅槃の花が咲くと信じたい。


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