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ドラマシナリオ⑪「もう一つの模試」①

■あらすじ■

作品テーマ(キープレイス?)は「軽井沢」。家庭の事情で離れた幼馴染との再会を描く。
 新浦智彦は高校2年生。7年前に引っ越しをした幼馴染の佐竹さゆりと時折連絡を取り合う仲。しかし、特に進展もせず、新浦は受験、さゆりは文化祭のバンドライブという目的に向け忙しい毎日を送っていたが……

■この作品について■

 数年前に受講していたシナリオ講座で書いた習作です。この講座は提出ごとに課題が決まっており、テーマと書きたい事をミックスしながら書いておりました。もともとの作品はアナログチックに原稿用紙に手書きのスタイルです。分量は400字原稿用紙10枚程度。今回noteにするにあたり、書き起こしながら加筆と修正を加えていますので、分量は多くなるかもしれません。ご了承ください。

 本作品の著作権は私に帰属します。もし、作品を気に入ってお使いになりたい場合はコメントなどでご連絡ください。公序良俗に反しない限りは二次創作も大歓迎です。全文読めますが、記事の最後にサポート部分を設定しています。投げ銭していただけたら嬉しいです。

■人物■

 新浦智彦(17)  三ツ橋高校2年生
 新浦智彦(10)  四ツ境小学校4年生
 佐竹さゆり(17)  軽井沢高校2年生
 佐竹さゆり(10)  四ツ境小学校4年生
 佐竹きよみ(10)  さゆりの妹
 佐竹涼子(38)(45)  さゆりの母
 佐竹修司(38)(45)  さゆりの父
 新浦英美(41)(48)  新浦の母
 新浦和明(40)(47)  新浦の父

■シナリオ本編■

◯新浦家・外観(朝)

新興住宅街に佇む一軒家。表札に『新浦』と書かれている。家の前に『クワガタ引越社』と書かれたトラックが停車してクラクションを鳴らす。


◯同・玄関(朝)

下駄箱にデジタル時計がおいてあり『2008・03・28 10:30』と表示されている。
新浦智彦(10)が、奥から転がるようにドアに駆け寄り、勢いよく開ける。

新浦「サユちゃん!!」

佐竹さゆり(10)が高さ30センチほどのカエルのぬいぐるみを抱えて、トラックから降りてくる。
新浦に続いて、新浦英美(41)と新浦和明(40)が家から出てくる。
トラックからさゆりに続いて、乳児のきよみを抱いた佐竹涼子(38)と佐竹修司(38)が降りてくる。涼子、きよみをあやしながら英美にペコリと一礼する。

英美「いよいよか。あっちでも頑張ってね」

涼子「保育園の時からヒデちゃんにはお世話になりっぱなしで……本当にありがとう。こっちにもぜひ来てね」

新浦「サユちゃん、軽井沢、遠いよ。」

さゆり「パパとママに頼んで、時々はこっちに来るから。泣かないで」

新浦、頷きながらうつむく。さゆり、ぬいぐるみを新浦に差し出す。

さゆり「トモくん、ケロ太をお願い」

新浦「え?  サユちゃんの大事な友だちじゃん、ケロ太」

さゆり「だからトモくんに預けるの。ケロ太がいれば、会えなくてもさみしくないでしょ。大切にしてね」

新浦、泣き出しそうな顔で頷く。さゆりもじんわりと涙ぐむ。
グズりだしたきよみを、涼子があやす様子を振り返り、新浦に手を振って離れるさゆり。

さゆり「じゃ、またいつか。浮気なんかしたら怒るからね」

新浦「何言ってんだよ……」

さゆり、佐竹、涼子がトラックに乗り込み、ゆっくりと発車する。
トラックを見送る和明と英美。呆然と佇む新浦。

和明「しかし、佐竹さん家も思い切ったねぇ。親戚から頼まれたとはいえ、軽井沢のペンション経営だぞ」

英美「まあ、涼ちゃんと旦那さんはペンション住み込みのバイトで知り合ったんだし、ふたりとも元々ああいうの、やりたかったんじゃないの」

和明と英美、談笑しながら家に入る。
新浦、涙を流しながらぬいぐるみを抱きしめる。
新浦の後ろで玄関のドアがガチャンと閉まる。


◯四ツ境駅・ホーム(夜)

タイトル『2018年』

『四ツ境』と書かれた駅看板のあるホーム。停車した電車から他の乗降客に混じって、ネイビーのブレザーとライトブラウンのスラックスの制服で、肩から水色のスポーツバッグを下げた新浦(17)が下車する。
ホームから改札につながる階段を降りる新浦。階段いっぱいに『弾みをつける夏期講習!!  2018年度募集中 学究館』という太文字とトイプードルを抱えた笑顔の女子高生が写っている写真広告が掲示されている。


◯新浦家・入り口(夜)

『新浦』と書かれている表札がかかっている一軒家。新浦がため息をついてドアを開けて家に入る。


◯同・キッチン(夜)

洗い物をしている英美(48)。ドアの閉まる音がして顔を上げて振り返る。新浦がゆっくりとキッチンに入ってくる。

英美「あら、お帰り。あんたのご飯は冷蔵庫にあるわよ」

新浦「はいよ。後で食べるわ」

2階に続く階段を昇る新浦。


◯同・新浦の自室内(夜)

使い込まれた学習机と書棚、ベッドが置かれている部屋。
ベッドにはジャージ姿の新浦が寝そべっていて、ゴロリと書棚に体を向ける。
書棚には古ぼけたカエルのぬいぐるみとフォトスタンドが並んでいる。
フォトスタンドにはダウンジャケット姿の新浦とスタジャン姿のさゆり(17)が笑顔でピースサインをしながら寄り添うように写っている。写真下部にはピンクの丸文字で『2018 1/14 4-2同窓会 とも&さゆ』と書かれている。
スマホを握りしめてぬいぐるみと写真を眺める新浦。

新浦「さゆ……家の手伝いで大変な時期なのに、会いに来てくれたんだよな……」

新浦の手元のスマホが震える。
画面にはメッセージアプリの画面。『さゆり』とタイトルされていて、やり取りが続いている中でメタルレッドのギターの写真がアップされ、続いて『明日はこれでライブ!  練習したけど緊張するなぁ』と表示される。
新浦、返信を入力する。『こっちは明日は模試だなぁ。見たかったけど』と入力して、カエルが号泣するスタンプと同時に送信。即座に『きよみに動画撮ってもらうね。お互い頑張ろう』と返信される。
寝返りを打って天井を見ながら大きくため息をつく新浦。

続く

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