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24/4/10 📚中小企業の存在理由『多様性と持続可能性の視点で考える中小企業論』要約


分業

 生産性とは、生産要素の投入量に対する産出量の割合のことである。
 生産性の増減に関する研究としては、1776年に発行されたアダム・スミス『国富論』が有名である。ここでは、分業による生産力の増大(=生産性の向上)が示された。スミスは、生産性の向上を実現する分業の3つの効果について触れている。3つの効果の1つ目は、作業の単純化により作業者がスキルの習得に必要な時間を短縮することができることである。2つ目は、1人で作業を全て行うときに比べ、移動時間が短縮できることである。3つ目は、単純作業化により工程の機械化ができることである。
 スミス以外にも、バベッジ(1832)が同様に分業の研究を行った。バベッジは、分業により賃金に差をつけるなど、分業の効果をより具体的に示した。
 今日では、工場内での生産工程における分業を「工程内分業」といい、市場での売買交換を通じて部品や製品を生産する在り方を「社会的分業」とよんでいる。
 ここまでは経済学における分業に関する理論の展開である。対して経営学では、テイラー(1911)が「科学的管理法」により効率的な作業管理の手順を示し、ヘンリー・フォードが単純作業とベルトコンベアーによる作業の連結の手法を確立し、大量生産による規模の経済効果を実証した。

比較優位論

 比較優位論とは、分業し、設備や労働者の能力差に応じて作業を割り振ることで、分業しない場合に比べ、全体でみるとより高い生産性を実現することができるという理論である。デヴィッド・リカードにより、自由貿易を促進するための理論として提唱された。

生産性と収穫の法則

 生産要素の投入量を単純に2倍に増やしたからといって、産出量が2倍となるわけではない。例えば、生産要素を原材料を購入する費用とする。理論的には、地球上のあらゆる資源は有限であるため、生産要素を使用すればするほど、地球上からその資源が減少し、希少性が増す。よって、生産要素の価格は上昇し、従来に比べコストがかかるようになるため、産出量はその分減少する。また、生産要素を労働力とする。労働力には個人差があり、人数が増えれば能力が相対的に低くても雇用しなければならなくなるため、その分産出量は減少する。このような現象を「収穫逓減」の法則という。なお、増加する場合を「収穫逓増」、一定の場合を「収穫一定」という。

費用便益モデル

 費用便益モデルとは、生産量の変化に対する1個当たりの生産費用、および利益の変化を分析するものである。これを使うと、生産性が最大化する最適生産量を見つけることができる。現在は、プロジェクトの評価指標のほか、経済効率性の評価指標としても活用されている。
 固定費と変動費、それぞれを足して平均総費用とする。販売価格は、変わらないとする。この状況で生産量を増やしていくと、ある点までは平均総費用が減り続け、ある点を境に、増加に転じる。これにより、利益の最大化のためには、やみくもに生産量を増やせばよいというわけではないことがわかる。


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